堀内誠一絵の世界に行ってきました!アートディレクター・絵本作家として活躍した堀内の生誕90年を記念する回顧展です!

「堀内誠一 絵の世界」は、堀内の生誕90年に当たる2022年を記念して、絵本の原画、雑誌の指定原稿、イラストマップなど、画業全般を回顧する展覧会です。

堀内は、『anan』『POPEYE』『BURUTAS』『Olive』などの、雑誌のアートディレクターとして活躍しました。その後、活動の拠点をパリに移し、本格的に絵本の制作に取り組みます。『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』『マザー・グースのうた』など多くの絵本を手がけました。

堀内誠一絵の世界の感想と解説!

『くろうまブランキー』 1967年

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絵本作家としてのデビュー作です。私が目を留めたページは「りっぱな いえが できました。」です(6・7ページ)。イラストは、鉛筆の輪郭にキャンバス地が認められるほど淡彩です。

紙面の中央に、一本の樹木が逆三角形の構図で枝を伸ばしています。その根本に、四足を投げ出したブランキーが横たわっています。

この樹木とブランキーにより、紙面は左右に分けられます。右側はゆるやかにくだる黄緑色の岡があり、ブランキーの主人の立派な家が建てられています。家の背景は白地で、明るい陽が差し込む穏やかな風景です。

枝と枝との間の空間には、同じ樹木でありながら、左右で異なる彩色がなされています。家のある右側は薄緑で、ブランキーのいる左側は青と混ざり濃さを増します。そして雨の降る中で横たわるブランキーの背景色になっています。

左右の明暗は、同じ場所の異なる時間だけではなく、主人とブランキーとの内面的な距離を表しているのです。絵本は、何点ものイラストによりひとつの世界を創造しますが、その1点の中にも様々なアイデアが含まれていることに驚かされます。

『ぐるんぱのようちえん』1965年

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展覧会告知の、メインビジュアルも務める象のぐるんぱの絵本です。会場のエントランスにある、ビスケットも、靴も、ピアノも、スポーツカーも、ぐるんぱが作りました。

ぐるんぱは、ジャングルの仲間たちに見送られ、職を探しに行きます。はじめはビスケット屋さんです。ぐるんぱは、はりきってビスケットを作りますが、大きくて高いので売れません。

絵本では見開き1ページで、ひとつ職場を訪れます。左ページは全面にイラストが描かれています。調理服をけ身に着けたぐるんぱが、長い鼻で大きなビスケットを差し出しています(10ページ)(下図)。

鉛筆のストロークによる象のシワが絶妙です。業務用の小麦粉には、ブラジルらしきマークが記され、デフォルメされた世界にリアリティーを添えています。

右ページは白地です。のどに寄せて文章が置かれ、右下にぐるんぱがいます(11ページ)。告知に使われれいるイラストです。鼻でビスケットを運んでいるのは、ぐるんぱの曲芸ではありません。売れなかったビスケットをもらって、店を出で行く場面です。

その後、靴屋、製陶工場、ピアノ工場と続きます。右下のぐるんぱの荷物は、ビスケットから、靴、皿、靴、ピアノとページを追うごとに高く積まれていきます。ここまでは同一のフォーマットです。

そして、最後にたどり着いた自動車工場には、見開き2ページをさいています。絵本のサイズはB4判を縦半分にしました。開くと横幅はB3の長径の515mmになります。そのため、左右いっぱいに描かれた、スポーツカーの大きさに驚きます(18・19ページ)。

ビスケットや皿のように同心円ではなく、横長の商品にしたのはこのことを考慮してのことでしょう。また、ところどころに認められるドリッピングも、工場らしさを漂わせています。

次の見開きは白地です(20・21ページ)。文章と、荷物を積みスポーツカーに乗ったぐるんぱとが、のどをはさみそれぞれ左右のページに置かれています(上図)。この見開きの多くは余白となり、職場から追われ孤独なぐるんぱの心情を表しているようです。そして、物語の谷間であることを暗示しています。

私は、ほのぼのとしたイラストもさることながら、絵本のページ構成に堀内のエディトリアル・デザイナーとしての手腕を垣間見た思いでした。

『てがみのえほん』1972年

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『こどものとも』が当書で200号になったことを記念して、内外の絵本のキャラクターたちから届いた手紙を掲載しました、という設定で作った絵本です。とは言うものの、私は絵本に詳しくありません。全てを見つけることができないのが心残りです。

見開き1ページに1通です。左ページ左上に切手が貼られており、文章が続きます。その右隣から、右ページにかけてイラストを描くのが大まかなフォーマットになっています。

またイラストのタッチは、ハンス・フィッシャーだったり、ハインリッヒ・ホフマンだったりと、原作に倣い見開きごとに変えてあります。

『オズの魔法使い』に『長靴をはいた猫』が訪ねてきました。洞窟の図書館で本を読む『こうもりのルーファス』。不品行なキャラクターたちは『もじゃもじゃペーター』。人形工場でダンスパーティーをする『くるみわりにんぎょう』と『二つのオランダ人形の冒険』。

『ぐりとぐら』の作ったカステラを『だるまさんとてんぐちゃん』や、堀内のキャラぐるんぱや、たろうたちが囲んでいます。

切手もよく見ると、『三びきのやぎのがらがらどん』や、ドリトル先生シリーズの珍獣オシツオサレツが描かれていました。こんなところにも、です。

『どうぶつしんぶん』1983年

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会場の掲示を見て、最後まで謎だったのがこの『どうぶつしんぶん』でした。『いりふね・でふね』は、パリ在住の日本人に向けてのミニコミ誌ですが、動物園のPR誌にしては噓八百です。反芻動物(はんすどうぶつ)の特徴もありますが、世界魔法大会の募集もあるからです。

気になるので図書館に行きました。ハードカバーの表紙を開くとポケットがあり、4ページの新聞が春夏秋冬の4部収められています。新聞は16ページの絵本でした。

春の号で募集していた、魔法大会の様子は夏の号にありました。空に上がり満月になった笑い猫、たくさんの足から花火を吹き出すムカデ、口から炎を出し輪になって踊るキツネ小学校の生徒たち。大会のにぎわいが、オリジナルのキャラクターを交え見事にビジュアライズされています。

発刊の辞には、「うそのことは、うそらしく、みんなにしらせる。」とありました。

堀内誠一絵の世界の図録をデサインマニアが分析!

『堀内誠一旅と絵本とデザインと』

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図録はありませんでしたが、『堀内誠一旅と絵本とデザインと』に「堀内誠一絵の世界」の帯が掛けてありました。

・表紙は水色の背景色に、ハンチング帽を被ったモノトーンの堀内のポートレートです。そこにこれまでに堀内が手がけた、雑誌・絵本・イラストマップなどが散りばめられています。

・展覧会の会場に仕事場の再現がありましたが、巻頭には堀内の急逝により未刊に終わった季刊アート誌『LAURENCIN(ローランサン)』の、フェルトペンで色分けされた目次案がありました。

・「Ⅰ 父のいた少年時代」は、堀内の幼年時代のポートレートに始まり、図案家であった父や彼の手がけた作品まであります。堀内は14歳で伊勢丹に入社しました。

「II デザインの仕事」は、ミノルタカメラのPR誌『ロッコロール』、タイトルロゴやアート・ディレクションを担当した『アンアン』など、堀内が関わった多くの雑誌、ロゴマーク、装幀などが掲載されています。

「IV 旅-パリからはじまる旅の時代」は、パリに移住した堀内が『アンアン』に掲載したレポートから書籍化された、『パリからの旅』『堀内誠一の空とぶ絨緞』などがありました。また、活字のように細かい文字がびっしり書き込まれた、カラフルなイラストマップも他に並ぶものがなさそうです。

ソフトカバー/ W166mm × H217mm/ モノクロ・カラー/ 136ページ
価格:1,760円(税込)

堀内誠一絵の世界のグッズは何がある?

グッズは、ぐるんぱのぬいぐるみがありました。私は書籍を数冊購入しました。

『たろうのおでかけ』は、ガソリンスタンドやバス・トラック・タンクローリー・路面電車に描かれているロゴが魅力的でした。そこか?

『絵本の世界110人のイラストレーター vol1・2』は、W235mm × H297mm と大判で、クロス貼りです。絵本画家の紹介で、モノクロとカラーの図版が半々くらいです。ヤフオクで購入しました。

『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事』も、W235mm × H297mm と大判です。用紙が茶色くなった雑誌の中面が、見開きで掲載されていたりします。以前から所蔵していました(笑)。

『パリからの旅』は、フランスの観光案内です。カラーのイラストや緻密なイラストマップは言うにおよばず、赤と紺の2色刷りも洒落ています。

『堀内誠一 ぼくの絵本美術館』は、絵画や絵本作家などを述べた評論ですが、カラー図版も多く載せられています。

堀内誠一絵の世界の混雑状況は?

美術館の混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「ビュフェ美術館」「県立神奈川近代文学館」「ひろしま美術館」をそれぞれ検索して開きます。

私は平日の14:45頃から入館しましたが、比較的すいていました。

堀内誠一絵の世界の所用時間は?

60分

堀内誠一絵の世界のチケットはいくら?

京都展

一般・大学生1,000円/ 中高生800円/ 小学生以下 無料

前売・優待料金
一般・大学生800円/ 中高生600円/ 小学生以下 無料

※優待料金は、大丸・松坂屋のクレジットカード、大丸・松坂屋アプリ会員のサファイアランク、大丸松坂屋友の会カード、ブライダルサークル会員証の持参者に適用する。

静岡展

大人1,000円/ 高・大学生500円/ 中学生以下 無料

団体
大人900円/ 高・大学生400円/ 中学生以下 無料

※学生は学生証等を提示する
※障害者手帳の持参者は半額とする
※団体は20名様以上とする

クレマチスの丘のメールマガジンに登録すると、入館料割引の特典がある
7月10日はベルナール・ビュフェの生誕記念日につき無料とする

堀内誠一絵の世界の会場・巡回先はここ

京都展 2022年1月4日(火)~1月24日(月)

大丸ミュージアム〈京都〉
〒600-8511 京都市下京区四条通高倉西入立売西町79 大丸京都店6階
Tel.075-211-8111(大丸京都店)

開館時間
10:00~20:00 最終日は17:00まで
※入場は閉館の30分前まで

休館日
会期中無休

アクセス
電車
○阪急京都線「烏丸駅」より徒歩1分(地下道直結)
○地下鉄烏丸線「四条駅」より徒歩2分(地下道直結)

静岡展 2022年3月19日(土)~7月25日(月)

ベルナール・ビュフェ美術館
〒411-0931 静岡県長泉町東野クレマチスの丘515-57
Tel.055-986-1300
Fax.055-987-5511

開館時間
3月/ 10:00~17:00
4・5・6・7月/ 10:00~18:00

休館日
水曜日(祝日はその翌日)、年末年始

アクセス
電車
JR東海道線「三島駅」下車、北口(新幹線口)発、無料シャトルバスあり

東名沼津I.C.および新東名長泉沼津I.C.より伊豆縦貫道へ、長泉I.C.出口を右折してR246に乗り、すぐ次の城山交差点左折、ショッピングモールwell-Dを右に回り静岡がんセンタ―方面(北・富士山側)へ/新東名長泉沼津I.C.より5km

神奈川展 2022年4年7月30日(土)〜9月25日(日)

県立神奈川近代文学館

広島展 2023年7月1日(土)〜8月20日(日)

ひろしま美術館

群馬展 2023年秋頃

未定

岩手展 2024年春頃

未定