佐伯祐三展2023に行ってきました!夭折の洋画家の代表作143点を一堂に展示!大阪中之島美術館で開催中!

「佐伯祐三_自画像としての風景」は、大阪・東京・パリの3都市で生きた夭折の洋画家の、郵便配達夫などの代表作143点を一堂に展示します。東京ステーションギャラリー・大阪中之島美術館を巡回します。

佐伯祐三展2023の感想と解説!

001《自画像》1919年頃

023《下落合風景》1926年頃

○土手に挟まれた鉄道の高架橋です。土手は画面右手前から左奥にかけ下がっていきます。土手の高低ではなく遠近によるものです。

024《ガード風景》がこれに似た構図です。目前にガードが大きく立ちはだかり、空がわずかに覗いています。《下落合風景》では土手は低く、その分薄曇りの空が広々としています。

027《下落合風景(テニス)》1926年頃

土手は緑色の草でおおわれています。煉瓦の橋脚の赤茶色とは、補色に近い関係にあり画面に強いコントラストをあたえます。右手前の煉瓦とコンクリには、スクラッチによる目地が引かれています。

密集して並ぶ電柱が空を仰ぎます。抑揚のある、かすれた縦線は書画のようです。ほとんどの電柱は放射線状に傾いており、生命感すら感じさせます(笑)。電線は、途切れ途切れに電柱をつなぎ、高架の上を走っています。

033《肥後橋風景》1926-27年頃

白い柵は、どこを走っているのでしょう。土手に沿って走っている。道に沿って走っている。土手から道にカーブして走っている。誇張と写実の対峙する痕跡は、あちらこちらに自然発生的に散らばり作品に独自性を加えます。

052《人形》1925年頃

080《コルドヌリ(靴屋)》1925年

○画面全体を白壁が無造作にふさぎます。モノクロームに近い彩色と、矩形による幾何学的な構成がストイックな印象をあたえます。

白壁は左右に折れています。右の鉄扉は側面にあります。正面には靴屋と大きく記した文字と、赤い格子の扉が内側に開いています。暗い室内には、赤茶色の床にハンマーを持った職人が覗きます。

086《夜のノートルダム(マント=ラ=ジョリ)》1925年

扉の左右には、多くの黒い靴が掛けられています。右側には赤い貼り紙、左には棚の上に色のついた靴、その下にやはり黒い靴が重ねられています。ショーウインドウがないときの、ディスプレイの様子でしょうか。

「CORUDONNERIE」は、壁面の上部の広いスペースにゆったりと置かれています。細部まで丁寧に描かれており、書体はタイムズ・ニュー・ローマン(上図)を思わせます。縦の字画が太く横が細いこと、セリフ(文字の先端にある小さな飾り)を持つこと、Cの下方にセリフがないことからです。

113《テラスの広告》1927年

同じ構図を速攻で描いた、081には「C」と、「E」の上部にしかセリフがありません。この後欧文は一気に画面を埋め尽くすほどになり、判読困難なリズミカルな線へと姿を変えます。佐伯は欧文の意味より、単調な造形の反復に目を留めました。

128《モランの寺》1928年

138《煉瓦焼》1928年

○煉瓦焼きの窯です。と言うより、絵本に出てくる顔の家のようです。紺色の空を背景に、愛嬌のある切妻屋根が居座っています(笑)。

屋根を始め主要な部分は、太い輪郭で囲まれ重量感を増しています。両脇にあるアーチ型の入口は、グレーの戸板で閉じられています。左側は階段、右はスロープが入り口まで導きます。

140《郵便配達夫》1928年

中央の開口部は、セメントが塗られていますが一部に煉瓦が覗きます。画家は細部を見逃しませんでした。左右のアンバランスなアーチ型や、ぐにゃりとした開口部が有機的で今にも話し出しそうです。

開口部と地表の間に位置する、中央の煉瓦はどのように積まれているのか疑問が残りました。

141《ロシアの少女》1928年

開口部の床とスロープの形状、張り出した左側面の影の様子、煉瓦下部の湾曲する横方向の線から、円錐台の半分のように思えます。

スロープはどこから始まったのでしょう。開口部の床までは届いていません。スロープは分かりませんでした(笑)。屋根の上の塗り残しは顔の家を発光させ、画業の到達点を讃えているようにも思えます。

143《扉》1928年

佐伯祐三展2023の図録をデサインマニアが分析!

○表紙には、エンボス加工のなされた用紙が使われています。青色の背景色が際立ちます。画面の右上に 080《コルドヌリ(靴屋)》が置かれています。タイトルは画面左に明朝体、縦組みで箔押しが用いられています。

欧文タイトルは朱色で、「佐伯祐三」の右に小さく置かれています。サブタイトルの「自画像としての風景」は、「Emerging from the Urban Landscape」とされています。

○全体の扉には、129《モランの寺》の部分拡大がモノトーンであります。ページをめくると「イーゼルの前の佐伯祐三と娘の彌智子」のポートフォリオが続きます。

作品の扉は、138《煉瓦焼》の建物の右半分の部分拡大です。色相を編集して用いられています。

034《汽船》1926年頃

章の扉です。第1章は紺色の背景色に、034《汽船》(上図)がモノトーンで置かれています。文書だけではなく図版もあるので、背景の作品は分かり難いかもしれません。

第2章は茶色の背景色に 068《パリ 15区街》、第3章は緑色の背景色に 136《納屋》が使われています。

○作品の多くは、1ページに1点で掲載されています。

097《リュクサンブール公園》1927年

020《下落合風景》・037《滞船》・077《壁》・084《酒場(オ・カーヴ・ブルー)》・91《アントレ ド リュード シャトー》・097《リュクサンブール公園》(上図)・104《ガス灯と広告》(下図)・113《テラスの広告》・122《工場》・135《モラン風景》・138《煉瓦焼》には、対抗ページに部分拡大が添えられています。これらは見どころです。

104《ガス灯と広告》1927年

ソフトカバー/ W225mm × H280mm/ モノクロ・カラー/ 232ページ/ 日・英
価格:2,800円(税込)

佐伯祐三展の会場・巡回先はここ!

東京ステーションギャラリー

〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1
Tel. 03-3212-2485

東京ステーションギャラリー
東京ステーションギャラリーの公式サイトです。東京ステーションギャラリーは1988年から東京駅丸の内駅舎内で活動を続ける美術館です。開館以来、駅舎の構造を露わにしたレンガ壁の展示室と、ユニークな展覧会で親しまれています。

会期
2023年1月21日(土)~4月2日(日)

開館時間
10:00〜18:00 金曜日 10:00 〜20:00
入館は閉館30分前まで

休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日/ただし会期最終週、ゴールデンウィーク・お盆期間中の月曜日は開館)、年末年始、展示替期間

アクセス
JR「東京駅」丸の内北口 改札前
○東京メトロ丸の内線「東京」駅(約3分)
中央改札を丸の内北口方面側に出て、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR東京駅丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある
○東京メトロ東西線「大手町」駅(約5分)
東改札をB4、B5出口方面へ出て、階段(エスカレーター)を上がり直進
そのままJR「東京駅」方面の地下通路を直進、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に入口がある
○東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(約7分)
JR「東京駅」方面改札を出て、出口7の階段を上がる
行幸地下ギャラリーを通りぬけ左折、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある

大阪中之島美術館

〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
Tel. 06-6479-0550(代表)(9:15~18:00)

大阪中之島美術館
大阪中之島美術館公式ウェブサイトです。 19世紀後半から今日に至る日本と海外の代表的な美術・デザイン作品を中心に、約6000点超のコレクションを所蔵。様々な展覧会を開催しています。

会期
2023年4月15日(土)~6月25日(日)

開館時間
10:00~17:00(入場は16:30まで)

休館日
月曜日(5月1日を除く)休館

アクセス
電車
○京阪
・中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩約5分
・「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○Osaka Metro
・四つ橋線「肥後橋駅」4番出口より西へ徒歩約10分
・御堂筋線「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○JR
・大阪環状線「福島駅」/東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩約10分
・「大阪駅」より南西へ徒歩約20分
○阪神
・「福島駅」より南へ徒歩約10分
・「梅田駅」より南西へ徒歩約15分
○阪急
・梅田駅より南西へ徒歩約20分
バス
○大阪シティバス
JR「大阪駅」前より53号・75号系統で「田蓑橋」下車、南西へ徒歩約2分
※帰路のJR「大阪駅」方面最寄バス停は「渡辺橋」から