柚木沙弥郎は染色家です。2022年に100歳を迎えました。設置されたサインや室内装飾。展覧会に出品した染⾊、絵画、リトグラフ、人形、絵本、玩具のコレクション。発刊された書籍などからその魅力に迫ります。
柚木沙弥郎の読み方
柚木沙弥郎は、「ゆのきさみろう」と読みます。1922(T11)年に、東京市滝野川区(現・東京都北区)で生まれました。東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科に入学します。学徒動員されますが内地で終戦を迎え、父親の郷里である岡山県浅口郡(現・倉敷市)に復員します。
1946(S21)年に大原美術館に勤務します。柳宗悦(やなぎむねよし)の民藝の思想と、芹沢銈介のカレンダーに感銘を受け染色家を志します。芹沢に師事します。芹沢の勧めで、静岡県由比町(現・静岡市)の正雪紺屋(しょうせつこうや)で染色の基礎を学びます。
1950(S25)年に、女子美術大学工芸科専任講師に就任します。1955(S30)年に銀座のたくみ工芸店画廊で、初個展を開催します。1958(S33)年に型染め壁紙が、ベルギーのブリュッセル万国博覧会で銅賞を受賞します。
1984(S59)年に日本民藝館評議員に就任します。1987(S62)年に、女子美術大学・女子美術短期大学の学長に就任。1991(h3)年に退職します。2008(H20)年より3年連続で、パリで個展を開催します。
2014(H26)年に、フランス国立ギメ東洋美術館に作品80点が収蔵されました。2020(R2)年にエースホテル京都のロゴ(上図右)、客室アート、 ロビー、コーヒショップの暖簾(下図)を手掛けました。
柚木沙弥郎の2022年の展覧会
柚木沙弥郎 新作リトグラフ展 MON PARIS! MON TOKYO!
パリの版画工房「Idem Paris」で制作した、新作リトグラフ14点を展示します。
会期
2022年10月14日(金)~11月8日(水)
会場
IDÉE TOKYO
〒100-6751 東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東日本東京駅改札内
IDÉE SHOP Umeda
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町4−20 グランフロント大阪南館5F

《ロボット》2022年
《東京》2022年
○《東京》は東京タワーです。メインデッキ辺りから下の部分です。ちょうど赤1色で収まりました。この上には白がきます。当初からタワーを描こうとすると、この形状にはならないでしょう。通常はシンメトリーにします。
正方形を線で分割した格子状の作品《Song of Joy》があります。その両脇を円弧で切り抜き塔脚にしました。中央の「×」もさることながら、最下部の矩形の切り抜きがフットタウンを表しており絶妙です(驚)。このために描いたようにさえ思えます。
メインデッキは、大島忠智著『Tomorrow』の柚木の略歴ページのコラージュです。柚木の100年の歩みをアクセントにしました。
《カタチ》2022年
柚木沙弥郎 & アレキサンダー・コリ・ジラード 二人展 East Meets West
柚木とアレキサンダー・コリ・ジラードの2人による企画展です。
アレキサンダー・コリ・ジラードは、ミッドセンチュリーを代表する建築家・デザイナーのアレキサンダー・ジラードの孫です。エースホテルの、レストランのタイルデザインとファブリックパネルのデザインをしました。
柚木は60代で訪れた、サンタフェにあるアレキサンダー・ジラードのクラフトミュージアムが、ターニングポイントとなりました。
柚木とコリそれぞれの作品が6点、計12点が並びます。
会期
2022年10月1日(土)~2023年1月10日(火)
会場
エースホテル京都1階 ロビーギャラリー
〒604-8185京都府京都市中京区車屋町245-2 新風館内

《Samiro 5》2022年
《Samiro 6》2022年
柚木沙弥郎 life・LIFE
柚木が1990年代から手掛ける絵本『ぎったんこ ばったんこ』『つきよのおんがくかい』『そしたら そしたら』『雨ニモマケズ』などの原画約80点。
型染作品《ねじり文》《並ぶ人》《小鳥》《アルファベット》《Morning》など30点。その他に、紙粘土と布で作られた人形、型染ポスター、コレクションした玩具などを展示します。
会期
2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日)
会場
PLAY! MUSEUM
〒190-0014 東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 2F

会期
2022年11月11日(金)~12月25日(日)
会場
美術館「えき」KYOTO(京都駅ビル内・ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
〒600-8216 京都府京都市下京区東塩小路町

山下洋輔・文 柚木沙弥郎・絵『つきよのおんがくかい』1999年
○クマ、ウマ、イヌ、ネコが、満月の夜に楽器を持ち寄り、ウサギたちのためにコンサートを開きます。その様子を茂みから覗いていた少年が、我を忘れて仲間に加わりいっしょに踊り出します。コンサートは佳境に入り、夜がにぎやかにふけていきます。上図はラストシーンです。
青緑色の空に白く浮かぶ満月と、辺りをおおう紺色の樹木。円弧を描く黒い大地の上で、演奏する黒い4匹。大地の内では、入り乱れ踊る草色のウサギたちと少年です。
このページは全て、シルエットだけで描かれています。しかし、少年を簡単に探すことができるほど、シルエットの描写は絶妙です。多くの不定形のシルエットを月と大地の図形が挟み込み全体をまとめています。また、円弧は上と下で演奏者と聴衆を分割し、この場を明瞭にしています。
コンサートは熱気を帯びていますが、色彩は寒色系が多くを占め静寂な印象をあたえます。物語りが終盤にさしかかり、この場から次第に遠ざかっていくことを予感させます。
宮沢賢治・作 柚木沙弥郎・絵『雨ニモマケズ』2016年
『光原社マップ』1996年
《町の人々》(中央)2004年
玩具のコレクション
《ねじり文》(中央)1995年
《Morning》(中央、赤)2019年
柚木沙弥郎の書籍をデサインマニアが分析!
柚木沙弥郎 life・LIFE
【展覧会図録】柚木沙弥郎 life・LIFEhttps://t.co/PTBkDOTf99
染色家/アーティストである柚木沙弥郎の大規模個展が開催中。本書はその図録を兼ねた特製アートブックです。
原寸大の染色作品を断ち落としたB1サイズのポスターが、本のカバーとして付いてきます。(カバーは4種類。種類の選択不可) pic.twitter.com/t55iWmbJ2N— 銀座 蔦屋書店 (@GINZA_TSUTAYA) December 20, 2021
○まず、サイズがA3変形と大判です。ショッパーに入れてもらいました(笑)。
○表紙には茶色のボール紙が使われています。型染に用いる渋紙をイメージしたものでしょうか。
タイトルの書体は柚木の手によります。2行に改行され「life・LIFE」の部分はカバーで隠れています。life・LIFEは、暮らしと人生を意味しますが、2021〜22年にかけて東京・京都で開催された展覧会のテーマです。同書はその図録を兼ねています。
《幕》1961年
○カバーは《小鳥》(p.33〜36)《幕》(p.66・67)《アルファベット》(p.49〜52)《注染布》(p.65)の4種類から選べます。カバーは折り畳んであり、広げると、W1000mm × H718mm のB1サイズに近いポスターになります(驚)。
《アルファベット》2020年
○巻頭は柚木のポートレートに始まります。型紙を持つ柚木の右手。ペンチや竹尺やカッターと並ぶ、角材の先に巻きつけた鉛筆ホルダーから顔を出す鉛筆。柚木の目前でおどける虎の型紙。アトリエに揃う寡黙な品々が大迫力です。
染色家・柚木沙弥郎の展覧会が美術館「えき」KYOTOで、カラフルな染色や絵本原画など展示 https://t.co/qRNUB7VdWi 展覧会「柚木沙弥郎 life・LIFE展」が、京都の美術館「えき」KYOTOにて、2022年11月11(金)から12月25日(日)まで開催される。 柚木沙弥郎は、2022年に100歳を迎えた現在も現役で活動す…
— museumnews jp (@museumnews_jp) November 12, 2022
○巻頭の染⾊作品は、原⼨⼤で左右のページに1点ずつ収められています。と、思っていました。左ページは全面に作品が載せてありますが、右ページは作品の左に30mm ほど余白が取られています。余白は左右の同一ではない作品を隔てる役割があります。
右ページは片観音になっています。余白は片観音を開かせる導線でもあります。開くと作品全体が姿を表します。片観音を閉じページをめくると、右ページの原⼨⼤の続きがあります。
1作品は全体像が2ページ、原⼨⼤が2ページの計4ページで掲載されていました。片観音で12作品が紹介されています(驚)。原⼨⼤は、布の表面の凹凸やインクのかすれ具合が展示で見るより間近です。
ソフトカバー/ W260mm × H420mm/ モノクロ・カラー/ 168ページ
価格:5,500円(税込)
柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡
『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』
女子美術大学 編著(青幻舎)100歳をむかえ現役で活動する染色家・柚木沙弥郎。
本書は女子美での展覧会図録でもあり、これまでの型染、装丁、エースホテル京都でのアートワークなど約150作品を網羅する集大成ともいえる一冊。
1階にて。 pic.twitter.com/6yn3Q3MjfP— ブックスルーエ (@BOOKSRUHE) November 13, 2022
○2022年に、女子美アートミュージアムで開催された「柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡 展」をもとに刊行されました。
○カバーが掛けられています。ビジュアルに《型染布’07a》(p.136)が右に90°回転させて使われています。模様の図の部分は、メタリッ感を持たせるUV印刷が施されています。用紙は茶色のクラフト紙です。
タイトルの「柚木沙弥郎」の部分は柚木の手によります。「創造の軌跡」を始めとする、他の文字が模様の地の部分にリズミカルにレイアウトされています。
○表紙は、朱色の用紙が使われています。表表紙には《掌》(p.17上部左)が、裏表紙には《ならぶ人》から男性の横顔(p.9上部左)が、黒一色にして置かれています。カバーを外さなければ、見ることのできない秘密のデザインです。
ソフトカバー/ W148mm × H210mm/ モノクロ・カラー/ 224ページ
価格:2,750円(税込)