トライアローグ展の感想と徹底解説!ピカソなど約120点もの作品に見応えあり

 会場風景・横浜美術館 トライアローグ、課外授業。

トライアローグ展の概要

「トライアローグ:横浜美術館、愛知県美術館、富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」展です。トライアローグとは3者による話し合いを意味します。

ほぼ同時期にオープンした3館がコレクションした20世紀西洋美術の中から、ピカソ、マティス、マグリッド、ダリ、ポロック、ウォーホル、リヒターなど70作家、約120作品が並びます。

普段はそれぞれの美術館の、常設展示に顔を覗かせている作品です。私は企画展だけ見てそのままスルーのこともあります。美術館に来て常設展示を見て行かないのは、漫画全巻を大人買いして積んだままにしておくのと同じです。

それにしても国内の美術館だけで、20世期の西洋美術の展覧会ができるとは予想外でした。開館30、40年になる公立美術館にその手があったかです。

そして積んだまま論の後ですが、オフィシャルサイトの「スペシャル企画」もお勧めです。

上図「20世紀西洋美術の流れ」は、ここの「図解・用語集」の項に掲載されています。ツイートのリンクからも拡大画像やPDFファイルにアクセスできます。

「フォーヴィスム」「キュビスム」より「シュルレアリスム」が圧倒的に長く、「流派や傾向ではくくれない時代へ」と向かっていきます。その先は多様化しすぎて、こういった流れを描くことはできなくなるということも、この図解から何となく分かりそうです。

そして、私のイチオシは「映像でみるトライアローグ」です。「じっくり見るこの一点」は、主に立体や半立体の4作品を、解説なしでBGMを聞きながら鑑賞します。

「技法からみるトライアローグ」は、パウル・クレーが編み出した「油彩転写」を始め、デカルコマニー、スクリーンプリント(シルクスクリーン)が動画で解説されています。どれもやってみたくなりますが、中でもスクリーンプリントは本格的です。

トライアローグ展の見どころはここ

パブロ・ピカソ 003《青い肩かけの女》1902年

トライアローグの告知のビジュアルでもある、ピカソの揃い踏みです。というか、やはり所蔵先3館の揃い踏みでしょう。美術館はお相撲か。

上図、左 《青い肩かけの女》 は、「青の時代」(1901〜1904年)の作品です。1901年に友人カルロス・カサヘマスが、失恋を苦に自殺した頃から、青い色調で描かれるようになりました。

ピカソは、モンマルトルの丘に「洗濯船」というアトリエを構えました。フェルナンド・オリヴィエと知り合い、画面は黄土色系のバラ色に変わり「バラ色の時代」(1904〜1906年)と呼ばれるようになります。

「アフリカ彫刻の時代」(1907〜1909年)には、キュビスムの起源ともなる《アヴィニョンの娘たち》が描かれました。

「自然の中のすべての形態を円筒、球、円錐で処理する」というポール・セザンヌの言葉から、ピカソはジョルジュ・ブラックと共にキュビスムを探究します。

立体を小さな面にいちど分解して再構成する「分析的キュビスムの時代」(1909〜1912年)。文字、新聞の切り抜き、壁紙、ロープなど、本来の絵画とは異なる日常をコラージュする「総合的キュビスムの時代」(1912〜1918年)があります。

告知には使われませんでしたが、004《腰かけ椅子の女》1923年 は「新古典主義の時代」(1918〜1925年)の作品です。

バレリーナのオルガ・コクローヴァと1918年に結婚してから、古典的な様式の作品を描くようになりました。1917年に初めて訪れたイタリアで目に触れた古代彫刻からの影響と、第一次世界大戦による社会不安を受け「秩序への回帰」を求める風潮とがこれを後押ししました。

上図、中 005《腰かけ椅子で眠る女》1927年 は、「シュルレアリズムの時代」(1925〜1936)の作品です。

シュルレアリスム(超現実主義)は、1924年の詩人アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」から始まる芸術運動です。ブルトンは、精神科医ジークムント・フロイト心理学の影響を受け、夢や無意識、狂気、偶然などを解放する具体的な方法を模索しました。

ピカソは17歳のマリー=テレーズ・ワルテルと出会います。マリー=テレーズはピカソの愛人になり、《夢》を始めとする数々の作品のモデルにもなりました。この作品も彼女ではと言われています。

上図、右 006《座る女》1960年。

ピカソの2番目の妻ジャクリーヌ・ロックは、モデル不明だったこの作品を見て「これは私」と告げました。

アンリ・マティス 017《待つ》1921ー22年

《待つ》は、2019年に東京国立近代美術館で開催された「窓展」の告知のビジュアルに使われました。

マティスは1905年にフォーヴィスム(野獣派)と呼ばれた画家たちの中心的存在となりました。1917年から30年頃にかけては、南仏ニースのホテルに定期的に滞在するようになり「ニース時代」と呼ばれています。この作品は、1921年に同地のアトリエで制作されたと言われています。

ヴァリシー・カンディンスキー 028《網の中の赤》1927年

バルテュス  062《白馬に上の女性曲馬師》1941年

2014年に「バルテュス展」がありましたが、この先品は出展されていませんでした。

フランシス・ベーコン (左)086《横たわる人物》1926年

クリスチャン・ボルタンスキー 118《シャス高校の祭壇》1987年

2019年に開催された「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」にも出展されています。この祭壇にも似たインスタレーションは、1933年に撮影されたウィーンのユダヤ人高校(ギムナジウム)の生徒たちの集合写真がもとになっています。


会場風景・横浜美術館 同美術館は1989年に丹下健三の設計により開館しました。

トライアローグ展の混雑状況はここをみる

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「横浜美術館」「愛知県美術館」「富山県美術館」をそれぞれ検索して開きます。


会場風景・横浜美術館  2020年に香港のサザビーズで、箱根のポーラ美術館がゲルハルト・リヒターの作品を約29億3500万円で落札し話題になりました。この《オランジェリー》も同作家の作品で、その36年前に富山県美術館が870万円で購入したものです。先見の明。

トライアローグ展の図録はここがすごい

・海外の作品のときは文字が横組み(横書き)がほとんどですが、あえて縦組みにしてあります。A5サイズに近く、読み物としての傾向が強いです。作品を大きく見たいときは、各美術館によるコレクションの図録をということでしょう。

・表紙は藤色の背景に、朱色の文字と「tri」を意味する三角形が加えてあります。文字と記号による、タイポグラフィを駆使した構成です。告知の「Trialogue」を3段に組むビジュアルとは別になっています。

・作品の多くは見開きで1点が紹介されています。右ページに解説、左ページに作品です。個々の作品に付けられた、キャッチフレーズが際立ちます。クスッと作家の予想ができるものと、ウーンと謎を呼ぶものとがあります。

「奇怪な顔貌あなたは誰?」
「芸術か、金属製品か」
「こんなアイロン使えない」
「唐突に現れる左足」
「ナイフの一閃、時空を開く」

・2019年に「林忠正―ジャポニスムを支えたパリの美術商」「国立西洋美術館開館60周年記念松方コレクション展」があり、その後の西洋美術収集の動向が気になっていたところでした。「日本の美術館における西洋美術コレクションの形成」は待ってましたの論考です。

・山口つばさによる漫画『ブルーピリオド』番外編コレクション展に行こう、が掲載されています。美術大学受験予備校に通う主人公たちの物語のようです。

図録は市販されています。

ハードカバー/ W158mm × H200mm/ モノクロ・カラー/ 328ページ/ 日・英
価格:2,750円(税込)

会場風景・横浜美術館 「Trialogue」の文字組みが美しい。

トライアローグ展のグッズがかわいい


会場風景・横浜美術館 3Fから対岸を望む。

トライアローグ展のチケットはいくら?

横浜美術館

一般1,500円/ 大学・専門学校生1,100円/ 中学・高校生700円/ 小学生以下 無料/ 65歳以上(要証明書)1,400円

障がい者手帳の所有者と介護人(1名)は無料。
観覧無料(小学生以下、招待券・障がい者手帳を所有)もオンライン日時指定予約が必要。
オンライン日時指定予約は、割引の取り扱いはない。各種割引を利用するときは、横浜美術館券売所にて購入。
本展の観覧当日に限り、「横浜美術館コレクション展」も観覧できる。

愛知県美術館

個人
一般1,400円/ 高校・大学生1,100円/ 中学生以下無料

団体
一般1,200円/ 高校・大学生900円/ 中学生以下無料

※団体は20名以上。前売券はありません。
※上記料金で同時開催のコレクション展も観覧できます。
※「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」のいずれかを持っている方、また、その手帳に「第1種」または「1級」と記載がある方に付き添われる方は、1名まで当日料金が半額となります。美術館チケット売り場で手帳を示し購入してください(付き添いの方は申し出ます)。

富山県美術館

未定


会場風景・横浜美術館 横浜出身の銅版画家長谷川潔《花束(部分)》です。

トライアローグ展の会場・巡回先はここ

横浜美術館

〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
Tel.045-221-0300 Fax.045-221-0317

会期
2020年11月14日(土)~2021年2月28日(日)

開館時間
10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)

休館日
木曜日(祝祭日の場合は開館、翌金休館)

アクセス
電車
○みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみらい駅」3番出口から、マークイズみなとみらいグランドガレリア経由徒歩3分、またはマークイズ連絡口(10時~)から徒歩5分。
○JR(京浜東北・根岸線)・横浜市営地下鉄「桜木町駅」から動く歩道を利用、徒歩10分。

バス
桜木町駅から、市営バス156・292系統で「横浜美術館」下車。


○桜木町駅前から日本丸方面へ入る。または桜木町駅前から紅葉坂交差点を右折してMM21地区へ入り、美術館へ。
○横浜駅からは高島町MM21地区入口を通って美術館へ。
いずれも3~5分(首都高「みなとみらい出入口」も利用できます)。

愛知県美術館

〒461-8525 名古屋市東区東桜1−13−2
Tel. 052−971−5511

会期
2021年 4月23日(金)~ 6月27日(日)※予定

開館時間
10:00~18:00
金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)

休館日
月曜日(祝日にあたる場合はその翌日)

アクセス
地下鉄
東山線または名城線「栄」駅下車、徒歩3分
(オアシス21から地下連絡通路または2F連絡橋経由)

名古屋鉄道
瀬戸線「栄町」駅下車、徒歩2分
(オアシス21から地下連絡通路または2F連絡橋経由)


名古屋高速都心環状線「東新町」出口から3分

富山県美術館

〒930-0806 富山県富山市木場町3-20
Tel.076-431-2711 Fax.076-431-2712

会期
2021年 11月20日(土)~ 2022年1月16日(日)※予定

開館時間
9:30~18:00(入館は閉館の30分前まで)

休館日
水曜日(祝祭日の場合は開館、翌木休館)

アクセス
新幹線 改札口(富山駅南口)から
○徒歩
約17分
○バス
7番のりばより乗車、「富山県美術館」下車すぐ。

あいの風とやま鉄道 改札口(富山駅北口)から
○徒歩
約15分
○バス
1番のりば「富山赤十字病院 県美術館経由」に乗車、「富山県美術館」下車すぐ。

富山市内周遊ぐるっとバスから
新幹線改札口(富山駅南口)2番バスのりばで「北西回りルート」乗車、「富山県美術館」下車、約5分。
※毎日「北西回りルート」は6本運行。

富山空港から
タクシー・車で、約20分。

北陸自動車道から
車で富山I.C.から国道41号経由、約15分。

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