メトロポリタン美術館展に行きました!メットが所蔵する2500点以上の西洋絵画から厳選した65点が来日!

「特別展 メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」は、15世紀の初期ルネサンスから19世紀末のポスト印象派までの500年を、メットが所蔵する2500点以上の西洋絵画から厳選した65点でたどります。

ラファエロ、クラーナハ、エル・グレコ、ルーベンス、カラヴァッジョ、フェルメール、レンブラント、ターナー、クールベ、マネ、ルノワール、モネ、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌなどの絵画作品が一挙に公開されます。

メトロポリタン美術館展の感想と解説!

メトロポリタン美術館(The Met)は世界三代美術館のひとつです。残る2館はフランス・パリのルーヴル美術館とロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館です。

ルーヴル美術館は2018年から2019年に、東京・大阪で「ルーヴル美術館展 肖像芸術ー人は人をどう表現してきたか」が開催されました。

エジプト出土の《棺に由来するマスク》や、ナポレオンの勇姿を描いた《アルコレ橋のボナパルト》など、古代から19世紀までの彫刻・絵画・工芸の肖像芸術、約110点が展示されました。(下図、メット展には展示されません)

そして「メトロポリタン美術館展」です。

カルロ・クリヴェッリ(3)《聖母子》1480年頃

クリヴェッリの作品は2020年に「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で《聖エミディウスを伴う受胎告知》を見ました。(下図、メット展には展示されません)

受胎告知は空に穴を開け、家屋をくぐり抜け、ハトを介し、マリアの頭部まで届く一条の光によってなされます。

ところどころに、レリーフを刻む過剰なまでのデコラティブな建築物。メタリックで装飾品のような光輪。画面からはみ出すように描かれた、リンゴとウリのだまし絵です。これらが、遠近法にもとづく空間に滞りなく配置されていました。

(3)《聖母子》は肖像画ですが、クリヴェッリのアイテムが満載でした。(上図) 聖母が、イエスを座らせる欄干の側面のレリーフやひび割れ。宝石や真珠を埋め込んだ光輪。聖母の頭部を囲む、巨大なリンゴとキュウリは、薄紫の布を背に飛び出しそうです。

装飾的な衣装の聖母と、その長い指で支えられたイエスは、画面にとまったように見える大きな蠅を見つめています。

カラヴァッジョ(26)《音楽家たち》1597年

カラヴァッジョは、大阪展の告知にも使われています。2019年に札幌・名古屋・大阪で「カラバッジョ展」がありました。

《リュート弾き》《歯を抜く人》《法悦のマグラダのマリア》などカラヴァッジョの作品10点と、カラヴァッジェスキ(カラヴッジョ様式の追潤者)らの作品30点が並びました。(下図左上が《リュート弾き》、右上が《法悦のマグラダのマリア》、メット展には展示されません)

このときの図録の巻頭論文に、今回のメット展に出品されている(26)《音楽家たち》がモノクロ画像で添えられています。(下図) 実物が鑑賞できるとは思いませんでした。

この作品は、カラヴァッジョの庇護者デル・モンテ枢機卿(すうききょう)のもとでモデルを駆使して描かれました。少年の配置とそれぞれのポーズに特徴があります。

右端の少年は後ろ向きで、白い左腕と平らな背中が印象的です。いちばん手前に位置し、遮るものもなく全身が描かれています。うつむき加減に楽譜に目を落とし顔は隠されています。

その左に覗くのが、カラヴァッジョの自画像とされています。4人の中で唯一こちらに目を向けています。頬から下にかけて陰影を持たせてあります。

そして、リュートを持った少年がこの作品の主人公です。正面を向き調弦する様子は、体を開いた状態になり画面を広く有しています。右肩から斜めに掛かる、えんじ色の衣装がアクセントです。

画面の左上をキューピッドが占めています。ブドウを積む様子を左前方から捉えています。背中の羽根は黒く背景と同化してしまいそうです。

狭い空間の中に、4人を背面・正面・側面と異なる向きで重ね合わせることで、奥行きと変化を持たせています。しかし、それぞれが対話するでもなく孤立しており、いくぶん不自然さを感じます。

また、前列3人の肌はまばゆいほど白く、対して後列のカラヴァッジョは薄暗く、背景はさらに暗くと前列後列で明暗の対比が描かれています。

カラヴァッジョはこの後1600年に、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会コンタレッリ礼拝堂に《聖マタイの召命》《聖マタイの殉教》を完成させ一躍脚光を浴びることになります。(下図右が《聖マタイの召命》、いずれもメット展には展示されません)

ヨハネス・フェルメール(32)《信仰の寓意》1670-72年頃

2018年から2019年に、東京・大阪で「フェルメール展」がありました。《マルタとマリアの家のキリスト》《牛乳を注ぐ女》《取り持ち女》などフェルメール作品が東京展で8点、大阪展で6点、加えてフランス・ハルツ、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ヨーステンらの17世紀のオランダ絵画39点が来日しました。(下図は《牛乳を注ぐ女》、メット展には展示されません)

(32)《信仰の寓意》は、アトリビュートをもとにした謎解きです。(下図) 青と白の衣装をまとった女性に目が留まります。胸に当てた左手は信仰を表します。

女性の視線の先には十字架があります。テーブルの上の書物の白いページが目を引きます。女性の左手がかかる、青いテーブルクロス伝いに鑑賞者の視線は画面下方へと向かいます。

図録の部分拡大では、女性の肖像ではなく膝から下がトリミングされていました。目を落とした市松模様の床には、ミステリアスな世界が待ち受けています。

テーブルクロスの先にあるリンゴは禁断の実です。蛇をつぶしたのは、キリストを象徴する隅の親石。そして、女性が地球儀に乗せた右足は、世界の支配を意味します。フェルメールの、ここまでアンバランスな姿勢は珍しいです。

椅子の上のクッションやタペストリーにまとう、白い斑点はフェルメールの描く光の反射です。

背景の画中画ヤーコプ・ヨルダーンスの《十字架上のキリスト》は、フェルメールの所蔵品とされています。その前に吊るされた、ガラスの球は天界です。信仰から天界へとたどり着く動線は、「ピタゴラスイッチ」のように複雑でした(笑)。

なお2022年より、東京・北海道・大阪・宮城で「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催されます。

メトロポリタン美術館展の図録をデサインマニアが分析!

・おもて表紙はジョルジュ・ラ・ツール(27)《占い師》です。(下図)

背表紙を通りうら表紙中程まで続いています。残りは赤が惹かれています。この色は作品中の衣装の色から採ったのでしょう。見返しは薄いサーモンピンクです。この色も衣装の色からでしょう。図録のキーカラーとされています。

・各章の扉にも同色が用いられ、柔らかな印象をあたえます。

・ところどころに、美術館の様子がカラーやモノクロの画像ではさみこまれています。水色の壁面に展示されている(27)《占い師》と(28)《ギターを弾く女性》。グレート・ホールは、アーチ型天井とその奥にエジプトのファラオの彫刻がのぞきます。

正面玄関はコリント式の柱と緻密な彫刻におおわれています。ちょうどアジアの美術100周年の展覧会のようで、《神奈川沖浪裏》《朝顔図屏風》のバナーが、単色のファサードにアクセントとなっています。

・作品の掲載は見開きで図版に1ページ、解説に1ページがあてられています。さらに見開きで部分拡大が加わるものもあります。部分拡大は図録の見どころです。

解説には、作家の生い立ちも、作品とともにまとめられています。作家の略歴は、巻末に持っていかれることも多いです。作品を見ながら、作者に思いを馳せることができるのも、この図録の特徴と言えます。

ハードカバー/ W220mm × H282mm/ モノクロ・カラー/ 232ページ/ 日・英
価格:2,900円(税込)

大阪立美術館

メトロポリタン美術館展のグッズは何がある?

メトロポリタン美術館展の混雑状況は?

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「大阪立美術館 」「国立新美術館 」をそれぞれ検索して開きます。

メトロポリタン美術館展の所用時間は?

90分〜120分。
平日の11:00に大阪会場に行きました。日時指定のため、展示室には待ち時間なしでスムーズに入れました。ミュージアムショップに20分並びました。


大阪立美術館

メトロポリタン美術館展のチケットはいくら?

大阪展

観覧料(税込)
一般2,100円/ 高大生1,500円

※中学生以下、障がい者手帳などを持参の者(介護者1名を含む)は無料(要証明)。
※大阪市内在住の65歳以上も一般料金が必要。
※高大生は入館の際、学生証を提示する。
※団体割引の設定はない。
※各プレイガイド(コンビニエンスストアなど)での販売はない。

東京展

観覧料(税込)
一般2,100円/ 大学生1,400円/ 高大生1,000円

※中学生以下は入場無料。
※障がい者手帳を持参の者(付添の方1名含む)は入場無料。
※混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入する。

メトロポリタン美術館展の会場・巡回先はここ

大阪展 2021年11月23日(土)~2022年1月16日(日)

大阪立美術館
〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82
Tel.06-6771-4874

開館時間
9:30~17:00
※入館は16:30まで

休館日
月曜日(1月10日(月・祝)は開館)、
年末年始(2021年12月30日(木)~2022年1月3日(月))

アクセス
最寄駅
地下鉄
○御堂筋線「天王寺駅」
○谷町線「天王寺駅」15・16番出口
JR
「天王寺駅」中央口改札
近鉄・南大阪線
「大阪阿部野橋駅」西改札口
阪堺電気軌道
上町線「天王寺駅前駅」
大阪シティバス
「あべの橋停留所」
最寄り駅で下車し、北西へ徒歩約400m、美術館は天王寺公園内にある。

東京展 2022年2月9日(水)~5月30日(月)

国立新美術館 
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)
Fax.03-3405-2531

開館時間
10:00~18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで

休館日
火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館)

アクセス
○東京メトロ千代田線「乃木坂駅」
青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
○東京メトロ日比谷線 「六本木駅」
4a出口から徒歩約5分
○都営地下鉄大江戸線「六本木駅」
7出口から徒歩約4分