井上泰幸展に行ってきました!特撮映画のスケッチ・デザイン画・絵コンテ・記録写真・ミニチュアセット約500点を展示!

生誕100年特撮美術監督井上泰幸展」は、円谷英二のもと「ゴジラ」(1954)から特撮美術助手となり、多くの特撮映画に関わった井上泰幸の業績を、スケッチデザイン画絵コンテ記録写真ミニチュアセットなど約500点からたどります。

井上泰幸展の感想と解説!

展示されているのは、井上の残した膨大な資料の整理された一部です。本来ならば観賞するのは、そこから生み出された特撮映画です。資料は日の目を見ないはずでした。

「妖星ゴラス」「怪獣総進撃」(上図)「ノストラダムスの大予言」「日本沈没」「惑星大戦争」のイメージボードは、現実と空想がないまぜになった絵本のようです。

「モスラ対ゴジラ模型一覧表」「北極の海岸に立つキングコング、井上式セット設計」「怪獣総進撃、武装車両一覧表」は、事細かに記された数値から特撮映画への熱量を読み取ることができます。

会場に岩田屋ミニチュアセット(上図)があったので、帰宅後サブスクで「空の大怪獣ラドン」を見ました。岩田屋はこともあろうにラドンに壊され、西鉄街のセットが燃えるだけのシーンがしばらく続きます。

井上の描いたイメージボードと一覧表は、このわずかなシーンのために存在したものです。堆く積み上げられた展覧会は、多くを惹きつけて止まない特撮映画の検証でもあります。

井上泰幸展の図録をデサインマニアが分析!

・表紙は方眼紙を背景に、井上の描く「空の大怪獣ラドン」のイメージボードと、樋口真嗣(ひぐちしんじ)の描く「井上泰幸展」のロゴタイプとの共演です。

樋口真嗣は「シン・ウルトラマン」の監督です。ロゴタイプは告知のほか、会場のエントランスにもヘドラと並び掲示されていました(上図)。

私は当初このロゴタイプを、下書きの線を残したレタリングかと思いました。しかしよく見ると、細い線の多くは印刷に使うトリムマーク(下図)を重ねたものでした。乱用です(笑)。

「井上泰幸展」の、5文字の組み方はそれぞれちがいます。エントランスは横一列です。告知(下図)は縦組みで「井上泰幸」の右下に「展」が置かれています。本来は右から左に読むので「展」は「井上泰幸」の左側に置きます。

面白いのが図録です。「井上」は横組みで左から右。「泰幸」は縦組みで上から下。「展」は「幸」の左で「コ」の字に読みます。本来は横組みなら「井上泰展幸」、縦組みなら「上泰幸井展」となるところです。そう読まれないように「展」がグレーにしてあります。

さらに「生誕100年」は縦組み、「特撮美術監督」は横組みにしてあります。可読性を求めなければ、文字組みはパズルのようです。

・折り返しは「y.いのうえ」と、花押にも似たサインが記されています。

・巻頭には「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」のイメージボード(上図)、「日本沈没」の絵コンテ、「ゴジラ対ヘドラ」のヘドラのデザイン画、「モスラ」のワンシーン、「三大怪獣 地球最大の決戦」の撮影風景などが連なります。ペンと水彩で描かれた平面の世界から、ミニチュアで再現した特撮空間へと誘います。

・1994年に、アルファ企画で撮影された井上のポートレート(上図)とプロフがあります。井上は、思いがけず新東宝の撮影所で美術スタッフとなり、特撮の道を歩みはじめます。

・各章の扉には図面が使われています。第2章は「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」大プール用波起こし機図面(部分)です。後に東宝撮影所の財産となる特撮用大プールを設計しました。

第4章は「日本沈没」わだつみミニチュア図面(部分)です。東映から独立しアルファー企画を設立したときこの映画に携わりました。


※図録にこの画像はありません

・第2章「円谷英二との仕事ー“ 特撮の地位を上げる球の献身”」からは、映画ごとに資料がまとめられています。

「空の大怪獣ラドン」では、特撮資料が8ページにわたり掲載されています。岩田屋のイメージボード、ロケハン写真と寸分違わないミニチュア写真の並置、ラドンを加えた撮影風景があります。


※図録にこの画像はありません

西鉄街の撮影風景には、空を切るラドンの風圧で舞い上がる屋根瓦の様子が捉えられています。西海橋(さいかいばし)ミニチュアの接写は、アーチ橋の構造の美しさを余すことなく伝えています。

・第4章「アルファ企画から未来へー”世の中にないものを作れ”」には「岩田屋ミニチュアセット再現プロジェクト」がありました。

特撮美術監督三池敏夫による、再現エリアの平面図や岩田屋の立面図。俯瞰図には、採用されなかった物見台が描かれています。雲の神様島倉二千六(しまくらふちむ)の描くホリゾントも小さく掲載されています。

1/20のミニチュアを、さらに1/20にした検討用模型がありました。スチレンボードと針金で作らた銀世界です。

ソフトカバー/ W257mm × H182mm/ モノクロ・カラー/ 352ページ/ 日・英
4,950円(税込)

井上泰幸展のグッズは何がある?

『特撮映画美術監督 井上泰幸』

樋口真嗣の装丁で、井上泰幸へのインタビューが主です。巻頭の資料はカラーで、インタビューはモノクロです。

ソフトカバー/ W257mm × H182mm/ モノクロ・カラー/ 256ページ/ 日・英
3,960円(税込)

 

井上泰幸展の混雑状況は?

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「東京都現代美術館」を検索して開きます。

井上泰幸展の所用時間は?

私は10:56から13:45で鑑賞しました(笑)。

90〜120分

井上泰幸展のチケットはいくら?

一般1,700円/ 大学生・専門学校生・65歳以上1,200円/ 中高生600円 / 小学生以下無料

井上泰幸展の会場・巡回先はここ!

東京都現代美術館

〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
Tel.03-5245-4111(代表)
Tel.050-5541-8600 ハローダイヤル(9:00-20:00 年中無休)

会期
2022年3月19日(土)~6月19日(日)

開館時間
10:00〜18:00
※展示室入場は閉館の30分前まで 

休館日
月曜日(ただし、7月18日、9月19日、10月10日、2023年1月2日、1月9日は開館)、7月19日、9月20日、10月11日、1月10日
展示入替期間:6月20日~7月15日、10月17日~26日、10月31日~11月2日 年末年始:12月28日~2023年1月1日

アクセス
最寄駅
○東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2番出口より徒歩9分
○都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3番出口より徒歩13分
○東京メトロ東西線「木場駅」3番出口より徒歩15分、または都営バスで「東京都現代美術館前」下車
○都営地下鉄新宿線「菊川駅」A4番出口より徒歩15分、または都営バスで「東京都現代美術館前」下車