フェルメールと17世紀オランダ絵画展の感想と解説!窓辺で手紙を読む女を修復し、塗り潰されていたキューピッドが現れる、所蔵館以外で世界初公開!

ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」は、ヨハネス・フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》の壁面に塗り潰されていたキューピッドの画中画が修復により現れ、所蔵館以外で世界初公開されます。さらに、オランダ絵画の黄金期に描かれた約70点も展示されます。

フェルメールと17世紀オランダ絵画展の感想と解説!

ヘラルト・ダウ《歯医者》(02)1672年

当時の抜歯は、一大イベントだということを2019年の「カラバッジョ展」《歯を抜く人》で知りました。今まさに歯を抜こうとするその瞬間を、老若男女6人の野次馬が詰めかけ固唾(かたず)を呑む様子が描かれています。

歯を抜く行為は、動的でダイナミックな表現を見せるバロック絵画に持ってこいのテーマでした(笑)。第6章「複製版画」の《歯医者》(62)がこれに近いです。

《歯医者》(02)(上図)では、スリルとサスペンス路線から打って変わり、アーチ状の石作りの窓から覗く歯医者と患者の少年が描かれています。歯はすでに抜かれ歯医者の手にあり、張り詰めた緊張感はありません。

窓枠に器具を置き、外に開いて医療を施す様子は不自然な場面設定です。赤いカーテンを緞帳とすると寸劇のように思え、かえって絵画らしくもあります。もし少年がほほえんでいたら、不自然を通り越しコマーシャルの一場面にもなるでしょう。歯医者劇場は、リアルに描けば描くほどコミカルです。

レンブラント・ファン・レイン《若きサスキアの肖像》(25)1633年

《若きサスキアの肖像》(上図)は、第2章「レンブラントとオランダ絵画」の数ある肖像画の中で陰影のあり方が絶妙です。肖像画のポイントになる両目に、帽子の影を斜めに掛けるところに作家の力量を感じます。

スポットが当たっているのは、目の下から左肩の飾りまでのそれほど広くない部分です。耳飾りには強い、鼻の頭には弱めのハイライトがあります。小さく開いた口から覗く前歯、左頬から顎にかけてのわずかな肌の凹凸が写実的です。

次に明るいのが、影の掛かった顔と燕脂色(えんじいろ)の帽子の前部です。手袋をした女性の右手など、それらから外れると一気に暗くなります。後頭部、肩飾りの下、後ろ髪や背中に至っては背景の暗部と同化しています。肖像は光の中に質感と色彩をはっきりと残し、闇の中に浮かび上がっています。

ザビーネ・ベンフェルト《窓辺で手紙を読む女》(72)2001年

上図からは、トリミングされていて分かりませんが、修復前はカーテンレールの上にかなりの余白あります。改めて画面の四隅を見比べると、窓の左に格子があります。カーテンの下にも余白もがあり、カーテン右端のひだの様子もちがいます。

これらは後に描き加えられたもので、画中画の上塗りと共に取り除かれます。フェルメールはカンヴァスの周りに、描かれていない部分を残しました。カーテンの下のこの部分には、ワイングラスの脚部がポツンと描かれています。興味深い箇所ですが、額装に隠されてみることはできません。

ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(71)1657〜59年頃

画面の1/3ほどをおおうカーテンは、女性の部屋の間仕切りのように思えますが、この絵画を保護するために掛けられました。17世紀の習慣を描いた騙し絵(トロンプルイユ)です。

図録の巻頭論文「描かれたカーテン」には、絵画陳列室のカーテン付き絵画の図版(39ページ)が添えられています。

フェルメールは、キューピッドの画中画を他の作品にも描いています。《寝る女》では泥酔して居眠りする女性の頭上に、キューピッドの左足と、左向きに立てられた横顔の仮面を描きました。

《中断された音楽の稽古》は、楽譜を手にこちらを向く女性と、その楽譜を覗く男性がいます。背後の画中画は闇のようですが、左手を掲げてたキューピッドが描かれています。


※「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に展示はありません

《ヴァージナルの前に立つ女》(上図)はヴァージナルの手を休め、こちらを向く女性です。白い雲の切目から青空が表れ、キューピッドは右手には弓を、掲げた左手には何やら1枚のカードを持っています。

もとになったキューピッドは当時の寓意図像集にありました。そこには「愛は何かを偽ることはできない」と記されています。しかし、キューピッドのあるこれらの作品は、全て同じテーマを持つのでしょうか。描きたしたり塗りつぶしたりで、テーマが行方不明になったものもありました。

《窓辺で手紙を読む女》では、女性に恋愛の手ほどきをするために白い壁面より現れたようです。

フェルメールと17世紀オランダ絵画展の図録をデサインマニアが分析!

・表紙は網目状にエンボス加工された、黄色の特殊紙が使われています。タイトルは画面上部に「Johannes Vermeer and the Masters of the Golden Age of Dutch Painting」と、欧文で記されています。フェルメールとオランダ絵画の黄金時代の巨匠が直訳です。

表紙は、上部1/4強のタイトルが記された部分を残し、カバーが掛けられています。カバーのおもて表紙側には《窓辺で手紙を読む女》(71)の修復後が、うら表紙側は修復前が、画面上下をトリミングして載せられています。

・見返し、カバーの折り返し、扉には黒が使われています。黒は図録のキーカラーのようです。

・各章の扉は見開きで左2/3ほどが作品の部分拡大、右1/3はやはり黒を背景色に解説が記されています。部分拡大された作品は見どころのひとつです。

ヤン・ステーン《ハガルの追放》(45)1655〜57年頃

第1章は、ヘラルト・テル・ボルフ《白繻子(しろじゅす)のドレスをまとう女》(09)。第2章は、レンブラント・ファン・レイン《若きサスキアの肖像》(25)。第4章は、ヤン・ステーン《ハガルの追放》(45)(上図)です。

・作品は左ページに解説、右ページに図版と見開きで1点が掲載されています。《鳥売りの男》(15)《鳥売りの女》(16)のように2点がシリーズのものは、始めの2ページに図版が2点、次の左ページに解説と右ページを上下に分け部分拡大が置かれています。

第6章のみ、解説が1文のため見開きに2点の図版が並びますが、規則正しく繰り返されるレイアウトは類を見ません。

・巻末の「作家解説」は巨匠たちのリアルです。フランス・ハルツは、肉屋や靴屋からの借金で訴えられていました。フェルメールは、妻と11人の子どもたちを残して没しています。

ハードカバー/ W200mm × H290mm/ モノクロ・カラー/ 264ページ/ 日・英
2,900円(税込)

フェルメールと17世紀オランダ絵画展の混雑状況は?

私は平日の午後から鑑賞しましたが、日時指定予約制のためか混雑はしていませんでした。フェルメールの前に10名ほどのこともあれば、ひとりもいないこともありました。

公式ツイッターから

混雑状況は、展覧会や美術館の公式ツイッターに掲載されます。災害による臨時休館や、イベント情報などリアルタイムで分かります。

グーグルマップから

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「東京都美術館」「北海道近代美術館」「大阪立美術館」「宮城県美術館」など、目的の美術館名を検索して開きます。

フェルメールと17世紀オランダ絵画展の所用時間は?

私は14:12から16:39で鑑賞しました。

90〜120分

フェルメールと17世紀オランダ絵画展のチケットはいくら?

北海道会場

当日券
一般1,800円/ 高大生1,000円/ 小中学生700円

団体・リピーター割引
一般1,600円/ 高大生800円/ 小中学生500円

※団体は10名以上
※リピーター割引料金は、道立美術館で開催された特別展の半券を提示した場合の料金(有効期限は半券に記載、1枚で1人1回限り有効)
※未就学児無料
※障がい者手帳の提示者とその介護者(1名)は無料
※小学生以下の子どものみの入場は不可(要保護者同伴)

大阪会場

当日券
一般2,100円/ 高大生1,500円

前売・団体券
一般1,900円/ 高大生1,300円

※団体は20名以上
※消費税込
※中学生以下、障がい者手帳等の提示者(介護者1名を含む)は無料(要証明)
※大阪市内在住の65歳以上も一般料金となる

宮城会場

未定

フェルメールと17世紀オランダ絵画展の会場・巡回先はここ!

東京会場 2022年2月10日(木)~4月3日(日)

東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

開室時間
9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)

休室日
月曜日

アクセス
○JR「上野駅」公園口より徒歩7分
○東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分
○京成電鉄京成「上野駅」より徒歩10分

北海道会場 2022年4月22日(金)〜6月26日(日)

北海道近代美術館
〒060-0001札幌市中央区北1条西17丁目
Tel.011-644-6881

開館時間
9:30 ~17:00(入場は16:30まで)
※金曜日(5月6日を除く)は19:30まで開館(入場は19:00まで)

休館日
月曜日(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館)

アクセス
○地下鉄東西線「西18丁目駅」から
4番出口から徒歩約5分
○JR札幌駅から
・地下鉄
南北線真駒内行「さっぽろ駅」から「大通駅」下車、東西線に乗り換え、東西線宮の沢行「大通駅」から「西18丁目駅」下車、徒歩約5分
・JRバス、中央バス
「札幌駅バスターミナル」より手稲、小樽方面「道立近代美術館」下車、徒歩約1分
・タクシーで約10分
○新千歳空港から
JR札幌、小樽方面「新千歳空港」から「新札幌駅」下車、地下鉄乗り換え、地下鉄東西線宮の沢行「新さっぽろ駅」から「西18丁目駅」下車、徒歩約5分

大阪会場 2022年7月16日(土)〜9月25日(日)

大阪立美術館
〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82
Tel.06-6771-4874

開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)

休館日
月曜日(8月15日、9月19日は開館)、7月19日

アクセス
最寄駅
○地下鉄
・御堂筋線「天王寺駅」
・谷町線「天王寺駅」15・16番出口
○JR
「天王寺駅」中央口改札
○近鉄・南大阪線
「大阪阿部野橋駅」西改札口
○阪堺電気軌道
上町線「天王寺駅前駅」
○大阪シティバス
「あべの橋停留所」
最寄り駅で下車し、北西へ徒歩約400m、美術館は天王寺公園内にある

宮城会場 2022年10月8日(土)〜11月27日(日)

宮城県美術館
〒980-0861 仙台市青葉区川内元支倉34-1
Tel.022-221-2111
Fax.022-221-2115

開館時間
9:30~17:00(観覧券の販売は16:30まで)

休館日
毎週月曜日(ただし祝日・休日にあたる場合は開館し、原則として翌平日が休館となる)

アクセス
○地下鉄
仙台市営地下鉄東西線「国際センター駅」西1出口から北へ徒歩7分、「川内駅」北1出口から東へ徒歩7分
○路線バス
・仙台市営バス
仙台駅西口バスプール9番乗り場より、730系統:川内営業所前行
739系統:(広瀬通経由)交通公園循環のいずれかに乗車、「二高・宮城県美術館前」下車徒歩3分
○るーぷる仙台(仙台市内の観光スポットを結ぶ循環型バス)
「国際センター駅・宮城県美術館前」下車