「大阪の日本画」は、北野常富(きたのつねとみ)・島成園(しませいえん)・菅楯彦(すがたてひこ)・矢野橋村(やのきょうそん)ら明治から昭和初期に近代大阪で活躍した、60名を超える画家による170点の作品を展示します。
大阪の日本画展の感想と解説!
15 北野恒富《宝恵籠》1931(S6)年頃
○L字に画面を走る、紅白のストライプが目を惹きます。よく見ると、後方にもわずかに紅白が覗いています。必要なパーツです。暖簾(のれん)をくぐる様子ではありません。
宝江籠(ほうえかご)は、十日戎(とおかえびす)を祝う駕籠の行列です。用いられる駕籠は、座板の前後に山型に支柱を立て、屋根をかけただけの簡易な形状をしています。
16 北野恒富《いとさんこいさん》1936(S11)年
紅白のストライプは、駕籠の支柱と屋根にあたります。作品は、駕籠全体が分からないようにトリミングされています。行列のある関西では、一目瞭然なのかもしれません。
屋根の先に水色の絞り柄があります。黒い髪に白塗りの顔、淡いピンクに梅柄の着物、赤と黒の絞り柄の帯など、水色の他は赤と黒と白だけで構成されています(驚)。
20 小林柯白(かはく)の《道頓堀の夜》1921(T10)年
今回紹介するのは、先日のトークイベントで岸政彦さんも好きな作品とお話しされていた、小林柯白(かはく)の「道頓堀の夜」。建物の向こうに芝居茶屋が並ぶにぎやかな道頓堀を、静かな夜🌃のひとコマとして描いた素敵な作品です。
会期も残すところ10日を切りました。ぜひ会場でご覧ください‼️ pic.twitter.com/cnJjKGGPO3
— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) March 24, 2023
少ない彩色による構成は、少女の慎ましやかな表情を手伝っています。行列の賑わいとは別に、緊張感のある静寂な時間が流れているようです。
28 中村貞以《失題》(T10)1921年
3月20日は月曜日ですが開館します‼️
早いもので閉幕が近づいてきました。皆さまのご来場をお待ちしております🙂 pic.twitter.com/twT3IuvCfG
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40 菅楯彦《浪華三大橋緞帳》1957(S32)年頃
48 菅楯彦《春秋難波人 堀江阿弥陀池》1954(S29)年
\後期展示の見どころ②/
「浪速風俗画」を手がけ、大阪市名誉市民の第一号でもある菅楯彦。この作品には芝居の幟が描かれ、昔の法善寺界隈を描いたものと考えられます。お不動さんにお参りする親子の姿も見えますね。人々の賑わいに心あたたまる😊作品です。 pic.twitter.com/fUtsY3WNGy— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) March 10, 2023
○色とりどりの往来で賑わう路地です。登場人物は20人、誰一人として同じ装いはありません(驚)。
3人の子どもたちが、人形芝居に群がります。後ろ姿で際立つ唐子髷(からこまげ)も、剃り残した毛の位置がそれぞれちがいます。描きたくて描きたい感がにじんでいます。
55 生田花朝《天神祭》1935(S10)年頃
左端の子どもの服装を見ると、青い地の背・薄緑に緑色の縦縞の着物・黄色の帯・青い鼻緒(はなお)です。続くふたりの着物もピンク色の地に花柄、黄色に茶色の横縞と、子どもながらに華やかです。
その右は母と娘でしょうか。ふたりの顔の肌の色は、わずかにちがいます。母は白く、娘は赤みがかっています。その後を僧侶が続きます。年配の僧侶の肌は茶色がかっています。
65 矢野橋村《那智参拝》1943(S18)年
【予習解説シリーズ】第3章では、矢野橋村(きょうそん)に注目👀伝統的な文人画に、近代的感覚を取り入れた「新南画」を確立しました✨
若き日に左手首切断の負傷を負い、右手一本で画業に専念することを決意した・・・という苦労人ですが、その後大阪の美術と南画の発展に尽力。本展を彩る一人です‼️ pic.twitter.com/aa9KzcDZSO— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) January 13, 2023
遠方には2階の座敷、その向こうに祭りの幟(のぼり)が覗きます。2階の座敷はうっすらとしています。距離感として説明がつきそうです。
しかし、正面の茶店の屋根までが、消えかかっています。人垣の細部を損なわないために、はっきりした稜線の重みを隠したのでしょう。消え入りそうな情景の象徴として、画面に留め置いたのかもしれません。
73 森琴石《獨樂園図》1884(M17)年
【予習解説シリーズ】第4章では伝統的な文人画をご紹介。大阪は、漢詩や漢文の教養を身につけた市民が多かったこともあり、西日本を中心に各地から文人画家が集まる地でした💡こちら、大阪を代表する文人画家、森琴石(もり・きんせき)の作品。俗世から離れた静かな一人だけの世界を表します・・・✨ pic.twitter.com/ofRojYx5N6
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140 山口草平《人形の楽屋》大正後期〜昭和初期
\前期の注目作品⑨/
薄暗い部屋のなか、蝋燭の灯り🕯️に照らされた文楽人形たちが出番を待っているのでしょうか。人の立ち入らない舞台裏を切り取った異色の作品です。2曲1双の屛風仕立てで、サイズも大きく、会場で個性的な存在感を放っています👀 pic.twitter.com/HYE9K4AKKV— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) February 17, 2023
155 島成園《祭りのよそおい》1913(T2)年
163 星加雪乃《初夏》1940(S15)年
大阪の日本画展の図録をデサインマニアが分析!
\公式図録のご紹介!/
全170点の作品図版🖼️をぜいたくにレイアウトしました。一部の作品には図版といっしょに短い作品解説が入っていて、ぱらぱらとめくるだけで👀楽しめるカラーページになりました。A4変形版、全308ページです。 pic.twitter.com/oIfhp35Glj— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) January 25, 2023
○表紙には異なる二隻(せき)の屏風が用いられています。デザインは画面上部1/5を白地で残し、下部に屏風をレイアウトしています。白地により屏風の掲載部分が横に長くなり、折り返しを含めると五扇(せん)弱を納めることができます(驚)。
和文タイトル「大阪の日本画」は2行に改行され、画面右上に白地から屏風に渡りコンパクトに置かれています。これらは箔押しがなされています。
表表紙は、北野恒富が描く六曲一双屏風 9《紅葉狩》の右隻が用いられています。両手に器を運ぶ禿(かむろ)を、金色の紅葉が埋め尽くします。
61 矢野橋村《羅浮逢仙》1921(T10)年
\後期展示の見どころ④/
矢野橋村からは「羅浮逢仙」をご紹介。中国の故事をもとにした伝統的な画題ですが、生き物のような松や岩🪨の存在感が独特で、迫力たっぷりの作品です。図録📙の裏表紙にも掲載されました。 pic.twitter.com/hAWu0VDiDG— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) March 14, 2023
裏表紙は、矢野橋村の六曲一双屏風 61《羅浮逢仙(らふおうせん)》(上図)の左隻です。モノトーンの山並みに半月を臨みます。表裏を絢爛と静寂で飾る、二隻の対比が絶妙です。
○扉には船場派の西山寛瑛(にしやまかんえい)の、105《浪華旧名勝図・三大橋》が紺色のモノトーンであります。紺色ページがしばらく続きます。30ある小作品のうちの1点です。原寸より拡大されており、絹地(きぬじ)の表面の凹凸が認められます(驚)。
開くと見開きで会場案内です。菅楯彦の 47《南郭春宵(なんかくしゅんしょう)》が部分拡大であります。春の宵が淡いトーンで広がります。
見開きで目次です。下部2/5ほどに帯状に、菅楯彦の39《職業婦人絵巻》の4巻目があります。生き生きとした女性の表情があふれています。
「大阪で生まれた日本画家」には、伊藤渓水の138《四季花鳥画帳・桜にオオルリ(雄)》の一部が切り抜きで添えられています。
○続いて「ガイドマップ・系譜図」があります。この項は、クリーム色の用紙に青緑と朱の2色刷りでレトロに構成されています。
扉に、8 北野恒富《護花鈴(ごかれい)》の桜の部分が用いられています。朱を薄めた、淡いピンクがページをおおいます。大所帯な流派ごとの繋がりが、つぶさに記されています。
中川和堂の 108《鐘美帖(しょうびちょう)・夏相撲の力士》が添えられています(笑)。
9北野常富《紅葉狩》1918(T7)年
本日は節分🫘北野恒富「紅葉狩」を紹介します。同名の能の演目のストーリーは、平維茂(たいらのこれもち)の一行が山で出会った美しい女性、その正体は恐ろしい鬼だった・・・というもの。恒富が描くこの優しそうな人物にも鬼のイメージが重ねられているのかもしれません👹2月26日までの展示です。 pic.twitter.com/BgAckxGLl3
— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) February 3, 2023
○図版の扉は横に2面に分割して上部に解説、下部に作品の部分拡大が置かれています。第一章は、表表紙に用いられた 9《紅葉狩》の左隻(上図)です。
第二章以下、51 生田花朝《だいがく》・66 矢野橋村《不動窟》・79 河邊青蘭《武陵桃源図》・123 武部白鳳《泊船図》・152 中村貞以《猫》(下図)です。これらは挿絵の役割を果たしています。作品図版より大きく扱われており見どころです。
152 中村貞以《猫》1948(S23)年
○図版で部分拡大が添えられているものは、29 中村貞以《お杉お玉》・29 菅楯彦《菅絃船図(かんげんぶねず)》・37 菅楯彦《竜頭鷁首図屏風(りゅうとうげきしゅずびょうぶ)》。
57 生田花朝《泉州脇の浜》は、観音開き3ページに部分拡大1ページがあります(驚)。
68 矢野鉄山《秋意幽遠》・88 村田香谷《花卉・文房花果図鑑》・155 島成園《祭りのよそおい》は見開きであります。
153 松浦春浦《魚遊》
\前期の注目作品⑧/
ポストカードも人気のこちらの作品は、大分市出身の幸松春浦(ゆきまつ・しゅんぽ)によるもの。春浦は大阪を代表する南画家として活躍し、晩年は本作のような自然観察にもとづく温かみのある絵を描いたそうです。列になって泳ぐ魚たち🐟🐟🐟が気持ちよさそうです。 pic.twitter.com/3w5UOQjBbL— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) February 14, 2023
○巻末のモノクロページです。170 池田遙邨《雪の大阪》・133 野田九浦《川狩二代》・153 松浦春浦《魚遊》は見開きです。158 木谷千草《浄瑠璃船》(下図)が部分拡大で使われています。これらは、彩色がないので構図の際立つものが選ばれています。
158 木谷千草《浄瑠璃船》1926(T15)年
\前期の注目作品⑩/
「浄瑠璃船」は江戸末期の大坂風俗である大川の川涼みの情景を描いた木谷千種(ちぐさ)の代表作です。描かれた床本📖から、太夫が語るのは「傾城恋飛脚 新口村の段」で梅川と忠兵衛が逃避行するシーンであることが分かります。女性が熱心に聞き入っている👂様子が印象的ですね。 pic.twitter.com/7u8gFWKi8P— 特別展【大阪の日本画】 (@osaka_nihonga) February 20, 2023
ソフトカバー/ W223mm × H280mm/ 1色・2色・カラー/ 308ページ/ 日・英
価格:2,800円(税込)
大阪の日本画展の会場・巡回先はここ
大阪会場
⼤阪中之島美術館
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
Tel. 06-6479-0550(代表)(9:15~18:00)
会期
2023年1⽉21⽇(土)~4⽉2⽇(日)
開館時間
10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日)
アクセス
電車
○京阪
・中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩約5分
・「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○Osaka Metro
・四つ橋線「肥後橋駅」4番出口より西へ徒歩約10分
・御堂筋線「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○JR
・大阪環状線「福島駅」/東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩約10分
・「大阪駅」より南西へ徒歩約20分
○阪神
・「福島駅」より南へ徒歩約10分
・「梅田駅」より南西へ徒歩約15分
○阪急
・梅田駅より南西へ徒歩約20分
バス
○大阪シティバス
JR「大阪駅」前より53号・75号系統で「田蓑橋」下車、南西へ徒歩約2分
※帰路のJR「大阪駅」方面最寄バス停は「渡辺橋」から
東京会場
東京ステーションギャラリー
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1
Tel. 03-3212-2485
会期
2023年4月15日(土)~6月11日(日)
開館時間
10:00〜18:00 金曜日 10:00 〜20:00
入館は閉館30分前まで
休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日/ただし会期最終週、ゴールデンウィーク・お盆期間中の月曜日は開館)、年末年始、展示替期間
アクセス
JR「東京駅」丸の内北口 改札前
○東京メトロ丸の内線「東京」駅(約3分)
中央改札を丸の内北口方面側に出て、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR東京駅丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある
○東京メトロ東西線「大手町」駅(約5分)
東改札をB4、B5出口方面へ出て、階段(エスカレーター)を上がり直進
そのままJR「東京駅」方面の地下通路を直進、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に入口がある
○東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(約7分)
JR「東京駅」方面改札を出て、出口7の階段を上がる
行幸地下ギャラリーを通りぬけ左折、M12出口へ向かう
M12出口の階段を上がり地上へ
正面にあるJR「東京駅」丸の内北口ドームの中へ入ると左手に美術館入口がある