ポンペイ展の口コミです!ヴェスヴィオ山の噴火によりポンペイは埋没・保存されました。ナポリ国立考古学博物館が所蔵する出土品150点を一挙公開!

紀元後79年ヴェスヴィオ山の噴火により、ポンペイは火山灰で埋没しました。しかし同時に、当時の人々の生活の痕跡を現状保存します。展覧会では映像や邸宅の部分再現を交え、装飾品から日用品までナポリ国立考古学博物館が所蔵する150点の出土品により古代ローマの都市の実像に迫ります。

ポンペイ展の感想と解説!

テーブル天板(通称「メメント・モリ」)(69)前1世紀

ラテン語で「死を忘れるな」と謳った警句「メメント・モリ」を検索したら、このモザイク画が出てきて驚きました。展覧会に行っていなければ見過ごすところです。《テーブル天板》を忘れるな、と頭蓋骨がいいました。

上下に置かれた水準器と車輪は、画面に幾何的な要素をあたえ緊張感をもたらします。間に頭蓋骨と蝶をはさみ、左右にそれぞれ貧と富を表すアイテムをさげ、サーカスの曲乗りのように絶妙なバランスをみせています。

私は「死を忘れるな」にしては、背景色のターコイズブルーが明るすぎるように思えました。ウキウキしそうです。古代での「メメント・モリ」は、「食べ、飲め、そして陽気になろう。我々は明日死ぬから」の意味でした。であれば、夏用トリクリニウム(食堂)から出土したことも頷けます。

猛犬注意(108)1世紀

この猛犬の優秀なところは、右向きに描かれていることです。通常は左に向きが多いので、右向きはこちらに向かってくるように感じます。

さらには猛犬の身体が、右下がりの対角線上に置かれていることです。正方形の中で一番長いのが対角線で、猛犬を最も大きく見せる配置です。また、立ち位置を水平でなくすることで動きが出ます。

よく見ると目は半分血走っています。首輪は、白の斜め一松のラインがオーナーのセンスを感じさせます。


「悲劇詩人の家」のアトリウム(広間)

「バクイウス・プロクルスの家」の猛犬は、風景の一部となって扉の前に座っています。スリムですがちょっと目つきが悪そうです(143ページ)。

「悲劇詩人の家」はアトリウムが再現展示されており、猛犬は玄関廊下につながれていました(143ページ)(上図)。やはり右下がりの対角線上で「CAVE CANEM(猛犬注意)」と吠えています。注意を促されるより鑑賞してしまいそうです。

イセエビとタコの戦い(134)前2世紀末

タイトルのイセエビに目が留まりました。イタリアに伊勢海老って。

画面下方1/3ほどに水平線を臨み、右手前と左奥に岩場があります。左の岩場ではカワセミが獲物を狙っています。と、ここまでは写実的な世界です。

青空の広がる穏やかな風景……とならないのは、これにかぶさった魚貝類によります。魚貝類はカワセミが狙う海中に生息しており、ピーと鳴るホイッスルに合わせて、海上にジャンプしたのではありません。

ここでは、風景と魚貝類とは別々に存在します。風景「画」の上に魚貝類を図鑑のように並べることで、これらが宙を舞うシュールな世界が描かれました。

ジョルジョ・デ・キリコやルネ・マグリットに見られる、「日常から切り離した意外な組み合わせを行う」シュルレアリスムの技法が提唱されたのは20世紀になってからです。空中線を交えるイセエビとタコは、2000年前の先進性です。

私は伊藤若冲が動植物を描いた、《動植綵絵(どうしょくさいえ)》30幅の内の《群魚図 蛸》《群魚図 鯛》が浮かびました。前者は蛸を中心に16種類の魚たちが、後者は鯛と18種類がどちらも画面左下に向かって一斉に泳いでいきます。いや、これらも魚屋の店頭に並べてあるようです。

蛸は長く伸ばした一本の足の先に子蛸を乗せ、身体を立てたまま横にスライドするように泳いでいます。若冲の描く魚たちは写実的ですが、魚類図鑑とは異なるシュールで愛らしい眼差しを含んでいます。

子蛸の代わりではありませんが、《イセエビとタコの戦い》には外枠に何人ものグピトが花弁のかげに潜んでいました。

ポンペイ展の図録をデサインマニアが分析!

・表紙は、臙脂色(えんじいろ)の背景色に欧文タイトル「POMPEII」が金色で箔押しされています。書体は、ガウディー・オールドスタイルでしょうか。頭文字「P」が2倍の大きさにしてあり、「POM」と「PEII」が改行されコンパクトに組まれています。並んだ大小の「P」の隙間から、リードを外された《猛犬注意》(108)がこちらを覗いています。

背景色はどこからきたのでしょう。ナポリ国立考古学博物館の外観、《バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山》(4)(上図)の、ワインの神バックスが身にまとったブドウの実も燕脂色です。噴火前のヴェスヴィオ火山は頂上までブドウでした。ブドウの色でしょう。

裏表紙は《バックスとヴェスヴィオ山》(4)と《ネコとカモ》(133)(上図)の2パターンあります。

・見返しは、ヴェスヴィオ山を背景にした現在のポンペイの街並み(上図)が、表紙に倣い臙脂色に金色で表されています。告知にもふんだんに使われているビジュアルですが、図録にはなぜかカラーでの掲載はありませんでした。

・作品によっては、対向ページに部分拡大があります。踊るファウヌス(109)(上図)は、左ページに右前方から捉えた全身像があります。右ページの顔面の拡大は、背景を黒にして波打つ髭や巻き毛の間から覗く、ヤギの角が明確になり迫力を増しています。

また《アウグストゥスの胸像》(5)は、前方・左方・後方の3方向が載せられています。《ポリュクレイトス「槍を持つ人」》(12)(上図)は、白い大理石の全身像が黒を背景に1ページ。右背面から捉えた頭部から臀部までがグレーの背景に1ページ。後方と左前方からの全身像2点と、出土した「サムニエル人のパラエストラ(運動場)」が1ページと、計3ページで組まれていました。


「竪琴演奏者の家」のベリステュリウム(回廊つき中庭)

・「ファウヌスの家」(144・145ページ)・「竪琴演奏者の家」(168・169ページ)・「悲劇詩人の家」(182・183ページ)は、現地での画像と間取りがあります。間取りには、モザイクなどが設置されていた場所も、縮小画像を添えて記されています。


「ファウヌスの家」のエクセドラ(談話室)

「アレキサンドロス大王のモザイク」は、会場の床にディスプレイとして再現されていましたが、ポンペイ最大の邸宅「ファウヌスの家」のエクセドラ(談話室として使われた空間)にあったことが、現地の様子とともに分かります(上図・下図)。

・巻末に「用語解説」があります。文中の第1様式など不明でしたが、「ポンペイの四様式」としてここにありました。

ハードカバー/ W225mm × H285mm/ モノクロ・カラー/ 268ページ/ 日・英
価格:2,900円(税込)

ポンペイ展のグッズは何がある?

《パン屋の店先》(90)は高いカウンターの上に腰を下ろし、パンを手渡す姿はパン屋には思えないという指摘もあります(上図)。フレスコ画の《パンのある静物》(85)もありましたが、《炭化したパン》(89)の実物も展示してありました。

カウンターに積まれたパンは炭化した後、大きく膨らみクッションになりました。《猛犬注意》も、ここぞとばかりモザイクから抜け出したようでした。

ポンペイ展の混雑状況は?

私は金曜日の午前中に行きましたが、それほど混雑してはいませんでした。

ビッグデータから

混雑状況を、ビッグデータから解析するサイトを見ます。

「あの展覧会混んでる?」

グーグルマップから

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「東京国立博物館」「京都市京セラ美術館」「宮城県美術館」「九州国立博物館」など、目的の美術館名を検索して開きます。

ポンペイ展の所用時間は?

90〜120分
私は10:13から12:33で鑑賞しました。

ポンペイ展のチケットはいくら?

東京会場

観覧料(税込)
当日券
一般2,100円/ 大学1,300円/ 高校生900円

京都会場

観覧料(税込)
前売券
一般1,800円/ 高大生1,000円/ 小中生600円

当日券
一般2,000円/ 高大生1,200円/ 小中生800円

宮城会場

未定

福岡会場

未定

ポンペイ展の会場・巡回先はここ

東京会場 2022年1月14日(金)~4月3日(日)

東京国立博物館平成館 
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
Tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル)

開館時間
9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※3/4(金)より金曜、土曜、日曜、祝日は18:00まで
※総合文化展、その他特別展は17:00閉館

休館日
月曜日、3/22(火)
※ただし、3/21(月・祝)・3/28(月)は開館

アクセス
○JR「上野駅」公園口・鶯谷駅南口より徒歩10分
○東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」、東京メトロ千代田線「根津駅」より徒歩15分
○京成電鉄「京成上野駅」より徒歩15分

京都会場 2022年4月21日(木)~7月3日(日)

京都市京セラ美術館
〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124
Tel. 075-771-4334
Fax. 075-761-0444

開館時間
10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)

休館日
月曜日
※祝日の場合は開館 5月2日(月)は開館

アクセス
○電車
・地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約8分
・京阪「三条駅」・地下鉄東西線「三条京阪駅」より徒歩約16分
※滋賀方面からは、京阪・JR・地下鉄東西線「山科駅」から地下鉄東西線「東山駅」が便利
○市バス
・JR・近鉄・地下鉄「京都駅」から
A1のりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
D2のりば
86系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
・阪急「京都河原町駅」から
Eのりば
46系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
Hのりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
・京阪「三条駅」から
Dのりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

宮城会場 2022年7月16日(土)~9月25日(日)

宮城県美術館
〒980-0861 仙台市青葉区川内元支倉34-1
Tel. 022-221-2111
Fax. 022-221-2115
bijutu@pref.miyagi.lg.jp

開館時間
9:30~17:00(観覧券の販売は16:30まで)

休館日
毎週月曜日
※祝日・休日にあたる場合は開館し、翌平日が休館となる

アクセス
○地下鉄
仙台市営地下鉄東西線「国際センター駅」西1出口から北へ徒歩7分、「川内駅」北1出口から東へ徒歩7分
○路線バス
仙台市営バス
仙台駅西口バスプール9番乗り場より、
・730系統:川内営業所前行
・739系統:(広瀬通経由)交通公園循環のいずれかに乗車、「二高・宮城県美術館前」下車徒歩3分(仙台駅より所要約15分)
○るーぷる仙台
仙台市内の観光スポットを結ぶ循環型バス
当館の最寄りには「国際センター駅・宮城県美術館前」へ停車する

福岡会場 2022年10月12日(水)~12月4日(日)

九州国立博物館
〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4-7-2
Tel. 050-5542-8600(ハローダイヤル)

開館時間
9:30〜17時00分(入館は16時30分まで)

休館日
月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)、年末

アクセス
○西鉄を利用
・「西鉄福岡(天神)駅」から約35分
「西鉄福岡(天神)駅」から西鉄天神大牟田線(特急約16分/急行約18分)で「西鉄二日市駅」乗り換え、西鉄太宰府線(約5分)で「西鉄太宰府駅」下車、徒歩で約10分
・大牟田方面から
西鉄天神大牟田線(天神方面行き)で西鉄二日市駅乗り換え、西鉄太宰府線(約5分)で西鉄太宰府駅下車、徒歩で約10分
○JRを利用
JR「博多駅」から
・博多バスターミナルから太宰府ライナーバス「旅人」(約40分)で「西鉄太宰府駅」下車、徒歩で約10分
・JR「博多駅」からJR鹿児島本線(快速約15分)でJR「二日市駅」下車、以下を参照
JR「二日市駅」から
・徒歩(約12分)または西鉄バス(約6分)で「西鉄二日市駅」へ、西鉄太宰府線「西鉄太宰府駅」下車、徒歩で約10分
・タクシーで九州国立博物館まで約15分
・西鉄バスで九州国立博物館まで約30分