三浦太郎展_絵本とタブローは、『くっついた』や『ちいさなおうさま』などで知られる絵本作家の絵本原画、ステンシルを使って描くタブロー、初公開の風景スケッチなどを、板橋区立美術館で展示します。
三浦太郎展の感想と解説!
『Workman Stensil(ワークマンステンシル)』(14-1)2014年
○紙面にはワークマンが運ぶ、ギター、鳥籠、カーペット、冷蔵庫などの荷物だけがオレンジ色で描かれています。ワークマンは、付属している専用のステンシルで読者自らが描きます。欧文タイトルには、ステンシル用の書体が用いられています(驚)。
《ワークマン名画 マティス 大きな横たわる裸婦》(55-3)(左)
【三浦太郎展 こんな作品も】
本展では、こんなモノクロのタブロー(絵画作品)も紹介しています。ステンシルを使って描いた「ワークマンステンシル」シリーズです。
ここに登場する作業着姿の人物たち、なんだか不思議なポーズです。これ実は、ワークマンたちが古今東西の名画を演じているのです。 pic.twitter.com/4y5eOmA87g— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) December 6, 2022
○ステンシルで描くワークマンを大きくして作品にしました。名画のシリーズ(上図)と「WORKMAN」と書いた人文字のシリーズがあります。作業着の《ワークマン名画 俵屋宗達 神雷神図屏風》(55-4)(上図右上)に驚きました。
マティス《大きな横たわる裸婦》※三浦太郎展に展示はありません。
『ちいさなおうさま』(38)(左)
○おうさまの顔は正円ではなく半円です。三角形を連ねた冠をぴたりと載せています。髪は同心の楕円を、1/4にカットした左下の部分です。片側だけに覗いており、シンメトリーな顔のアクセントになっています。
身体は矩形です。大きく「K」と記されています。手は正円で、右に剣を握っています。足は矩形です。左足は英字新聞のコラージュかと思いました。しかしよく見ると「Big Wedding for Tiny King」とあり、短い物語が記されています(驚)。「tiny」は「small」よりもさらに小さい、です。
彩色はおうさまが、黄色、肌色、朱色、緑色、薄黄土色。剣は白、グレー、紫色です。新聞を模した左足以外は、ビビッドな色が引かれています。おうさまは、多くが単純な図形と色の組み合わせで描かれています。
しかしこれもよく見るとです。図形に、わずかな歪みがあります。私は会場で、メイキングの動画を見るまで気づきませんでした。
パソコンで描いた下絵をプリントして、カッターで切り抜いてできた歪みです。人の手を通すことで、パソコンの冷めた線にわずかな熱量を加えています。
『ジャングルジムをつくろう!』(46)2005年
○会場に積まれたブロック(上図)は、絵本に描かれた升目のジャングルジムを立体にしました。
この絵本は正方形に近い判型です。上部が綴じてあり、左右ではなく上下に開きます(驚)。開くと縦に長い見開きになります。横に9、縦に16にグレーの升目が引かれています。
いちばん下段の升目から上に向かい、シアンとマゼンタでいくつかが囲まれています。囲まれた升目はジャングルジムです。宙に浮いたひとつの升目は、子どもが運んでいます。
「しかくを はこんで つみあげて なにを つくろうか?」。本編の文字もジャングルジムに倣い、ひとつの升目に4文字が並ぶように組まれています。デザインも絶妙です。
ジャングルジムはソフトクリームの形をしていたり、子どもと図形がないまぜになり不思議な世界を展開します。
「こどもアイデンティティー」シリーズ
○子どもの顔を「どんな いろが すき?」「おおきくなったら なにに なりたい?」など10項目の質問をもとに、91cm 角の画面に顔のパーツをステンシルとローラーを用いて、象徴的に描きました。似顔絵ではありません。
8歳の《ここちゃん》(56-1)(下段、右からふたつめ)の好きな色はピンク、水色、うすむらさきです。メガネをピンク、半身を水色、背景色をうすむらさきにしました。宇宙ひこうしになりたいそうです。
目と頬の正円はほぼ同じです。明らかにちがうのは髪型と眉毛と半身です。頬と同じ色の鼻と、白い口と顔の輪郭は微妙にちがいます。髪の色と肌の色もちがいます。グローバルな子どもたちの集結です。
三浦太郎展の図録をデサインマニアが分析!
【三浦太郎展ショップ探訪🛍】展覧会図録は、ちいさなおうさまが表紙で、まるで三浦太郎さんの絵本のような真四角のかたちが印象的です。作り手としての三浦さんを知ることができます。
本展のために制作された「ちいさなおうさまのピクニック」の大判ポストカード付きで、2,500円(税込)です。 pic.twitter.com/OenMCBkowB— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) November 27, 2022
○表紙は、タイトルロゴ「TARO MIURA 展」がユニークです。「T」はお城の塔、「A」は三角屋根に旗、「R」のステムとテールは足に、「U」には陰影があります。「展」にも足がありボールを蹴っているようです。
『くっいた』(19-1)2005年
ビジュアルは『ちいさなおうさま』(38-1)です。よく見ると、おうさまが手にした剣は三浦の絵本『くっいた』(19-1)(上図)、『Ton(トン)』(11-1)(下図)、『ぞうちゃんとねずみちゃん』(43-1)、『おはなをどうぞ』(34)、『みち』(58-1)からできています。
背表紙は「A」の三角屋根の緑色。裏表紙は表表紙と同じ黒の背景色に、『Je suis…(ぼくは…)』、(07-1)『ジャングルジムをつくろう!』(46)、『Tokio(東京)』(18)、『あさだおはよう』(49)が、右下に小さく田の字に組まれています。
『Ton(トン)』(11-1)2004年
【三浦太郎展 イタリアで出版した絵本】三浦さんの絵本作家としての歩みはボローニャ展から始まりました。2001年から合計6回入選し、入選作は全てヨーロッパで出版されています。
写真はイタリアのCorraini出版から刊行された絵本。三浦さんの赤ちゃん絵本とはだいぶ印象が異なり、かっこいですね。 pic.twitter.com/J9zj1lef3Y— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) December 9, 2022
○巻頭には、ローラーで着彩する三浦の両手がモノクロであります。描いているのは「こどもアイデンティティー」シリーズの《ここちゃん》(56-1)です。
○「ごあいさつ」、「絵本作家という仕事」、「楽しかったね、タロウ!」は、見開きで掲載されています。左ページに、絵本の部分拡大のビジュアルが置かれています。
それぞれ、ピンク色の升目の中に子どもたちが遊ぶ『ジャングルジムをつくろう』(46)。図形の組み合わせではなく、スケッチをもとに描かれた『みち』(58)。飲食物のコラージュで食卓を表した『ちいさなおうさま』(38)です。
【三浦太郎展 おうさまのピクニック】本展は三浦さんのタブロー(絵画作品)も堪能できます。
『ちいさなおうさま』(偕成社)の一家がピクニックをしている楽しい絵は、本展のために制作されました。アクリル絵具で描かれていますが、写真のコラージュもあり、じっくりと見てほしい作品です。 pic.twitter.com/dTgfktlKux— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) December 6, 2022
○「もくじ」には三浦が自宅のアトリエで《ちいさなおうさまのピクニック》(上図)を制作する様子です。キャラクターや樹木は白いままなので、面積の広い背景から彩色していることがわかります。三浦の背後には黒猫もいます。
『くっついた』『ちいさなおうさま』の原画ずらり 三浦太郎が個展 #朝日新聞デジタル https://t.co/LxZYS4PYGm
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) December 13, 2022
○数点の絵本には、制作の過程が示されています。『Ton(トン)』(11)は、ジャバラの試作本(上図)。『くっいた』原画(19-2〜7)は、パソコンで起こした下絵を万年筆で移した原画(下図)。『くっいた』試作本(19-9)は、見開きの用紙に1点から数点の黒い円だけが、位置を変えながら並んでいます。
【『くっついた』ができるまで】三浦太郎さんが初めて出版したのが『くっついた』(2005年)で、120万部以上刊行されています。本展では原画や詩作本により、制作の様子がわかります。最終場面の背景は、シンプルな白地ですが、習作段階ではピンク色で強調する線も書き加えていたことがわかります。 pic.twitter.com/iGbgesP23z
— 板橋区立美術館 (@itabashi_art_m) November 23, 2022
『僕はブルドーザー!』色版別の原画(30-2〜7)は、黒、グレー、オレンジの色版ごとに描き分けた原画です。『のりもの のーせて のせて』(54)は制作手順が1ページを割いて記されています。会場ではメイキングの動画がありました。
「ワークマンステンシルシリーズ」、「こどもアイデンティティー」シリーズは、三浦による制作の様子が載せられています。
ソフトカバー/ W210mm × H210mm/ モノクロ・カラー/ 144ページ
2,500円(税込)
三浦太郎展の会場はここ!
板橋区立立美術館
〒175-0092 東京都板橋区赤塚5-34-27
Tel. 03-3979-3251
Fax. 03-3979-3252

会期
2022年11月19日(土)~2023年1月9日(月・祝)
開館時間
9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日
月曜日(1月9日は祝日のため開館) 、12月29日(木)~1月3日(火)
観覧料
一般650円/ 高校・大学生450円/ 小・中学生200円
※土曜日は小中高生は無料で鑑賞できる。
※65歳以上・障がい者割引あり(要証明)。
アクセス
○都営三田線「西高島平駅」下車 徒歩約14分
○東武東上線「下赤塚駅」、東京メトロ「地下鉄赤塚駅」下車徒歩約24分
