ミネアポリス美術館展の感想と解説!中世から近代までの日本絵画の名品約90点が里帰り、東京、福島、滋賀、山口を巡回します


展覧会風景_サントリー美術館3Fエントランス

ミネアポリス美術館展の感想と解説!

里帰り展をいくつか。

2006〜7年に、東京、京都、九州、名古屋で「プライスコレクション若冲と江戸絵画」が開催されました。

エツコ&ジョー・プライス夫妻はアメリカのコレクターです。ジョーは父親と親交のあった建築家フランク・ロイド・ライトの影響で、日本美術の蒐集を始めます。彼は画家の名前によらず、自身の目利で自然の構造の確かさを捉えた作品を購入しました。

伊藤若冲の《鳥獣花木図屏風(ちょうじゅうかぼくずびょうぶ)》は、升目描きによる動植物たちが所狭しとひしめき合っています。1971年に東博で開催された若冲展のとき、屏風はその価値が認められず階段の踊り場に箱に入れて置かれていました。プライス夫妻の手元に渡ったのは、その後です。

展示室では、朝昼晩の日照の変化による屏風の見え具合いを、ライティングで再現していました。おもしろいので京都と名古屋にも出かけました。

曽我蕭白 74《群鶴図屏風》六曲一双 江戸時代、18世紀

2012〜13年に、東京、名古屋、九州、大阪で「ボストン美術館日本美術の至宝」が開催されました。

1876年に開館した同館は、欧米最大の日本美術のコレクションを誇ります。明治維新後、日本は西洋化を目指し伝統美術は軽視されていました。そんな中エドワード・シルべスター・モース、アーネスト・フランシスコ・フェノロサ、ウィリアム・スタージス・ビゲロー、岡倉天心(覚三)らによって日本の古美術品の蒐集が行われます。

『吉備大臣入唐絵巻(きびだいじんにっとうえまき)』は、遣唐使として唐に渡った吉備真備(きびのまきび)が、客死して鬼になった阿倍仲麻呂の助けを借り、唐人の出す難題に立ち向かいます。彼らは実在する人物ですが、荒唐無稽(こうとうむけい)なフィクションです。

帰りにガシャポンを回したら、入唐絵巻が出てきたので運命的な出会いを感じました。

中村芳中 33《大原女》一幅 江戸時代、19世紀

2019年に、千葉、静岡、大阪で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」が開催されました。

1906年に、アメリカ人女性メアリー・エインズワースは日本旅行を機に浮世絵版画のコレクションを始めます。母校であるオハイオ州オーバリン大学のアレン・メモリアル美術館にその1,500点以上を寄贈しました。

菱川師宣の《衝立のかげ》は、橋本治著『ひらがな日本美術史4』で一番最初の浮世絵のひとつとして存在する、12枚1組の木版画集の内の1点とされています。出展作《低唱の後》はその第2図にあたります。

最初の浮世絵をたどることは同書を読んで以来の念願でした。

三畠上龍 42《舞妓覗き見図》対幅 江戸時代、19世紀

さて、そして「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」です。同展は、中世から近代までの日本絵画約90点による里帰り展です。

章立てが8章と多く、分かりやすい構成でした。私にはこれまで馴染みのなかった水墨画・やまと絵・文人画(南画)について理解を深めることができました。とくに、先述したジョー・プライスが購入を控えた文人画(南画)が気になりました。

さらに、馴染みの画家の新たな一面を垣間見ることもできました。ざっと日本絵画の教科書のような展覧会です。さすがミネポ、いや「Mia」。

雪村周継 3《花鳥図屛風》六曲一双のうち右隻 室町時代、16世紀

東京展での告知に使われているのは、雪村周継(せっそんしゅうけい)の 3《花鳥図屛風》六曲一双のうち右隻の部分です。

私は雪村を、奈良・大和文華館の《呂洞賓図(りょどうひんず)》で覚えています。吹き荒ぶ嵐の中、龍に乗り両手を広げ、長い顎髭をなびかせ天をにらむ仙人呂洞賓。しかし、その風貌にはどことなくお茶目さが漂います。奇想派でもよかった。

《花鳥図屛風》は人物こそ登場しませんが、右隻第5扇の双鯉がやはりお茶目です。チラシの裏面には鯉の顔のトリミングが載っていました。

伝 狩野山楽 9《四季耕作図襖》16面のうち8面 江戸時代、17世紀

びよーーーんとしていますが、実際には部屋と部屋を仕切るので中央から手前に折れます。

2013年の「円山応挙展」では、表裏両面に描かれた大乗寺の襖絵は、間取りに倣った展示がなされていました。畳まではありませんでしたが。

《四季耕作図襖》は会期が終了すればミネアポリスに戻ります。しかし襖は《旧・大覚寺正寝殿襖絵》とも呼ばれ、かつて嵯峨野の大覚寺正寝殿にありました。2014年に、日本の文化財の高精細複製品を制作する「綴プロジェクト」により、250年ぶりにもとあった場所にも戻りました。囲まれてみたい。

狩野山雪 10《群仙図襖(旧・天祥院客殿襖絵)》4面 江戸時代、1646年

伝 住吉如庵 23《きりぎりす絵巻》一巻の部分 江戸時代、17世紀

蝉の右衛門守(うえもんのかみ)は、美しい玉虫姫を射とめました。子どもを授かりその手に抱き上げています。きらびやかな出立ちですが、よく見ると顔は昆虫の仮面ライダー系です。螽斯(きりぎりす)の紀伊守、蜩(ひぐらし)の備中守など時代劇なネーミングが微笑ましい。

2020年にサントリー美術館で開催された「日本美術の裏の裏」で、人間以外の生き物を主人公とする異類物(いるいもの)がいくつか紹介されていました。

《鼠草子絵巻(ねずみのそうしえまき)》では、都に住む古鼠の権頭(ごんのかみ)が、子孫を動物から生まれ変わらせるため、人間の姫君と結婚をします。しかし姫君に屋敷を覗かれ、鼠であることが露見してしまいます。

《雀の小藤太絵巻下巻(すずめのことうたえまきげかん)》では、山里に暮らす雀の小藤太夫婦は大切に育てていた子雀を、蛇に食べられてしまいます。夫婦は出家し小藤太は全国を行脚します。

人間と人間以外とのハイブリッドなキャラクターから、紡ぎ出される物語に興味はつきません。

伊藤若冲 78《鶏図押絵貼屏風》六曲一双のうち右隻 江戸時代、18世紀

ミネアポリス美術館展の混雑状況は?

グーグルマップから

「福島県立美術館」「山口県立美術館」の混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「福島県立美術館」「山口県立美術館」を検索して開きます。

ビッグデータから

「MIHO MUSIUME」は、混雑状況をビッグデータから解析するサイトを見ます。

「あの展覧会混んでる?」


展覧会風景_サントリー美術館3Fロビー

ミネアポリス美術館展のチケットはいくら?

福島会場

当日券
一般1,500円/ 学生1,100円/ 小・中・高校生650円

団体・前売券
一般1,300円/ 学生900円/ 小・中・高校生600円

※団体は20名以上
※7月7日(水)まで前売券を販売する

滋賀会場

未定

山口会場

未定


展覧会風景_サントリー美術館吹き抜けスペース

ミネアポリス美術館展の図録をマニアが分析!

『ミネアポリス美術館日本絵画の名品』

・表紙の波濤は、曾我蕭白の74《群鶏図屏風》の波の部分だけをトリミングしました。そう来たか。

左上に置かれている文字組みは、タイトルと、欧文は名品の所蔵先である美術館名です。

鎮座する「Mia(みあ)」は「Minneapolis Institute of Art」の頭文字から名付けたミネアポリス美術館の愛称です。使われている書体は「ヘルベチカ ナウ ディスプレイ ブラック」と思われます。この書体がそのまま美術館のロゴになっています。東京展の告知はそれに倣い、同書体で紙面を囲んでいます。

ちなみに、ヘルベチカ(Helvetica)はスイス書体を意味します。パナソニック、マイクロソフト、トヨタなど多くの企業ロゴにも用いられている人気書体です。

表紙はカバーのように折り返されています。折り返された部分を開くと、同館の全景写真が隠されています。上図。表表紙には左半分が、裏表紙には右半分が掲載されています。図録の背を下にして左右の折り返しを開くと、ワイドな建築物が現れます。秘密のデザイン。

・各章の扉は見開きになっており、黒地に白抜きで文字が組まれています。そして見開きの両端を縦長の帯状に、各章内の図版がトリミングして載せられています。予告編です。

・図録のサイズは縦長ですが作品には横長もあります。六曲一双の屏風は見開きで2段に、絵巻・図巻(ずかん)は部分を見開きで3段にして掲載されています。

そして、伝 狩野山楽の9《四季耕作図襖》は両観音開きになっています。襖の右から1枚目、5枚目の部分拡大が、右ページ、左ページに見開きで置かれています。それぞれのページを中央から左右に開くと、襖8面が見開き4ページで現れます。図録の見どころです。と言うか展覧会の、です。

ソフトカバー/ W226mm × H280mm/ モノクロ・カラー/ 264ページ/ 日・英
2,600円(税込)

ミネアポリス美術館展のグッズは何がある?

ミネアポリス美術館展の会場・巡回先はここ

東京会場 2021年4月14日(水)〜6月27日(日)

サントリー美術館

福島会場 2021年7月8日(木)〜9月5日(日)

福島県立美術館
〒960-8003 福島市森合字西養山1番地
Tel.024-531-5511 Fax.024-531-0447

開館時間
9 : 30~17 : 00(最終入館は16 : 30まで)

休館日
月曜日、(8月9日は開館)8月10日(火)

アクセス
JR「福島駅」東口より
○電車
福島交通飯坂線で「美術館図書館前駅」下車、徒歩2分
○バス
9番バス乗り場より、福島交通ももりん2コースで「県立美術館入口」下車、徒歩3分
○タクシー
約5分

○福島飯坂インターより
約15分
福島市街地方向へ国道13号線を南下、信夫山トンネルを抜け中央郵便局前交差点を右折する
○福島西インターより
約20分
国道115号から13号線を北上、中央郵便局前交差点を左折する
福島空港より
○リムジンバス
福島交通リムジンバスでJR「郡山駅」まで約40分(全航空便に対応)、
JR「郡山駅」から東北新幹線下りで「福島駅」まで約15分
○乗合タクシー
福島エアポート乗合タクシーで福島市内まで約70分(予約制)

滋賀会場 2021年9月18日(土)〜12月12日(日)

MIHO MUSIUME
〒529-1814 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
Tel.0748-82-3411
Fax.0748-82-3414

開館時間
10 : 00~16 : 00(最終入館は15 : 00まで)

休館日
月曜日(祝日の場合は各翌平日)

アクセス
バス
JR「石山駅」より帝産バス「ミホミュージアム」で、約50分

新名神高速「信楽IC」より約15分、同「草津田上IC」より約20分、名神高速「栗東IC」より約30分、京滋バイパス「瀬田東IC」より約30分、名阪国道「壬生野IC」より約35分

山口会場 2022年3月1日(火)〜4月17日(日)

山口県立美術館
〒753-0089 山口県山口市亀山町3-1
Tel.083-925-7788 Fax. 083-925-7790

開館時間
9:00~17:00(入館は16:00まで)

休館日
月曜日(祝日・休日の場合は開館)、ファーストマンデーにあたる8月2日(月)は開館

アクセス
電車

JR「新山口駅」から山口線に乗り換え「山口駅」下車、徒歩約15分
バス
○JR新山口駅から
防長バス山口方面行きで約30分(美術館前、市役所前もしくは県庁前下車)
JRバス山口方面行きで約40分(県庁前下車)
○JR防府駅から
JRバス山口方面行き(米屋町もしくは美術館前下車)で約35分
防長バス山口方面行き(米屋町下車)で約30分
○広島バスセンターから
防長バス山口方面行き(西京橋下車)で約3時間

○山陽自動車道
防府東ICから約25分
○中国自動車道(広島方面から)
山口ICから約15分
○中国自動車道(九州方面から)
小郡ICから山口宇部道路経由で約15分
※駐車場は亀山公園駐車場及び美術館周辺の各駐車場を利用。
※県庁駐車場は土・日曜、祝日のみ開放。