マティス展に行ってきました!ポンピドゥー・センターの協力のもと、日本では約20年ぶりの回顧展!東京都美術館で開催中!


アンリ・マティス 10《豪奢、静寂、逸楽》1904年

「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」は、ポンピドゥー・センターの協力のもと、日本では約20年ぶりとなるアンリ・マティスの回顧展です。日本初公開《豪奢、静寂、逸楽》、最後の油彩画《赤の大きな室内》など155点が並びます。デザイン愛好家が独自の視点で話します。

マティス展の感想と解説!

最初の展示作品を描いた1895年から、没する1954年までを、作品の内容によって8章に分けてあります。年代順通りではなく、飛んだり重複したりするする期間もあります。

1Fの3章・4章・5章は写真撮影ができます。

1章 フォーヴィスムに向かって 1895ー1909

1891年に、生地の北フランスからパリに上京します。翌年には、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローの教室の聴講生になります。1904年に、新印象派主義のポール・シニャックとの出会いを通じ、筆触分割を用い《豪奢、静寂、逸楽》(上図)を描きます。翌年、サロン・ドートンヌでフォーヴと称されます。

アンリ・マティス 4《自画像》1900年 

2章 ラディカルな探求の時代 1914–1918

アンリ・マティス 22《金魚鉢のある室内》1914年 

アンリ・マティス 25《窓辺のヴァイオリン奏者》1918年 

アンリ・マティス 26《白とバラ色の頭部》1914年

○幾何学的な構成による肖像画です。五角形が顔を象(かたど)ります。その右上と左下の2点から、左上方に伸びるラインが頭髪を描きます。顔全体はピンク色に塗られますが、向かって右部分だけ白くハイライトになっています。

衣服は、ピンクと紺色の太めのストライプです。首元がV字型に開いており、セーラー服のような後襟が覗いています。首周りは複雑に描かれ、立体感が持たされています。

頭部から鼻先まで、黒いラインが引かれています。このラインは衣服のストライプと呼応しています。

鼻には高さが描かれています。黒いラインの鼻から上は、横から見たらどのようになるのでしょう。立体として描かれてはいないこの部分は、写実と抽象の交差点のように思えます。

4章 人物と室内 1918ー29

1918年にニースに拠点を移し、生涯南仏を制作の場とします。肖像画や室内情景の小品を数多く描き、自然主義的な様式に戻ります。その顕著な現れが、室内の人物をテーマとした作品です。カーペットや屏風などでアトリエを飾り、《赤いキュロットのオダリスク》(下図)を描きました。

アンリ・マティス 50《赤いキュロットのオダリスク》1921年

アンリ・マティス 54《緑色の食器戸棚と生物》1928年 

5章 広がりと実験 1930–1937

アンリ・マティス 55《夢》1935年 

アンリ・マティス 58《座るバラ色の裸婦》1935-36年 

6章 ニースからヴァンスへ 1938–1948

アンリ・マティス 65《マグノリアのある静物》1941年

アンリ・マティス 80《黄色と青の室内》1946年

○ふたつの矩形の青と、背景色の黄土色に目が留まります。互いの色を引き立て合う、補色に近い2色です。

植物や果物などにわずかに緑色が引かれ、丸テーブルの左端に白がさっと塗られています。壺と西瓜は、黄土色が薄められています。

一方、丸テーブルもロカイユの椅子もタペストリーも、多くの設(しつらえ)は輪郭線でその形を留めるばかりです。手前のテーブルだけは、全てに彩色がなされ際立っています。

丸テーブルは楕円で描かれています。椅子は貝殻を模した背と座面が覗きます。これらは、斜め上から見ています。奥のタペストリーと、花瓶を乗せたサイドテーブルは真横からです。

アンリ・マティス 81《赤の大きな室内》1948年 

手前のテーブルの、コップの口と皿は楕円です。斜め上からです。しかし、テーブル自体は四角で真上から見ています。総じて、ひとつの作品に複数の視点が共存しています。

手前のテーブルを真横からの視点で見ると、レモンが転がり落ちそうです。しかし異なる視点は、水平と垂直に置かれたテーブルとタペストリーを同形に並べました。対角線上に収めた青い矩形のために用意された、室内風景のようにさえ思えます。

7章 切り紙絵と最晩年の作品 1931ー54

1930年初頭、バーンズ財団の壁画《ダンス》を絵描くために、切り紙絵の技法を用います。1941年、十二指腸癌癌の手術をし一命を取り留めます。ベッドや車椅子で、再び切り紙絵に向かいます。1947年に、20点の切り紙絵を『ジャズ』(下図)として上梓(じょうし)します。

アンリ・マティス 89『ジャズ』道化 1947年

アンリ・マティス 124《オレンジ色のあるヌード》1953年 

8.ヴァンス・ロザリオ礼拝堂1948ー51

1948年から、晩年の代表作ロザリオ礼拝堂に取り組みます。建物の設計、装飾、什器、祭服、典礼用品まで担当します。

アンリ・マティス 127 ヴァンス礼拝堂内観、告解室の扉 1951年 

141 円形装飾《聖母子》を描くアンリ・マティス 1950年 

152 ヴァンス礼拝堂内観、白の上祭服を着た司祭 1950年 

マティス展の図録をデサインマニアが分析!

○表紙は、22《金魚鉢のある室内》・58《座るバラ色の裸婦》(上図)・80《黄色と青の室内》(下図)の3パターンから選びます。作品は画面の左上に収められ、その周りに切り紙絵を模した図形が散りばめられています。

タイトルは欧文のみが記されています。「Henri Matisse:」で改行し、右下がりに一文字一文字が次第に大きくなる「The Path to Color」のロゴタイプが絶妙です。サブタイトルは「色彩への道」でしょうか。

タイトル・図形・背景色の配色は、3点の作品ごとに変えてあります。

○ホローバックという製本様式が使われています。本を開いたときに、表紙の背と本体の背との間に空洞ができます。本の開きやすさを重視しました。

○各章の扉は見開きで、左ページにタイトルとマティスのポートレート、右に解説があります。たとえば、5章の左ページは下記のように記されています。

5.

広がりと実験

1930ー37

Expansion and Experiment
(ポートレート)

当初は、ランダムにインデントしてあるのかと思いました。数字は中央揃え、和文タイトルは左揃え、欧文は右揃えにしてあります(驚)。

ポートレートは文字組みの下に、右にあるノドにかけて置かれています。5章は、「壁面《ダンス》を描くマティス、ニース、1931年」(上図)です。

図版ページ見開きの右肩に、和文タイトルが小さく置かれています。

21《アルジェリアの女性》1909年

○作品は、155点が掲載されています。多くは1ページに1・2点であります。しかし、2ページに1点で掲載されている作品も24点あります。1《読書する女性》・10《豪奢、静粛、逸楽》・11《横たわる裸婦I》・12《豪奢I》・21《アルジェリアの女性》(上図)など、これらは見どころです。

ハードカバー/ W210mm × H270mm/ モノクロ・2色・カラー/ 288ページ/ 日・英
価格:3,300円(税込)

マティス展の会場はここ!

東京都美術館(東京・上野公園)

〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル 全日/9:00~20:00)

会期
2023年4月27日(木)~8月20日(日)

開館時間
9:30~17:30、金曜日は20:00まで (入室は閉室の30分前まで)

休室日
月曜日、7月18日(火)
※ただし、5月1日(月)、 7月17日(月・祝)、 8月14日(月)は開室

アクセス
JR「上野駅」公園口より徒歩7分
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分
京成電鉄京成「上野駅」より徒歩10分

東京都美術館の行き方!銀座線「上野駅」から!
銀座線「上野駅」上野公園方面改札から東京都美術館まで、多くの画像を交え案内します。途中「東京文化会館」、JR「上野駅」公園口、「国立西洋美術館」、「上野動物園」の行き方も案内します。

マティス展 Henri Matisse: The Path to Color
マティス展の公式サイトです。2023年4月27日(木)~8月20日(日)まで、東京都美術館で開催。