山下清展2022の感想と解説!「放浪の天才画家」山下清の回顧展!貼絵・油彩・水彩画・ペン画・少年期の絵日記帳など、約170点を展示!

特別展「生誕100年 山下清展ー百年目の大回想」は、「放浪の天才画家」として知られる山下清の回顧展です。貼絵・油彩・水彩画・ペン画・少年期の絵日記帳など、約170点から天才画家の生涯をたどります。

山下清展2022の感想と解説!

《蝶々》(7)1934(S9)年

《かたつむり》(17)制作年不詳

《上野の地下鉄》(33)1937(S12)年

○銀座線は東洋初の地下鉄として、1927(S2)年に上野・浅草間に開業しました。私に浮かんだのは、グラフィックデザイナー杉浦非水(すぎうらひすい)の描いたポスター《東洋唯一の地下鐵道 上野浅草間開通》(下図)です。

ホームに詰めかけた群衆が、電車の到着を今や遅しと待ち構えています。日本髪で着物姿の女性も見受けられますが、手前では洋服の親子が目を引きます。

背景は電車のオレンジ色に、ホームのクリーム色とグレーです。オレンジ色とクリーム色(黄色)は同系色、グレーは無彩色で控えめな配色になります。対して、群衆は赤いコートの女性をアクセントにし、それぞれにカラフルな衣服をまとっています。

これらを際立たせるため、線路の枕木が省かれています(驚)。


※山下清展に展示はありません。

地下鉄のポスターですが、杉浦は電車よりホームの賑わいを描きました。《東洋唯一の地下鐵道》は、遠近法により整理され都会的な印象を漂わせています。

《上野の地下鉄》は開業10年後の様子です。電車とホームの配色は、先述でグレーの部分が黒に変わりました。ただし、ここでは背景ではありません。山下は運転士や乗客のいる電車を2本描いています。

ホームには男性が3人、着物姿の女性4人は後向きです。ピンク色の着物がアクセントになっています。線路には、犬釘で留められた枕木が緻密に並べられています。

主役は人々なのか、電車なのか、意表をついて線路なのかもしれません。時代の先端を行く、しかしどこかのどかな地下鉄のホームです。

《栗》(44)1938(S13)年

《金せん花》(79)1949(S24)年

《桜島》(89)1954(S29)年

○《トンネルをくぐる時のこと》(56)では、トンネルのある山と平地との交わる線で、画面を分割しています。上部に正面から見たトンネルと、下部には上から見た線路です。線路は平行に描かれており、トンネルに梯子をかけたようです。

しかし、2年後に描かれた《トンネルのある風景》(114)では、線路に遠近法が用いられ不自然さがなくなります。

《桜島》(89)(上図)は、桜島は正面からですが、線路は上からの視点で描かれています。私は異なる視線の混在も、作品を構成する要素だと思います。堂々と描かれた線路は、この先も続くものだと思っていました。

《ラ・ムスメ(娘)ーゴッホによる》(84)1940(S15)年

貼り絵による模写です。山下は髪のハイライトや頬の赤みを、細かな短冊を重ねることで表しています。印象派の表現様式である、筆触分割のように見えます。逆に、ゴッホは左右の袖のストライプを途切れ途切れに描いており、山下の貼り絵のようです。

ゴッホは肌、特に左手に背景色の薄緑を加えています。山下もこれに倣い、背景色の薄黄を貼りました。

※山下清展に展示はありません。

ゴッホは、服装を赤と紺のコントラストの強い配色にし、重量感を持たせました。ウエストにはハイライトがあります。私は山下の《ラ・ムスメ》後に、ゴッホを見ましたが、これほど立体感があるとは思いませんでした。

山下は、上着をピンクとグレーのストライプ、スカートはグレーの地に黄色のドットで、大人びた気品を描きました。18歳のときの作品です。

《スイスの町》(136)1963(S38)年

《ロンドンのタワーブリッジ》(137)1965(S40)年

《東海道五十三次・横浜中央通り(横浜)》(183)制作年不詳

山下清展2022の図録をデサインマニアが分析!

○表表紙は、うつむいて貼り絵をする山下のモノクロのポートレートです。皺のある額と丸い鼻、作業をする両手が白く浮かび上がっています。右手で摘んだ、小さな紙片のところにだけシアンに彩色されてます。表紙を開くと見返しがシアンです。ここからちぎって持ってきたのでしょうか。

タイトルは黄色で、和文と欧文が併記され画面右端に置かれています。欧文は右に90°回転させ縦位置で大きく記されています。書体は「Adobi Garamond Bold」が用いられています。

「YAMASITA」の「I」が百日草に、「KIYOSHI」の「O」がヒラメに置き換えられています。和文の「山下清」の文字は活字ではなくサインからです。暗いポートレートを明るい文字でおおいながらも、顔をはっきり見せるレイアウトが絶妙です。

背表紙は背景色に黄色が引かれています。上部に《鉢花》(42)の一部分がアクセントに置かれています。

《長岡の花火》(86)1950(S25)年

裏表紙は横に分割され、上部に《長岡の花火》(86)(上図)が置かれています。下部には黒の背景色にグレーで、「今年の花火はどこに行こうかな」とあります。山下が最後に残した言葉です。太い明朝体のタイトな文字組みで右に寄せて記されています。

○各章の扉は見開きで原色が引かれています。原色は第1章の昆虫のペン画からでしょう。章を代表する作品と、山下のポートレートがそれぞれ切り抜きで置かれています。ポートレートには、山下の言葉が添えられています。

第1章「山下清の誕生ー昆虫そして絵との出会い」は、マゼンタの背景色に《蝶々》(16)《蜂1》(14)《蜂2》(15)《トンボ》(18)と幼少の頃の山下です。

《自分の顔》(85)1950(S25)年

第2章「学園生活と放浪絵の旅立ち」は、緑の背景色に《自分の顔》(85)(上図)が本編より大きくあります。その左下に《餅つき》(21)が小さく置かれています。着物姿の山下は、「自分が良いところへ行こう行こうと思うと 少しも良いところへ行かれない 良いところへ行こうとしなければ 自然に良いところへぶつかる 良いところへ行こうとするから 良いところへぶつからないんだろう」と哲学的です。

《パリのエッフェル塔》(139)1961(S36)年

第4章「ヨーロッパにてー清が見た風景」は、緑青の背景色に《パリのエッフェル塔》(139)(上図)です。山下は扇子を手に胡座(あぐら)をかいています。山下だけが切り抜かれていますが、パリでエッフェル塔をバックに撮影されました。

○1956年に『週刊朝日』に掲載された、マルチタレント徳川夢声(とくがわむせい)との対談「問答有用」が転載されています。山下が繰り返す「兵隊の位になおすと」のフレーズは当時の流行語になりました。

ソフトカバー/ W225mm × H285mm/ モノクロ・カラー/ 224ページ/ 日・英
価格:2,500円(税込)

山下清展2022の混雑状況は?

私は「神戸ファッション美術館」に出かけました。最終日の3日前だったので混んでいました。

ビッグデータから

「S0MPO美術館」は、ビッグデータから解析するサイトがあります。

https://komu.artafterfive.com/exhibition?a=514

グーグルマップから

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「福井市立美術館」「上田市立美術館」「S0MPO美術館」を検索して開きます。

山下清展2022の所用時間は?

90〜120分

私は平日の13:32から15:34で鑑賞しました。

山下清展2022のチケットはいくら?

福井市立美術館(アートラボふくい)

一般1,200円/ 大・高生800円/ 中・小生500円

団体料金
一般1,000円/ 大・高生700円/ 中・小生400円

※団体は20名以上
※障害者手帳提示者と介護者1名は団体料金
※未就学児は無料

上田市立美術館

未定

S0MPO美術館

未定

山下清展2022の会場・巡回予定はここ!

鹿児島市立美術館

会期
2022年3月25日(金)〜5月5日(木・祝)

神戸ファッション美術館


会期
2022年6月25日(土)〜8月28日(日)

福井市立美術館(アートラボふくい)

〒918-8112 福井市下馬3-1111
Tel.0776-33-2990
Fax. 0776-33-3114

会期
2022年9月3日(土)〜11月6日(日)

開館時間
9:00~17:15(入館は16:45まで)

休館日
9月5日(月)、9月12日(月)、9月20日(火)、9月26日(月)、10月3日(月)、10月11日(火)、10月17日(月)、10月24日(月)、10月31日(月)

アクセス
○フレンドリーバス
福井駅東口と県立図書館等の文化施設を、30分毎に運行する無料バス。
福井駅から美術館へは、毎時00分発の《子ども歴史文化館先回り》を利用。
○京福バス
福井駅西口交通広場バスターミナル5番のりばから
《東郷線(62)》→11分「下馬」→ 徒歩5分
《羽水高校線(61)、西大味線(63)》→15分「県産業会館・厚生病院前」→ 徒歩5分
○すまいるバス
福井駅西口交通広場バスターミナル6番のりばから
《木田・板垣方面行き》「板垣」下車、徒歩15分
○自家用車
福井I.C.よりおよそ10分。下馬中央公園に併設された駐車場がある。(無料、乗用車250台、大型バス4台 駐車可能)
○タクシー
JR福井駅より約10分

上田市立美術館

〒386-0025
長野県上田市天神三丁目15番15号
Tel.0268-27-2300
Fax. 0268-27-2301

会期
2023年2月25日(土)〜4月2日(日)

開館時間
9:00 ~ 17:00

休館日
火曜日(火曜日が祝日にあたるときは、その翌日)、12月29日から翌年1月3日まで

アクセス
○電車
北陸新幹線・しなの鉄道・上田電鉄別所線「上田駅」から徒歩約7分
○自家用車
上信越自動車道「上田菅平I.C.」から約15分、駐車場台数390台

S0MPO美術館

〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)

会期
2023年6月24日(土)〜9月10日(日)

開館時間
10:00 – 18:00
(入館は閉館30分前まで)

休館日
月曜日、展示替期間、年末年始

アクセス
JR「新宿駅」西口から徒歩5分

SOMPO美術館の行き方!JR・京王新線「新宿駅」から!
JR・京王新線「新宿駅」から「SOMPO美術館」まで、多くの画像を交え案内します。

東京メトロ「新宿駅」から徒歩5分

SOMPO美術館にアクセス!丸の内線「新宿駅」から!
丸の内線「新宿駅」西改札からSOMPO美術館まで、多くの画像を交えて案内します。

東京メトロ「西新宿駅」C13出口から徒歩6分
西武新宿線西武「新宿駅」から徒歩7分
大江戸線「都庁前駅」A1出口から徒歩7分