会場風景/ 岐阜県現代陶芸美術館 2F 展示室前
小村雪岱スタイルの概要
私が小村雪岱(こむらせったい 1887-1940年)を知ったのは、2014年に静岡県掛川市の資生堂アートハウスで開催された「小村雪岱展 挿絵、装幀、雪岱版画」のチラシからです。近所の美術館で手にしました。
メインのビジュアルは本展「小村雪岱スタイル」のチラシと同じ1-37《青柳》です。《青柳》の判型は縦に長いので、そのままA4には収まりません。スタイル展では《青柳》を紙面左上に置き、右下に逆L字の余白を持たせています。
一方、アートハウス展は《青柳》に合わせた規格外のサイズですっぽり納めました。タイトル文字「小村雪岱展」はクレジットこそありませんが、資生堂意匠部で「資生堂書体」の原型を作っていた、雪岱の手によるものと思われます。「雪」のよっめの「、」が右下に流れています。すごい。にわかファンはすぐさま掛川に向かい、初対面の雪岱を堪能しました。
会場風景/ 岐阜県現代陶芸美術館 入口 1-39《雪の朝》1941年頃
図録はないようでした。帰宅後検索して『小村雪岱画譜』を購入しました。1962年に龍星閣から刊行された第二刷で、定価580円とありました。
新聞小説6作品の挿絵を集めたものです。口絵の1-33《蛍》はカラーですが、あとは全てモノクロです。画譜は小ぶりですが、横位置なので挿絵は大きく掲載されています。
ハードカバー/ W192mm × H130mm/ モノクロ/ 160ページ
泉鏡花 1-54『日本橋』1914年 千章館
#川越市立美術館 です。常設展「小村雪岱とゆかりの人々」開催中!雪岱の名を世に広めることになった契機が泉鏡花の『日本橋』です。雪岱は当時の人気作家・泉鏡花本人から装幀を任されました。本展では鏡花の著作ほか、雪岱の精緻な表現が光る装幀本を紹介します。本好きの方にもおすすめの展示です。 pic.twitter.com/Q8TyAEziuv
— 川越市 (@KawagoeshiInfo) July 5, 2020
三省堂書店池袋本店古本まつりに、持って行きます。
日本橋 泉鏡花 背痛 赤線等多 叢書書込張付 60,000円 pic.twitter.com/46hM73L990— 九曜書房 (@kuri1951) January 18, 2020
左下は表見返しです。右ページは春、左ページは夏です。右下は裏見返し、右ページは秋、左ページは冬。
小村雪岱は、1887年に埼玉県川越市郭町に生まれました。東京美術学校日本画科選科で下村観山(しもむらかんざん)の指導を受けた後、國華社で古画の模写をする仕事に従事しますが、2年後に退職します。
1914年に、在学中より知遇のあった泉鏡花の『日本橋』の装幀を手掛けました。「雪岱」という画号は鏡花から授かったものです。
これまで泉鏡本の装幀は、所在不明であった《築地明石町》が2019年に発見され話題となった日本画家鏑木清方(かぶらききよかた)。『吾輩ハ猫デアル』の装幀や三越呉服店のポスター《此美人(このびじん)》で知られている橋口五葉(はしぐちごよう)らの手によりました。雪岱は『日本橋』で装幀家としてデビューし、300以上の装幀を手掛けることになります。
『日本橋』は、1974年に発行された復刻版があったので購入しました。3,499円でした。安い。本を伏せると両岸に軒を連ねる蔵、行き交う荷舟を背に紺、赤、黄、白の蝶が舞う日本橋の風景が広がります。見返しには日本橋界隈の春夏秋冬がページごとに描かれています。春は《青柳》を低い位置から覗いています。私は、見返しは用紙を選ぶことと思っていたので、精緻な風情にしばらく目を奪われました。
会場風景/ 岐阜県現代陶芸美術館 2F 通路
1918年に資生堂意匠部に入社しますが、外部の仕事も意欲的に続けます。里見弴(さとみとん)作『多情仏心』の新聞連載小説で挿絵家としてもデビューします。
1923年に資生堂意匠部を退社します。舞台装置を手がけ、以後、歌舞伎や新派など200以上の舞台装置を担当します。
1933年に朝日新聞に連載された邦枝完二作『おせん』の挿絵は、雪岱を人気挿絵画家に押し上げ「昭和の春信」と称されました。
会場風景/ 岐阜県現代陶芸美術館 2F 展示室入口
雪岱には1-7《柳橋》のような肉筆作品もありますが、『日本橋』『多情仏心』『おせん』は小説が主で装幀や挿絵は従です。そのこともあり雪岱は、例えば鏑木清方ほど評価されませんでした。私は『日本橋』を装幀が目的で購入していますが。
また、これらは印刷物なので、肉筆画の持つ希少価値はありません。しかし、装幀や挿絵は肉筆画の複製ではなく、初めから印刷物にするために描かれたものです。私が『小村雪岱画譜』『日本橋』を手にすることができたのも、印刷物だったからです。鑑賞者の解釈も多様性を持ちはじめ、小村雪岱の再評価は進行中です。
ショップには関連書籍が何冊もありました。『芸術新潮 特集小村雪岱を知っていますか?』『小村雪岱ー物語る意匠』『小村雪岱挿絵集』『小村雪岱随筆集』・・・。次回、小村雪岱展までには読んでおこうと思います。
展覧会では雪岱の諸作をはじめ、鏑木清方の口絵、江戸時代の絵師鈴木春信の錦絵、明治時代の工芸作品から柴田是真(しばたぜしん)の漆工芸、並河靖之の七宝など、さらに現代作家による工芸作品を通し、江戸の粋から東京モダンへの道筋をたどります。
一部の作品は撮影ができます。
小村雪岱スタイルのみどころはここ
小村雪岱 肉筆画・木版画
1-2《赤とんぼ》1937年頃
1-19《おせん 雨》1941年頃
1-37《青柳》 1941年頃
嫁がTVの美術番組観て久しぶりにグッときた作品だと言っていた小村雪岱の「青柳」 pic.twitter.com/PaNCa2Yubf
— めぐみ (@Keiich1) October 20, 2020
小村雪岱 装幀本
泉鏡花 1-71『斧琴菊(よきこときく)』1934年 昭和書房
その泉鏡花の『斧琴菊』(昭和9年)の装丁がことのほか美しいので紹介します。戦前の本は持っているだけでうっとりするような工芸品の趣がありますね。 pic.twitter.com/EM0VC1aQP0
— 木魚庵@『金田一耕助語辞典』発売中! (@mokugyo_note) August 25, 2016
泉鏡花 1-57『愛染集(あいぜんしゅう)』1916年 千章館
小村雪岱 SETTAI c.1930 pic.twitter.com/VcoPXwja1Q
— snarky hoppy (@snarkypoppy) October 12, 2020
表見返しです。
舞台装置原画
永井荷風 1-114『すみだ川』1928年上演
姉に誘われて、なんの予備知識もなく行ってきた小村雪岱展。ただただ素晴らしかった。こんなに素晴らしいのに全然知らなかった。 https://t.co/ORyh0VHyPf
— Maho K (@KnstMaho) March 31, 2021
工芸 現代作家
本田聖流(しょうりゅう)2-62《プロミネンス》2019年
小村雪岱スタイルの混雑状況はここをみる
混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「山口県立美術館」「三井記念美術館」「富山県水墨美術館」をそれぞれ検索して開きます。
小村雪岱スタイルの図録はここがすごい
最近観た展覧会で良かったのは #三井記念美術館 の #小村雪岱スタイル 展。肉筆も木版画もいいんだけど、装幀本オススメ💮生涯に渡り手がけた装幀は200を超えるとか。
表見返し、裏見返し、ホント😍見惚れる~✨
作家の人にも観てほしいなぁ。 pic.twitter.com/MUqN8hcCcZ— ちゃんちゃん (@EbpWCWQPxEc7Rv2) March 22, 2021
左が告知のチラシ、右が図録の表表紙です。
【展覧会図録のご紹介】
開催中の「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンへ」展の図録の装幀は、表が「青柳」、裏が「おせん 雨」で表情ががらりと異なります。装幀家としても活躍した雪岱、魅力的な表紙は充実した中身をより引き立てます。ぜひお手に取ってご覧くださいね。 pic.twitter.com/1v3NOsMLjH— 岐阜県現代陶芸美術館 (@gpmomca) January 29, 2020
左が図録の裏表紙、右下が見返しの図版です。
・図録の表紙のデザインは告知と合わせてあります。メインのビジュアルの1-37《青柳》は、図録ではトリミングされ部分が使われています。表表紙の左端、背、裏表紙を背景を青色に変えた1-19《おせん 雨》が包んでいます。
左端を青色にするのは、左綴じであることを強調するためです。縦組み(縦書き)のタイトルは、縦組みの本文、右開き、右綴じを連想させるからです。
タイトルも告知と同じ明朝体です。「小村雪岱」「スタイル」が紙面の縦いっぱいに延ばされ両端に置かれていること、シルバーの箔押しがなされいることが、告知と異なります。
・見返しは《青柳》の畳を思わせる黄緑色です。見返しを始め、ところどころにd1-110-4《タイトルカット画》からの図版が置かれています。
・作品にはキャプションだけが添えてあり、解説は巻末にあります。章ごとに泉鏡花と出会ったときの第一印象など、当時の雑誌から抜粋された雪岱の一文が記されています。
新聞や雑誌にモノクロで掲載される挿絵も、カラーで印刷してあり、臙脂色の落款、経年で茶色く付いたしみ、紙の質感までわかります。。
・奥付けの前ページに雪岱の肖像が全面で掲載されています。
ハードカバー/ W195mm × H265mm/ モノクロ・カラー/ 222ページ
価格:2,750円(税込み)
小村雪岱スタイルのグッズは何がある?
【展覧会グッズ】
開催中の「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンへ」展の数あるグッズの中から、ポストカード、クリアファイル、トートバッグをご紹介します。クリアファイルはA4・A5サイズ、表と裏で柄が異なります。プレゼントにされる方も多いですよ。ぜひチェックしてみてくださいね! pic.twitter.com/V5wgshc1Pw— 岐阜県現代陶芸美術館 (@gpmomca) January 31, 2020
小村雪岱スタイルのチケットはいくら?
山口展
未定
東京展
入館料
一般1,300円/ 大学・高校生800円/ 中学生以下無料
リピーター割引
一般1,100円/ 大学・高校生700円/ 中学生以下無料
会期中、半券を提示したときの2回目以降の料金
70歳以上は1,000円(要証明)
障害者手帳を提示した本人と介護者1名は無料
富山展
観覧料
一般900円/ 大学生450円
前売
一般700円
団体料金
一般700円/ 大学生350円
団体は20人以上
企画展の観覧料で常設展も観覧できる
小・中・高校生及びこれらに準ずる者、各種手帳を持つ者は観覧無料
大学生料金の対象は、大学、大学院、短期大学、高等専門学校(4学年以上)、専修学校(専門課程)、専修学校(一般課程の19歳以上)、通信制大学、放送大学とする チケット購入時に学生証を提示
小村雪岱スタイルの会場・巡回先はここ
山口展 2021年7月8日(金)~8月9日(日)
山口県立美術館
〒753-0089 山口県山口市亀山町3-1
Tel.083-925-7788 Fax. 083-925-7790
開館時間
9:00~17:00(入館は16:00まで)
休館日
月曜日(祝日・休日の場合は開館)、ファーストマンデーにあたる8月2日(月)は開館
東京展 2021年2月6日(土)~4月18日(日)
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2丁目1-1 三井本館7階
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間
11:00~16:00 (入館は15:30まで)
休館日
月曜日
富山展 4月27日(火)~6月13日(日)
〒930-0887 富山市五福777番地
Tel.076-431-3719
Fax.076-431-3720
9:30~18:00(入館は17:30まで)
月曜日(5月3日は開館)、5月6日