大阪の日本画展の感想と解説!北野常富・島成園・菅楯彦・矢野橋村ら、60名を超える画家による170点の作品を展示!

「大阪の日本画」は、北野常富(きたのつねとみ)・島成園(しませいえん)・菅楯彦(すがたてひこ)・矢野橋村(やのきょうそん)ら明治から昭和初期に近代大阪で活躍した、60名を超える画家による170点の作品を展示します。

大阪の日本画展の感想と解説!

15 北野恒富《宝恵籠》1931(S6)年頃

○L字に画面を走る、紅白のストライプが目を惹きます。よく見ると、後方にもわずかに紅白が覗いています。必要なパーツです。暖簾(のれん)をくぐる様子ではありません。

宝江籠(ほうえかご)は、十日戎(とおかえびす)を祝う駕籠の行列です。用いられる駕籠は、座板の前後に山型に支柱を立て、屋根をかけただけの簡易な形状をしています。

16 北野恒富《いとさんこいさん》1936(S11)年

紅白のストライプは、駕籠の支柱と屋根にあたります。作品は、駕籠全体が分からないようにトリミングされています。行列のある関西では、一目瞭然なのかもしれません。

屋根の先に水色の絞り柄があります。黒い髪に白塗りの顔、淡いピンクに梅柄の着物、赤と黒の絞り柄の帯など、水色の他は赤と黒と白だけで構成されています(驚)。

20 小林柯白(かはく)の《道頓堀の夜》1921(T10)年

少ない彩色による構成は、少女の慎ましやかな表情を手伝っています。行列の賑わいとは別に、緊張感のある静寂な時間が流れているようです。

28 中村貞以《失題》(T10)1921年

40 菅楯彦《浪華三大橋緞帳》1957(S32)年頃

48 菅楯彦《春秋難波人 堀江阿弥陀池》1954(S29)年

○色とりどりの往来で賑わう路地です。登場人物は20人、誰一人として同じ装いはありません(驚)。

3人の子どもたちが、人形芝居に群がります。後ろ姿で際立つ唐子髷(からこまげ)も、剃り残した毛の位置がそれぞれちがいます。描きたくて描きたい感がにじんでいます。

55 生田花朝《天神祭》1935(S10)年頃

左端の子どもの服装を見ると、青い地の背・薄緑に緑色の縦縞の着物・黄色の帯・青い鼻緒(はなお)です。続くふたりの着物もピンク色の地に花柄、黄色に茶色の横縞と、子どもながらに華やかです。

その右は母と娘でしょうか。ふたりの顔の肌の色は、わずかにちがいます。母は白く、娘は赤みがかっています。その後を僧侶が続きます。年配の僧侶の肌は茶色がかっています。

65 矢野橋村《那智参拝》1943(S18)年

遠方には2階の座敷、その向こうに祭りの幟(のぼり)が覗きます。2階の座敷はうっすらとしています。距離感として説明がつきそうです。

しかし、正面の茶店の屋根までが、消えかかっています。人垣の細部を損なわないために、はっきりした稜線の重みを隠したのでしょう。消え入りそうな情景の象徴として、画面に留め置いたのかもしれません。

73 森琴石《獨樂園図》1884(M17)年

140 山口草平《人形の楽屋》大正後期〜昭和初期

155 島成園《祭りのよそおい》1913(T2)年

163 星加雪乃《初夏》1940(S15)年

大阪の日本画展の図録をデサインマニアが分析!

○表紙には異なる二隻(せき)の屏風が用いられています。デザインは画面上部1/5を白地で残し、下部に屏風をレイアウトしています。白地により屏風の掲載部分が横に長くなり、折り返しを含めると五扇(せん)弱を納めることができます(驚)。

和文タイトル「大阪の日本画」は2行に改行され、画面右上に白地から屏風に渡りコンパクトに置かれています。これらは箔押しがなされています。

表表紙は、北野恒富が描く六曲一双屏風 9《紅葉狩》の右隻が用いられています。両手に器を運ぶ禿(かむろ)を、金色の紅葉が埋め尽くします。

61 矢野橋村《羅浮逢仙》1921(T10)年

裏表紙は、矢野橋村の六曲一双屏風 61《羅浮逢仙(らふおうせん)》(上図)の左隻です。モノトーンの山並みに半月を臨みます。表裏を絢爛と静寂で飾る、二隻の対比が絶妙です。

○扉には船場派の西山寛瑛(にしやまかんえい)の、105《浪華旧名勝図・三大橋》が紺色のモノトーンであります。紺色ページがしばらく続きます。30ある小作品のうちの1点です。原寸より拡大されており、絹地(きぬじ)の表面の凹凸が認められます(驚)。

開くと見開きで会場案内です。菅楯彦の 47《南郭春宵(なんかくしゅんしょう)》が部分拡大であります。春の宵が淡いトーンで広がります。

見開きで目次です。下部2/5ほどに帯状に、菅楯彦の39《職業婦人絵巻》の4巻目があります。生き生きとした女性の表情があふれています。

「大阪で生まれた日本画家」には、伊藤渓水の138《四季花鳥画帳・桜にオオルリ(雄)》の一部が切り抜きで添えられています。

○続いて「ガイドマップ・系譜図」があります。この項は、クリーム色の用紙に青緑と朱の2色刷りでレトロに構成されています。

扉に、8 北野恒富《護花鈴(ごかれい)》の桜の部分が用いられています。朱を薄めた、淡いピンクがページをおおいます。大所帯な流派ごとの繋がりが、つぶさに記されています。

中川和堂の 108《鐘美帖(しょうびちょう)・夏相撲の力士》が添えられています(笑)。

9北野常富《紅葉狩》1918(T7)年

○図版の扉は横に2面に分割して上部に解説、下部に作品の部分拡大が置かれています。第一章は、表表紙に用いられた 9《紅葉狩》の左隻(上図)です。

第二章以下、51 生田花朝《だいがく》・66 矢野橋村《不動窟》・79 河邊青蘭《武陵桃源図》・123 武部白鳳《泊船図》・152 中村貞以《猫》(下図)です。これらは挿絵の役割を果たしています。作品図版より大きく扱われており見どころです。

152 中村貞以《猫》1948(S23)年

○図版で部分拡大が添えられているものは、29 中村貞以《お杉お玉》・29 菅楯彦《菅絃船図(かんげんぶねず)》・37 菅楯彦《竜頭鷁首図屏風(りゅうとうげきしゅずびょうぶ)》。

57 生田花朝《泉州脇の浜》は、観音開き3ページに部分拡大1ページがあります(驚)。

68 矢野鉄山《秋意幽遠》・88 村田香谷《花卉・文房花果図鑑》・155 島成園《祭りのよそおい》は見開きであります。

153 松浦春浦《魚遊》

○巻末のモノクロページです。170 池田遙邨《雪の大阪》・133 野田九浦《川狩二代》・153 松浦春浦《魚遊》は見開きです。158 木谷千草《浄瑠璃船》(下図)が部分拡大で使われています。これらは、彩色がないので構図の際立つものが選ばれています。

158 木谷千草《浄瑠璃船》1926(T15)年

ソフトカバー/ W223mm × H280mm/ 1色・2色・カラー/ 308ページ/ 日・英
価格:2,800円(税込)

大阪の日本画展の会場・巡回先はここ

大阪会場

⼤阪中之島美術館
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
Tel. 06-6479-0550(代表)(9:15~18:00)

大阪中之島美術館
大阪中之島美術館公式ウェブサイトです。 19世紀後半から今日に至る日本と海外の代表的な美術・デザイン作品を中心に、約6000点超のコレクションを所蔵。様々な展覧会を開催しています。

会期
2023年1⽉21⽇(土)~4⽉2⽇(日)

開館時間
10:00~18:00(入場は17:30まで)

休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日)

アクセス
電車
○京阪
・中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩約5分
・「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○Osaka Metro
・四つ橋線「肥後橋駅」4番出口より西へ徒歩約10分
・御堂筋線「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○JR
・大阪環状線「福島駅」/東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩約10分
・「大阪駅」より南西へ徒歩約20分
○阪神
・「福島駅」より南へ徒歩約10分
・「梅田駅」より南西へ徒歩約15分
○阪急
・梅田駅より南西へ徒歩約20分
バス
○大阪シティバス
JR「大阪駅」前より53号・75号系統で「田蓑橋」下車、南西へ徒歩約2分
※帰路のJR「大阪駅」方面最寄バス停は「渡辺橋」から

東京会場

東京ステーションギャラリー

〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1
Tel. 03-3212-2485

東京ステーションギャラリー
東京ステーションギャラリーの公式サイトです。東京ステーションギャラリーは1988年から東京駅丸の内駅舎内で活動を続ける美術館です。開館以来、駅舎の構造を露わにしたレンガ壁の展示室と、ユニークな展覧会で親しまれています。

会期
2023年4月15日(土)~6月11日(日)

開館時間
10:00〜18:00 金曜日 10:00 〜20:00
入館は閉館30分前まで

休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日/ただし会期最終週、ゴールデンウィーク・お盆期間中の月曜日は開館)、年末年始、展示替期間

アクセス
JR「東京駅」丸の内北口 改札前
○東京メトロ丸の内線「東京」駅(約3分)
中央改札を丸の内北口方面側に出て、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR東京駅丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある
○東京メトロ東西線「大手町」駅(約5分)
東改札をB4、B5出口方面へ出て、階段(エスカレーター)を上がり直進
そのままJR「東京駅」方面の地下通路を直進、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に入口がある
○東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(約7分)
JR「東京駅」方面改札を出て、出口7の階段を上がる
行幸地下ギャラリーを通りぬけ左折、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある