エドワード・ゴーリーを巡る旅展に行ってきました!うろんな客・不幸な子供など、絵本画家の作品約250点が並ぶ!

「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展は、モノトーンの緻密なペン画で『うろんな客』『不幸な子供』など、シュールな世界を描いた絵本画家ゴーリーの作品約250点が並びます。

エドワード・ゴーリーを巡る旅展の感想と解説!

『不幸な子供』
1-20 1959年

ブラックドール 
2-13 1973年頃

『金箔のコウモリ 』

3-17 1965年頃

○ 3-25 は、バーレッスンです。スタジオのコーナーで、バレリーナがバーに左手足をかけています。壁面の2/3が、バレリーナを映す鏡です。

ゴーリーは、ハッチング(複数の平行線を書き込むこと)の方向により、実物と鏡像とを描き分けています。私は鏡像は明るいので、濃淡によるものと思いました。そうではありませんでした。

3-27 1965年

実物の、壁面のハッチングは45°右下です。巾木と床は長手方向(長さの長い方向)に並行です。バレリーナのレオタードも同様で、右足は下に向かいますが、左足は左上です。

しかし、鏡像では全てのハッチングが、垂直方向に引かれています(驚)。縦幅のないバーもです。どのようにして、この技法を思いついたのでしょう。

3-29 1965年

3-29(上図) は、舞台袖です。左手に舞台セットの裏面が覗きます。わずかな側面を白く塗り残すことで、表面に当たるスポットライトを描いています(驚)。

前後に重なる、4人のバレリーナの同じポーズが反復されリズミカルです。客席側のふたりは明るく、手前のふたりは暗く描かれています。舞台セットのように、バレリーナのシルエットの右側を白く残しています。右から2人目の、胸から下方へ向かうラインが顕著です。

3-32 1965年

3人のバレリーナの傾き具合や、掲げた左手の形がわずかにちがいます。爪先から伸びる3つの影は、スポットライトが3か所から照らしていることを描いています。これらの精緻な描写が、デフォルメの中にリアリティーを添えています。

3-36 1965年

画面左端に羽ばたく鳥の鋭利な半身、右に回転するプロペラの先端が覗きます。その間にジグザグに流れるように描かれた、大気の描写が絶妙です。ふたつのぶつかる直前がラストシーンです。

バレリーナが迎える不条理な結末を、一コマ漫画になりそうなコミカルな構図で描きました。

『ドラキュラ・トイシアター』 
3-67 1979年頃

『不幸な子供』 
4-2 表紙 1959年頃

『金箔のコウモリ』 
4-23 表紙 1965年頃

『ジャンブリーズ』

4-38 1967年

○ 4-41(下図)は、ジャンブリーズの10人によるピラミッドです。普段はふるいの船で重なり合っている10人の全貌が、ここに来て明らかにされました。

これまでゴリーが描いた細身のキャラとは異なり、ずんぐりむっくりの4頭身です。それぞれが、個性的なかぶり物と衣装で華やいでいます。無表情ですが、これといった翳りもなく不幸な出来事とは無縁のようです。

無重力感極まる組み立て体操に、思わず拍手を送りたくなリます。この無重力感はどこから来るのでしょう。上から2段目と4段目の右端の男は、片手でひょいと女を持ち上げています。と、いうこともあります。

4-41 1967年

つないだ手の上に上段が乗れば、ピラミッドがシンメトリーとなり、どっしりと安定します。しかし、2段目と4段目はそうはせずに、ひとり右にずらしました。3段目までずらすと、頂点ひとりが右にはみ出します。さすがにピラミッドのバランスが崩れ、リアリティーがなくなりそうです。

空は明るく、上空をわずかに雲が流れていきます。このままふわりと飛んで行きそうな、10人の行く末を見守っているかのようです。

エドワード・ゴーリーを巡る旅展の図録をデサインマニアが分析!

○表紙は紫色の背景色が広がります。タイトルは細い明朝体で白抜きで記されています。画面の上部、右半分の位置にレイアウトされています。

ビジュアルには『ジャンブリーズ』が用いられています。同書は19世紀イギリスの画家で、ナンセンス詩人のエドワード・リアの5行詩(リメリック)にゴーリーが絵をつけました。物語は「ジャンブリーズ」と呼ばれる10人がふるいの船に乗り20年に渡る旅をします。

表表紙は、4-46 航海する場面が用いられています。山並みと夜空に浮かぶ月を背景にしていますが、水平線から上のこの部分は切り取られているので、表紙からは分かりません。

本編ではペン画のため白地に黒1色です。しかし、表紙は紫色が背景に引かれることで、白抜きにされた10人とふるいの船が際立ちます。

裏表紙は、4-53 浜辺に留められたふるいの船です。ここでも水平線から上の背景はカットされています。白抜きはありません。

○扉のポートレートは、自らデザインした『ドラキュラ』の舞台上のゴーリーです。存命中に何事かと思いました(笑)。上図はそれに近いものです。

目次の対向ページには、ゴーリーの死後2002年から一般公開された自宅、エドワード・ゴーリーハウスの外観があります。

『ドラキュラ・トイシアター』 
3-68 1979年頃

凡例には、3-68『ドラキュラ・トイシアター』(上図)が用いられています。後ろ向きのキャラは意味ありげです。

各章の扉には第I章に 1-9『不幸な子供』(下図)が、部分拡大ではなく図版の1点として用いられています。

以下 第II章に 2-20『狂瀾怒濤(きょうらんどとう)』・第III章に 3-32『金箔のコウモリ』・第IV章に 4-46『ジャンブリーズ』・第V章に 5-1-6『エレファンタモス』です。

『不幸な子供』 
1-9 1959年

ソフトカバー/ W210mm × H280mm/ モノクロ・カラー/ 144ページ/ 日・英
価格:2,530円(税込)

エドワード・ゴーリーを巡る旅展の会場・巡回先はここ!

渋谷区立松濤美術館

〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14
Tel.03-3465-9421

渋谷区立松濤美術館

会期
2023年4月8日(土)~6月11日(日)

開館時間
10:00~18:00(金曜のみ20:00まで)
最終入館は閉館30分前まで。

休館日
毎週月曜日(国民の祝日又は休日に当たる場合は開館)
国民の祝日又は休日の翌日(土・日曜日に当たる場合は開館)

アクセス
電車
○京王井の頭線「神泉駅」下車、徒歩5分

松濤美術館にアクセス!京王井の頭線「神泉駅」から!
京王井の頭線「神泉駅(しんせんえき)」改札から松濤美術館(しょうとうびじゅつかん)まで、多くの画像を交え案内します。

○JR・東急電鉄・東京メトロ「渋谷駅」下車、徒歩15分
バス
○ハチ公バス「松濤美術館入口」下車、徒歩2分
(丘を越えてルート/上原・富ヶ谷ルート)
「東大前」下車、徒歩2分
(丘を越えてルート/上原・富ヶ谷ルート)
○京王バス 渋65「東大前」下車、徒歩2分
渋55「東急百貨店本店前」下車、徒歩5分
○都営バス 渋66「東急百貨店本店前」下車、徒歩5分

渋谷区立松濤美術館を皮切りに、1025年度まで全国を巡回します。

エドワード・ゴーリーを巡る旅