不変/普遍の造形・住友コレクション・中国青銅器名品選を徹底解説!3000年ほど前の中国で作られた青銅器など約100点が集結!

「不変/普遍の造形・住友コレクション・中国青銅器名品選」です。《虎卣(こゆう)》《饕餮文方罍(とうてつもんほうらい)》など、3000年ほど前の中国で作られた儀式用の青銅器など約100点が泉屋博古館東京に集結します。

不変/普遍の造形展の感想と解説!

《大史友甗(たいしゆうげん)》西周前期(前11〜前10世紀)

○展示室で初めて見る漢字の多さに驚き、いまここでそれらが変換できることに2度驚いています(笑)。

甗(げん)。と、書くには難しいですが蒸し器です。ふたつの器が積まれた二階建てです。上部は鉢形。下部は三脚を持つ煮炊き用の器、鬲(れき)に似ています。つるつるなベル型と、つるごつな三つ巴との異なる佇まいの対比が美しいです。

連結部はスリットになっており、下部で水を沸かし上部で蒸し料理を作ります。二階建ては機能から導かれた形状といえます。

下部のわずかなスペースでは、饕餮文(とうてつもん)が伏せ目がちです。ここに描くかと思いました(笑)。頭上の出来事に「怒髪天を衝く」がありますが、蒸し料理は複雑なシチュエーションです。

《見卣(けんゆう)》西周前期(前11〜前10世紀)

○卣(ゆう)は酒を入れて運ぶ、または酒に香り付けする香草の煮汁を入れるための器とされています。丸く張り出した胴に、蓋と圏足(けんそく)と呼ばれる高台(こうだい)や、取っ手を持ちます。

見卣(けんゆう)は、蓋から胴を通り圏足にかけて、頂点で十字に交わる鰭状(ひれじょう)の飾りを持ちます。胴には、ユニークな角を持ち、コミカルな表情をした龍文が踊っています。

《虎卣(こゆう)》殷後期(前11世紀)

○虎卣(こゆう)も見卣と同様に卣です。見卣は機能美を留めていますが、今度は生き物たちが器と交差しました。

器の機能を背負った猫背の虎。虎に抱かれ、つぶらな瞳で遠くを見る人。虎の頭上には蓋のつまみの鹿。右肩から顔を覗かせるのは、取っ手の留め具の獏です。

取っ手は、一本足の龍の姿で表された龍神の夔龍(きりゅう)。人の左手の左側とその下にも夔龍。左手の右には蛇。虎の右足から尾にかけて、別の虎。目を凝らせば、まだまだいそうです。

何体もの生き物が、器の佇まいのどこを残し、どこを変えるのかが見どころです。多くの形状と装飾が混在する寸胴な虎は、二本の前足と尾の三脚で器らしく直立しています。

《鳥蓋瓠壺(ちょうがいここ)》殷後期(前13〜前12世紀)

《虎鎛(こはく)》西周前期(前11世紀)

《鴟鴞尊(しきょうそん)》殷後期(前13〜前12世紀)

不変/普遍の造形展の図録をデサインマニアが分析!

○図録はありませんでしたが、中国青銅器をコンパクトにまとめたビジュアルブックがありました。『太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門』(上図)です。

○表表紙は饕餮文方彝(とうてつもんほうい)の部分(上図左)です。

饕餮(とうてつ)は中国神話に登場する妖怪です。胴体は牛か羊、曲がった角、虎の牙、人の爪、人の顔などを持ちます。饕餮文はそれらを文様として表しました(上図)。彝(い)は方形の器身に屋根形の蓋を乗せた器です。

《饕餮文方罍(とうてつもんほうらい)》殷後期(前12〜前11世紀)

裏表紙は饕餮文方罍(とうてつもんほうらい)(上図)です。罍(らい)は酒甕(さかがめ)の一種です。頸(くび)が短く肩が張り出し、胴体は下方にすぼまります。

《饕餮文平底爵(とうてつもんへいていしゃく)》殷前期(前14世紀)

○目次は見開きです。饕餮文平底爵(とうてつもんへいていしゃく)(上図)が切り抜きで、日癸罍(にっきらい)(下図)と匽候旨鼎(えんこうしてい)の部分が角版であります。爵(しゃく)は、左右非対称の口を持つ三脚の酒温器です。鼎(てい)は肉入りスープを煮るための器です。

《日癸罍(にっきらい)》殷後期(前13〜前12世紀)

○巻頭は「ここをみて!名品ハイライト」です。単色に近い青銅器が、鮮やかな背景色をともない、部分拡大や全体像でその魅力を伝えます。

トップは虎卣(こゆう)です。全体像ではなく左上方から頭部を捉えています。ちょうど虎に抱かれた人と目が合います(笑)。背景色は黄土色で掲載されています。

《戈卣(かゆう)》殷後期(前12世紀)

対向ページは戈卣(かゆう)(上図)です。余白を広く取り中央に置かれています。背景色は黄色です。黄土色との対比も美しいです。

《犠首方尊(ぎしゅほうそん)》殷後期(前12世紀)

犠首方尊(ぎしゅほうそん)(上図)は、饕餮文(とうてつもん)を中心にした部分拡大が紙面いっぱいに掲載されています。尊(そん)は酒甕(さかがめ)の一種です。背が高く太めの胴部を持ち、口がラッパ状に開いています。背景色は薄緑です。

《虁神鼓(きじんこ)》殷後期(前12〜前11世紀)

虁神鼓(きじんこ)(上図)も見開きです。太鼓を模して作られた器です。正面に描かれた人物が部分拡大であります。全体像も小さく添えられています。虁(き)は、古代中国の地理書『山海経』に一本足の角がない蒼い色をした牛とあります。

○「1 形も用途もいろいろ器種カタログ」は、それぞれの器種を食器・酒器・水器・楽器と用途で分け、イラストを交え解説してあります。私はこの項で、中国青銅器に興味を持つことができました。

《蛙蛇文盤(あだもんばん)》春秋前期(前8世紀)

「2 表面を埋め尽くす文様ラビリンス」は、饕餮文(とうてつもん)・龍文(りゅうもん)・螭文(ちもん)・蛇文(じゃもん)(上図)などについて述べられています。

ソフトカバー/ W166mm × H216mm/ モノクロ・カラー/ 128ページ
価格:2,200円(税込)

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不変/普遍の造形展の会場はここ!

泉屋博古館東京
〒 106-0032 東京都港区六本木1丁目5番地1号
Tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル)

泉屋博古館東京 <六本木> | SEN-OKU HAKUKOKAN MUSEUM TOKYO
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会期
2023年1月14日(土)~2月26日(日)

開館時間
11:00 〜 18:00(最終入館 17:30)
※金曜日は19:00まで開館

休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替期間

アクセス
○南北線「六本木一丁目駅」下車、北改札正面 泉ガーデン1F出口より屋外エスカレーターで徒歩3分
○日比谷線「神谷町駅」下車、4b出口より徒歩10分
○銀座線・南北線「溜池山王駅」下車、13番出口より徒歩10分