ミロ展2022日本を夢みての感想と解説!ミロと日本の結びつきを瀧口修造との共作など、130点の作品と資料でたどります!

ジュアン・ミロの創作活動に、日本文化へ深い造詣あったことはあまり知られていません。「ミロ展ー日本を夢みて」では、代表作を始め日本の影響が感じられる作品、瀧口修造との共作など130点の作品と資料から、ミロと日本との結びつきを探ります。

ミロ展日本を夢みての感想と解説!

アンリク・クリストフル・リカルの肖像(1)1917年

太い輪郭線と塗られた紫と緑が、肖像画に生命とは距離をおいた無機的で近未来な印象をあたえています。左上に浮遊する、緑の輪郭のパレットも記号的でそのことを助長するようです。

しかし、大きくコラージュされた浮世絵の画中画は、江戸時代の賑わいを伝え画面全体を混沌とした世界に再構成します。

アンリク・クリストフル・リカルは、ミロの美術学校からの友人で浮世絵のコレクターでした。浮世絵はリカルのアトリビュートです。

私は背景に渓斎英泉(けいさいえいせん)や 歌川広重の浮世絵を散りばめた、ゴッホの《タンギー爺さん》を思いました。

これらはコラージュではなく模写です。ミロはゴッホの《梅の開花》《雨の橋》のように模写をすることも、モネの《ラ・ジャポネーズ》のように日本を装ったモデルを描くこともありませんでした。


「ミロ展」への出展はありません

ミロは抽象画を描くようになり、書に親近感を覚えます。江戸時代の禅僧仙厓義梵(せんがいぎぼん)の《○△□図》をもとに《太陽の前の人物》(139ページ)(上図)《無題》(112)を描きました。

墨の濃淡はありますが○△□を並べただけでは、何も描いていないのに近いと私は思います。それを自らの作品にまで持ち上げたのは、ジャポニズムを追い続けたミロの手腕に他なりません。

絵画(パイプを吸う男)(14)1925年

ミロの《空也上人立像》。

絵画(カタツムリ、女、花、星)(40)1934年

1924年から1927年にかけ、ミロは画面に文字を描きました。一連の詩となっているものは《絵画=詩》と呼ばれています。《絵画(カタツムリ、女、花、星)》はその余韻を留めています。円弧はキャラの間を縫って疾走する、ジェットコースターのようです。

ライドは右の女の手から滑り落ち、ふたつの円弧を通り「escargot(カタツムリ)」の「e」まで一気に向かいます。この「e」「s」とゆるいS字を描き「cargot」へ続くラインはいちばんの難所です。

「t」から「étoile(星)」の「é」へ遠距離を上ります。「t」の長く伸びたステムを急降下し、末尾の「e」から再び「femme(女)」の「e」に上ります。

先頭の「f」のバーから水平に左に向かい、「fleur(花)」の「f」まで垂直に降下するラインは2番目の難所です。無事生還できるでしょうか。

右端のキャラは女と予想がつきましたが、他はわかりませんでした。文字は絵の一部としてあり、キャプションにはなってはいないようです。

「私は絵画と詩とを区別しません。絵を詩句で飾ることもあれば、その逆もまた然り。精神の大家である中国の人々もそうしませんでしたか?」

ミロ展日本を夢みての図録をデサインマニアが分析!

・おもて表紙は《絵画(カタツムリ、女、花、星)》(40)(上図右)です。タイトルは欧文と和文が縦組みと横組みを交え、パズルのように長方形に収められています。「and JAPAN」の扱いが絶妙です。

長方形は白抜きにして、画面左下に置かれています。背表紙は表紙の《絵画》の続きです。ミロは1921年から1925年まで作品にタイトルを付けず《絵画》としていました。

ゴシック聖堂でオルガン演奏を聴いている踊り子(41)1945年

うら表紙は《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聴いている踊り子》(41)(上図)です。

・折り返しは《絵画》に使われている、黒味の濃い赤色を背景色にしています。色名は真朱(しんしゅ)です。おもて表紙の頭文字「J:」は、ジュアン・ミロ『俳句』(84)から、うら表紙の「JAPON」は『20世紀』46号、1976年9月、20世紀社(91)から持ってきました。

・巻頭の巡回先を記したページには、信楽焼の狸を見上げるミロが見開きで掲載されています。Bunkamura会場入口付近にもありました(上図)。1966年、ミロが73歳で初来日したときのものです。

関西では桂離宮、八木一夫邸、京都国立近代美術館、東大寺、奈良国立博物館などを訪れました。このときの模様は論文「ジュアン・ミロの初来日ー訪問先と日本との関係の変化」に詳しく述べられています。

ミロのポートレートはこの他に、バルセロナのアトリエでのもの(1918−19年)、カタルーニャ建築協会の窓にホウキで描くもの(1969年)があります。

・各章の扉は薄いグレーが引かれており、余白の左下方には様々な佇まいのミロのサインが、白抜きで置かれています。

第4章は、星やト音記号を加えてイラストのような「Miró」、第5章はカタカナで「ミロ」としています。前者は『ジュアン・ミロ展:版の仕事と11メートルの掛物』(66)から、後者は《祝毎日》(75)からです。

・シリーズや冊子、たとえば《マジョルカ・シリーズ》(113)は見開きで12点が掲載されています。しかし多くは1ページに1、2点です。

また表紙に使われた2点と《絵画=詩(おお!あの人やっちゃったのね)》(39)《絵画》(51)は見開きで1点です。

無題(112)1972年(上)

マキモノ(111)1956年(下)

さらに、《マキモノ》(111)《無題》(112)(上図)は観音開きで掲載され、部分拡大がもう1ページ加わります。これら6点は見どころです。全作品には、こちらが主ではないかと思われるほど、詳細な解説が添えられています。

・「第2章 画家ミロの歩み」には、1932年から1933年にかけて、日本で初めてミロの作品を展示した「巴里新興美術展」の目録(22)と3号雑誌『巴里・東京』(23)が掲載されています。私はこのような消耗品が保管されていたことに驚きました。

このときは、レジェ、シャガール、マン・レイ、キリコ、ピカソら56作家による116点が展示されました。ミロは2点出展しており、うち1点が《焼けた森の中の人物による構成》(26)(下図)です。

焼けた森の中の人物による構成(26)1931年

・1966年、ミロは代表作171点による大規模個展「ミロ展」が開催され念願の初来日を果たします。

「第5章 二度の来日」では、このときの《ミロ展ポスター》(73)(75)を国立近代美術館のアートディレクターを務めた原弘(はらひろむ)と、グラフィックデザイナーの粟津潔がそれぞれ手がけています。

瀧口修造『ミロ(西洋美術文庫48)』(77)1940年

ミロに関する単行書では世界で最初に出版された、詩人・美術評論家の瀧口修造著『ミロ(西洋美術文庫48)』(77)がありました。

同書の出版は1940年ですが、瀧口とミロは1966年になって初対面を果たし共同作業が始まります。共作の詩画集『手づくり諺』(90)『ミロの星とともに』(95)が掲載されています。

国立国際美術館の吹抜けに展示された《無垢の笑い》、「ミロ展」への出展はありません

ミロは大阪万博の前年1969年に、依頼を受けたガスパビリオンの陶板壁画《無垢の笑い》(104ページ)(上図)の設置確認のため、陶芸家アルティガス親子と共に再来日をします。

またこのとき、ミロはパビリオンのスロープに即興で絵を描きました。《無垢の笑い》は中之島の国立国際美術館に、スロープ壁画は解体・破壊されたと言われていましたが、一部が大阪ガスに保管されていることがわかりました。

ミロが壁画を描く様子、スロープ壁画の全景、保管されたその一部があります(105ページ)。このときの模様は論文「ミロ 大阪万博の記録と記憶」に述べられています。

ソフトカバー/ W225mm × H297mm/ モノクロ・カラー/ 216ページ/ 日・英
価格:2,500円(税込)

ミロ展日本を夢みてのグッズは何がある?

『もっと知りたいミロ 生涯と作品』

言うまでもありませんが、「ミロ展」に出展されていない作品も数多く掲載されています。私は次の作品が目に留まりました。

カタルーニャの農村を《花と蝶》(11)のタッチで描いた《ラ・マジア》。《猫と紐》(16)の解説でタイトルだけ記されていた《アルルカンの謝肉祭》。

オランダの画家ヘンドリク・マルテンスゾーン・ソルフの《リュートを弾く人》をコミカルに変換した《オランダの室内I》。タイポグラフィックな《絵画=詩(一羽の鳥が1匹の蜂を追い落とす)》。ミロの星座で埋め尽された《一組の恋人たちに未知を開示する美しい鳥》。

Miro パペット

どこかに描かれているのでしょうか。ちょっと困った顔です。

ミロ展日本を夢みての混雑状況は?

ビッグデータから

混雑状況を、ビッグデータから解析するサイトを見ます。

「あの展覧会混んでる?」

グーグルマップから

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「Bunkamura ザ・ミュージアム」「愛知県美術館」「富山美術館」など、目的の美術館名を検索して開きます。

ミロ展日本を夢みての所用時間は?

90〜120分
私は11:22から13:15で鑑賞しました。

ミロ展日本を夢みてのチケットはいくら?

Bunkamura ザ・ミュージアム 

会期中すべての土日祝および4月11日(月)~4月17日(日)は事前に「オンラインによる入場日時予約」が必要。

入館料(消費税込)
当日
一般1,800円/ 大学・高校生1,000円/ 中学・小学生700円
前売
一般1,600円/ 大学・高校生800円/ 中学・小学生500円

※チケットは、会期中1枚につき1人様1回限り有効。再入場はできない。
※チケットの転売は禁じる。また、払い戻し、交換、再発行はしない。
※学生券を購入する場合は、学生証を提示する。(小学生は除く)
※障がい者手帳の提示で、本人と付き添いの1名様は半額となる。(一般900円、大学・高校生500円、中学・小学生350円)当日窓口にてご購入する。
※未就学児は入館無料。

愛知県美術館

入館料
当日
一般1,800円/ 高校・大学生1,200円/ 中学中学生以下無料

団体・前売
一般1,600円/ 高校・大学生1,000円/ 中学中学生以下無料

※団体は20名以上
※上記料金で本展会期中に限りコレクション展も鑑賞できる。
※身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳(愛護手帳)、特定医療費受給者証(指定難病)のいずれかの持参者は、各券種の半額で鑑賞できる。また付き添いは、各種手帳(「第1種」もしくは「1級」)または特定医療費受給者証を持参の場合、いずれも1名まで各券種の半額で鑑賞できる。Boo-Woo(ブーウー)チケットほかで購入し、当日会場で各種手帳(ミライロID可)または受給者証をご提示する。付き添いの方はお申し出をする。
※学生は当日会場で学生証をご提示する。
※当日券のみ愛知県美術館チケット売場で購入できる。

富山県美術館

未定

ミロ展日本を夢みての会場・巡回先はここ

Bunkamura ザ・ミュージアム 

〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)

開催期間
2020年2月11日(金・祝)~4月17日(日)

開館時間
10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

休館日
2/15(火)、3/22(火)

アクセス
○JR線「渋谷駅」ハチ公口より徒歩7分
○東京メトロ銀座線、京王井の頭線「渋谷駅」より徒歩7分
○東急・東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線「渋谷駅」A2出口より徒歩5分
○京王井の頭線「神泉駅」北口より徒歩7分

愛知県美術館

〒461-8525 名古屋市東区東桜一丁目13番2号
Tel. 052-971-5511(代)

開催期間
2022年4月29日(金・祝)~7月3日(日)

開館時間
10:00~18:00、金曜日は20:00まで
(入館は閉館の30分前まで)

休館日
毎週月曜日

アクセス
○地下鉄
東山線または名城線「栄駅」下車、徒歩3分
(オアシス21から地下連絡通路または2F連絡橋経由)
○名古屋鉄道
瀬戸線「栄町駅」下車、徒歩2分
(オアシス21から地下連絡通路または2F連絡橋経由)

富山県美術館

〒930-0806 富山県富山市木場町3-20
Tel. 076-431-2711
Fal. 076-431-2712

開催期間
2022年7月16日(土)~9月4日(日)

開館時間
9:30~18:00
(入館は17:30まで)

休館
毎週水曜日(祝日除く)、祝日の翌日・年末年始

アクセス
JR「富山駅」から
○新幹線 改札口(富山駅南口)から
・徒歩で約17分
・バスで7番のりばより乗車、「富山県美術館」下車すぐ
・タクシー、車で約10分
○あいの風とやま鉄道 改札口(富山駅北口)から
・徒歩で約15分
・バスで1番のりば「富山赤十字病院 県美術館経由」に乗車、「富山県美術館」下車すぐ
・タクシー、車で約3分