三浦太郎展の感想と解説!『くっついた』や『ちいさなおうさま』などで知られる絵本作家の原画、タブロー、風景スケッチなどを展示!

 

三浦太郎展_絵本とタブローは、『くっついた』や『ちいさなおうさま』などで知られる絵本作家の絵本原画、ステンシルを使って描くタブロー、初公開の風景スケッチなどを、板橋区立美術館で展示します。

三浦太郎展の感想と解説!

『Workman Stensil(ワークマンステンシル)』(14-1)2014年

○紙面にはワークマンが運ぶ、ギター、鳥籠、カーペット、冷蔵庫などの荷物だけがオレンジ色で描かれています。ワークマンは、付属している専用のステンシルで読者自らが描きます。欧文タイトルには、ステンシル用の書体が用いられています(驚)。

《ワークマン名画 マティス 大きな横たわる裸婦》(55-3)(左)

○ステンシルで描くワークマンを大きくして作品にしました。名画のシリーズ(上図)と「WORKMAN」と書いた人文字のシリーズがあります。作業着の《ワークマン名画 俵屋宗達 神雷神図屏風》(55-4)(上図右上)に驚きました。


マティス《大きな横たわる裸婦》※三浦太郎展に展示はありません。

『ちいさなおうさま』(38)(左)

○おうさまの顔は正円ではなく半円です。三角形を連ねた冠をぴたりと載せています。髪は同心の楕円を、1/4にカットした左下の部分です。片側だけに覗いており、シンメトリーな顔のアクセントになっています。

身体は矩形です。大きく「K」と記されています。手は正円で、右に剣を握っています。足は矩形です。左足は英字新聞のコラージュかと思いました。しかしよく見ると「Big Wedding for Tiny King」とあり、短い物語が記されています(驚)。「tiny」は「small」よりもさらに小さい、です。

彩色はおうさまが、黄色、肌色、朱色、緑色、薄黄土色。剣は白、グレー、紫色です。新聞を模した左足以外は、ビビッドな色が引かれています。おうさまは、多くが単純な図形と色の組み合わせで描かれています。

しかしこれもよく見るとです。図形に、わずかな歪みがあります。私は会場で、メイキングの動画を見るまで気づきませんでした。

パソコンで描いた下絵をプリントして、カッターで切り抜いてできた歪みです。人の手を通すことで、パソコンの冷めた線にわずかな熱量を加えています。

『ジャングルジムをつくろう!』(46)2005年

○会場に積まれたブロック(上図)は、絵本に描かれた升目のジャングルジムを立体にしました。

この絵本は正方形に近い判型です。上部が綴じてあり、左右ではなく上下に開きます(驚)。開くと縦に長い見開きになります。横に9、縦に16にグレーの升目が引かれています。

いちばん下段の升目から上に向かい、シアンとマゼンタでいくつかが囲まれています。囲まれた升目はジャングルジムです。宙に浮いたひとつの升目は、子どもが運んでいます。

「しかくを はこんで つみあげて なにを つくろうか?」。本編の文字もジャングルジムに倣い、ひとつの升目に4文字が並ぶように組まれています。デザインも絶妙です。

ジャングルジムはソフトクリームの形をしていたり、子どもと図形がないまぜになり不思議な世界を展開します。

「こどもアイデンティティー」シリーズ

○子どもの顔を「どんな いろが すき?」「おおきくなったら なにに なりたい?」など10項目の質問をもとに、91cm 角の画面に顔のパーツをステンシルとローラーを用いて、象徴的に描きました。似顔絵ではありません。

8歳の《ここちゃん》(56-1)(下段、右からふたつめ)の好きな色はピンク、水色、うすむらさきです。メガネをピンク、半身を水色、背景色をうすむらさきにしました。宇宙ひこうしになりたいそうです。

目と頬の正円はほぼ同じです。明らかにちがうのは髪型と眉毛と半身です。頬と同じ色の鼻と、白い口と顔の輪郭は微妙にちがいます。髪の色と肌の色もちがいます。グローバルな子どもたちの集結です。

三浦太郎展の図録をデサインマニアが分析!

○表紙は、タイトルロゴ「TARO MIURA 展」がユニークです。「T」はお城の塔、「A」は三角屋根に旗、「R」のステムとテールは足に、「U」には陰影があります。「展」にも足がありボールを蹴っているようです。

『くっいた』(19-1)2005年

ビジュアルは『ちいさなおうさま』(38-1)です。よく見ると、おうさまが手にした剣は三浦の絵本『くっいた』(19-1)(上図)、『Ton(トン)』(11-1)(下図)、『ぞうちゃんとねずみちゃん』(43-1)、『おはなをどうぞ』(34)、『みち』(58-1)からできています。

背表紙は「A」の三角屋根の緑色。裏表紙は表表紙と同じ黒の背景色に、『Je suis…(ぼくは…)』、(07-1)『ジャングルジムをつくろう!』(46)、『Tokio(東京)』(18)、『あさだおはよう』(49)が、右下に小さく田の字に組まれています。

『Ton(トン)』(11-1)2004年

○巻頭には、ローラーで着彩する三浦の両手がモノクロであります。描いているのは「こどもアイデンティティー」シリーズの《ここちゃん》(56-1)です。

○「ごあいさつ」、「絵本作家という仕事」、「楽しかったね、タロウ!」は、見開きで掲載されています。左ページに、絵本の部分拡大のビジュアルが置かれています。

それぞれ、ピンク色の升目の中に子どもたちが遊ぶ『ジャングルジムをつくろう』(46)。図形の組み合わせではなく、スケッチをもとに描かれた『みち』(58)。飲食物のコラージュで食卓を表した『ちいさなおうさま』(38)です。

○「もくじ」には三浦が自宅のアトリエで《ちいさなおうさまのピクニック》(上図)を制作する様子です。キャラクターや樹木は白いままなので、面積の広い背景から彩色していることがわかります。三浦の背後には黒猫もいます。

○数点の絵本には、制作の過程が示されています。『Ton(トン)』(11)は、ジャバラの試作本(上図)。『くっいた』原画(19-2〜7)は、パソコンで起こした下絵を万年筆で移した原画(下図)。『くっいた』試作本(19-9)は、見開きの用紙に1点から数点の黒い円だけが、位置を変えながら並んでいます。

『僕はブルドーザー!』色版別の原画(30-2〜7)は、黒、グレー、オレンジの色版ごとに描き分けた原画です。『のりもの のーせて のせて』(54)は制作手順が1ページを割いて記されています。会場ではメイキングの動画がありました。

「ワークマンステンシルシリーズ」、「こどもアイデンティティー」シリーズは、三浦による制作の様子が載せられています。

ソフトカバー/ W210mm × H210mm/ モノクロ・カラー/ 144ページ
2,500円(税込)

三浦太郎展の会場はここ!

板橋区立立美術館

〒175-0092 東京都板橋区赤塚5-34-27
Tel. 03-3979-3251
Fax. 03-3979-3252

板橋区立美術館
板橋区立美術館

会期
2022年11月19日(土)~2023年1月9日(月・祝)

開館時間
9:30~17:00(入場は16:30まで)

休館日
月曜日(1月9日は祝日のため開館) 、12月29日(木)~1月3日(火)

観覧料
一般650円/ 高校・大学生450円/ 小・中学生200円
※土曜日は小中高生は無料で鑑賞できる。
※65歳以上・障がい者割引あり(要証明)。

アクセス
○都営三田線「西高島平駅」下車 徒歩約14分
○東武東上線「下赤塚駅」、東京メトロ「地下鉄赤塚駅」下車徒歩約24分

板橋区立美術館にアクセス!都営三田線「西高島平駅」から!
都営三田線「西高島平駅」から板橋区立美術館まで、大きな画像をたくさん交えて案内します。途中、板橋区立郷土資料館も案内します。