ルーヴル美術館展愛を描くの感想と解説!アモルの標的・かんぬき・アモルとプシュケなど、愛の表現73点が並ぶ!

「ルーヴル美術館展愛を描く」は、フランソワ・ブーシェ、ジャン=オノレ・フラゴナール、フランソワ・ジェラールらが描いた愛の表現73点が並びます。国立新美術館・京都市京セラ美術館を巡回します。

ルーヴル美術館展愛を描くの感想と解説!

フランソワ・ブーシェ(1)《アモルの標的》1758年

○画面の下方右端に、壺を倒し水を流すアモルを模(かたど)った石像が覗きます。倒れた壺は、処女の喪失と《かんぬき》解説にありました(笑)。ここはアモルたちの庭のようです。

焚き火の周りは、濃緑色の樹木に囲まれています。もくもくと上る煙の右中程は濃青色です。画面の3/4ほどを占める中景までを、これらの地面や樹木や煙がふさぎます。

アントワーヌ・ヴァトー(4)《ニンフとサテュロス》1715-1716年頃 

残る1/4は、薄青の空が広がる遠景です。飛翔するアモルと重なり開放感をあたえます。

アモルたちは、金色の頭髪に肌色の濃淡で、ふっくらと描かれています。アモルをオレンジ色、背景を青と近似すると補色の関係になります。そこに明度差も加わり、アモルが鮮明に浮き上がって見えます。

サッソフェラート(35)《眠る幼子イエス》1640-1685年頃

力強く立ち上るS字を、しばらく雲だと思っていました。2羽の鳩は雲ではなく、弓矢を燃やす焚き火の煙に巻かれています。

そうすると、下方左の切り株に腰を下ろすアモルは、煙を背に焚き火より手前にいることになります。右隣のアモルはその手前になるため、焚き火より離れてしまい弓矢をくべることはできません。

ハブリエル・メツー(47)《ヴァージナルを弾く女性と歌い手による楽曲の練習》1659-1662年頃

煙とふたりのアモルの位置関係は、どうなっているのでしょう。やはり雲が地上まで降りてきたのでしょうか。私は画家が左のアモルの前に、煙を描かなかったのではないかと思います。コホンコホンとなりますので。

当稿が新説であることは、言うまでもありません(笑)。

ジャン=オノレ・フラゴナール(59)《かんぬき》1777-1778年頃

○広い寝室は明暗が著しくドラマチックです。天蓋(てんがい)ベッドがずんと、画面の左半分ほどを埋めます。一方ふたりのもつれる右半分は、白い壁を背景に空間が広がります。

辺りを見回すと倒れた椅子や落ちた花など、ところどころに乱闘の跡が伺えます。調度品や衣服がかもしだす、優雅さばかりではありません。

フランソワ・ブーシェ(62)《褐色の髪のオダリスク》1745年

男はこちらに背を向け左腕を女の腰に、右手を斜め上に差し出しています。女は金色のドレスで、左足に重心を置き右足を跳ね上げています。

男の右腕と女の右足は45°の直線を引き、ダンスポーズのように造形的な身身のこなしを描いています。

ギヨーム・ボディニエ(66)《イタリアの婚姻契約》1831年

また、男の右腕から女のスカート、ベッドのコーナーを通り、その先のりんごの置かれたテーブルへと、画面右上から左下に連なるゆるい円弧が描かれます。この円弧にスポットライトが重ねられ、ドアの上部、男の背中、女の額を浮かび上がらせています。

フランソワ・ジェラール(67)《アモルとプシュケ》1798年

男は今まさに、手の先にあるかんぬきを閉めようとしています。ボリュームのある臙脂色(えんじいろ)のベッドカーテンは、第2幕を待つ緞帳のようにも思えます。

ルーヴル美術館展愛を描くの図録をデサインマニアが分析!

○表表紙を飾るのは(67)《アモルとプシュケ》です。タイトルは、欧文表記のみが画面下部に置かれています。

「LOUVRE」の「U」と「R」は、ハートの形のドットで埋められており薄く見えます。「LOUVRE」から、「U」と「R」を引くと「LOVE」になることを意味するルーヴル展のロゴタイプです。タイトルの部分は、透明な盛り上がりを見せる特殊印刷が用いられています。

裏表紙は(59)《かんぬき》です。告知でペアで用いられている、(1)《アモルの標的》ではありませんでした。欧文のタイトルは、今度は上部に置かれています。

背表紙は丸背です。図録では滅多に見ません。白地に欧文と和文のタイトルが、ここでもピンク色の特殊印刷でなされています。

○開くと厚口のトレーシングペーパーに、ロゴタイプの「LOUVRE」が置かれています。次項の開催概要は背景にピンク一色で《アモルとプシュケ》の部分拡大が引かれており、トレペ越しにふたりの顔がうっすらと覗きます。

目次は背景に、(54)《水浴の楽しみ》の部分拡大が薄く引かれています。

ドメニキーノ(16)《リナルドとアルミーダ》1617-1621年頃

○作品の扉は、黒地の背景で左上に(16)《リナルドとアルミーダ》(上図)のアモルが、右下の「Catalodue」と記されたハートを狙って矢を引いています。

○各章の扉は、2連の見開きで構成されています。初めは章のタイトルと章内の目次です。次に章の解説が来ます。

まずプロローグです。のどより左の位置で、左右2面に分割されています。左側はピンク色の背景色、その四隅にアールヌーボーの飾り罫が配され、文字が組まれています。ハート型に抜かれた、(1)《アモルの標的》のアモルが行間に添えられています。

右側は同作品の上部が広がっています。ハートの的と群がる4人のアモルです。

次の見開きです。背景に同作品の下部がピンク一色で引かれています。ふたりのアモルが、弓矢と矢筒を焼く様子です。どの章も、段間に人物が来るようにレイアウトされていますが、単色のためやや不明瞭です。

1章からは左側の背景色が黒になります。1章の右側の図版は(11)《オレイテュイアを掠奪するボレアス》です。北風ボレアスがオレイテュイアを誘拐する様子が、大きくトリミングされています。

アリ・シェフェール(74)《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》1855年

次の見開きには、同作品の下部が使われています。これに驚く地上の人たちの様子です。

2章は(35)《眠る幼子イエス》・(36)《眠る幼子イエス》、3章は(59)《かんぬき》・(55)《ぶらんこ》、4章は(74)《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》(上図)・(72)《ヘロとレアンドロス》(下図)が用いられています。

テオドール・シャセリオー(72)《ヘロとレアンドロス》19世紀第2四半期

○作品の多くは1点を見開きで紹介しています。左ページに作家・タイトル・クレジット・解説、右ページに図版です。うち13点に部分拡大が添えられています。

(51)《部屋履き》(下図)は、左ページに部屋履き、右ページに部屋の中の上半とスポットを分けています。

サミュエル・ファン・ホーホストラーテン(51)《部屋履き》1655-1662年頃 

(16)《リナルドとアルミーダ》・(19)《ナクソス島のバッカスとアリアドネ》・(23)《アモルと花綱飾り》・(49)《内緒話の盗み聞き》・(67)《アモルとプシュケ》は、見開き全面に掲載されており迫力があります。これらは見どころです。

ハードカバー/ W213mm × H280mm/ モノクロ・カラー/ 288ページ/ 日・英
価格:2,800円(税込)

ルーヴル美術館展愛を描くの会場・巡回先はここ!

東京展

国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
Tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
Fax.03-3405-2531

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

会期
2023年3月1日(水)〜6月12日(月)

休館日
毎週火曜日
※ただし3/21(火・祝)・5/2(火)は開館、3/22(水)は休館

開館時間
10:00-18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで

アクセス

電車
○東京メトロ千代田線「乃木坂駅」青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
○東京メトロ日比谷線「六本木駅」4a出口から徒歩約5分
○都営地下鉄大江戸線「六本木駅」7出口から徒歩約4分
バス
○都営バス
「六本木駅前」下車、徒歩約7分
「青山斎場」下車、徒歩約5分
○港区コミュニティバス「ちぃばす」赤坂循環ルート「六本木七丁目」下車、徒歩約4分

国立新美術館の行き方!JR「東京駅」丸の内地下中央口から!
JR「東京駅」丸の内地下中央口から国立新美術館まで、多くの画像を交え案内します。
国立新美術館にアクセス!大江戸線「六本木駅」から!
大江戸線「六本木駅」から国立新美術館まで、大きな画像をたくさん交え地上と地下から案内します。
国立新美術館の行き方!日比谷線「六本木駅」から!
日比谷線「六本木駅」から国立新美術館まで、大きな画像をたくさん交え地上と地下から案内します。

京都展

京都市京セラ美術館
〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
Tel.075-771-4334
Fax.  075-761-0444

https://kyotocity-kyocera.museum

会期
2023年6月27日(火)-9月24日(日)

休館日
月曜日 祝日の場合は開館/年末年始(12月28日〜1月2日)

開館時間
10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで

アクセス
電車
地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約8分
京阪電鉄「三条駅」・地下鉄東西線「三条京阪駅」より徒歩約16分
※滋賀方面からは、京阪・JR・地下鉄東西線「山科駅」から地下鉄東西線「東山駅」下車が便利

京都市京セラ美術館にアクセス!地下鉄「東山駅」から!
新幹線・JR「京都駅」から地下鉄東西線「東山駅」に向かいます。「東山駅」から京都市京セラ美術館までを、多くの画像を交え案内します。

市バス
JR・近鉄・地下鉄「京都駅」から
○A1のりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
○D1のりば
100、110系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
阪急「京都河原町駅」から
○Aのりば
岡崎ループ号「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ
○Eのりば
46系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
○Hのりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
京阪「三条駅」から
○Dのりば
5系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
岡崎ループ号
「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ

車・バイク・自転車
近隣の高速道路IC

名神高速道路 京都南I.Cから市内へ約10km
名神高速道路 京都東I.Cから市内へ約7km

自転車・バイク
本館または別館の駐輪場・バイク置き場を利用(無料)
※専用駐車場には限りがあるため、岡崎公園駐車場、みやこめっせ駐車場を利用(いずれも有料)

【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ
国立新美術館にて2023年3月1日〜6月12日開催。ルーヴルには愛がある。ルーヴルが誇る珠玉の“愛”の絵画が一堂に!