超コレクション展に行ってきました!大阪中之島美術館のオープニングとなる展覧会!収蔵した6000点強の中から400点を一堂に公開!

大阪中之島美術館 開館記念 超コレクション展 99のものがたり」は、収蔵した6000点強の中から400点が一堂に公開されます。佐伯祐三・ローランサン・モディリアーニ・マグリット・ジャコメッティ・バスキア・ロートレック・モーザー・倉俣史朗など珠玉のコレクションが勢揃いします。

超コレクション展の感想と解説!

佐伯祐三《郵便配達夫》(1-1-8)1928年

フォービズムの早い筆致で描かれた《郵便配達夫》です。黒い制服に身を包み、赤茶色の床とモスグリーンの壁による、グレイッシュな空間に囲まれ存在感を増しています。

配達夫は身体を傾け、ほぼ直角に広げた右足に重心を移しています。天井が平な帽子は容貌(ようぼう)を長方形にし、白い髭は楕円形を加えます。肩から腕を通り手に向かうラインは、左右で六角形を形作ります。パリの街並みを多く描いた佐伯は、人物にも幾何的な容姿を持たせたのでしょうか。

壁に貼られた白いポスターの抑揚のある文字が、配達夫との偶然の出会いによりもたらされた、静寂な一室にパリの喧騒を運びます。

大阪市は実業家山本發次郎(やまもとはつじろう)の遺族より、佐伯の作品33点を含む600点近くのコレクションを寄贈され、美術館設立の構想を始めました。

そのこともあり、《郵便配達夫》は告知にも使われているのでしょう。肥後橋駅からの通路に松本セイジの描くイラストもありました(上図)。美術館の建物をかたどった「N」のロゴのスリットから丸い目が中之島をのぞいています。

ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》(2-7)1957年

マグリットの描く《光の帝国》は、樹木に囲まれた家屋にあかりがともり闇に包まれていますが、その背景には空が青く雲が流れ、夜と昼が同居しています。

《大家族》は、打ち寄せる波に今にも降り出しそうな空模様です。暗雲は羽ばたく鳥の形に切り抜かれ、そこには青空に白い雲が浮かんでいます。

《白紙委任状》は、木立の中を女性が乗馬をしています。立ち並ぶ樹木の間からのぞく風景は、遠方にありながら手前にある女性と馬をおおっています。遠近が前後するだまし絵です。これらを描いた作者の意図は、現実にはありえない世界をワンビジュアルで見せることでしょう。

そして《レディ・メイドの花束》は、山高帽の男性の背にボッティチェリの《春》に描かれた女神フローラがいます。レディ・メイドとはフローラのことですが、私には「ありえない」が小規模に思えます。

近い作品に《人の子》《世界大戦》《山高帽の男》などがあります。これらは青いりんご・紫陽花・白い鳩が顔を隠します。見えなくなることから困難、見えなくすることから匿名など、いくつかのメタファーが生まれます。

フローラの意図するところは、春の気配を感じるでしょうか。マグリットは、「この絵は《春》と帽子の男との、一種の結婚みたいなものですね」と述べています。春の訪れを前に私の謎は深まるばかりです。

コロマン・モーザー《アームチェア》(3-1-39)デザイン1903年

ウィーン工房(1903〜1932年)は、建築家ヨーゼフ・ホフマン、画家コロマン・モーザ、実業家フリッツ・ヴェルンドルファーによって、質の高い美術工芸作品を制作し販売する企業として設立されました。

1910年頃までは、モーザによる正方形を基調とした幾何的装飾を持つ建築物・家具・什器などが制作されます。

モーザーによりデザインされた《アームチェア》は、ホフマンの設計によるサナトリウム・プルカースドルフのエントランスホールに設置されました。

『バウハウス叢書(そうしょ)』(3-2-17)1925〜29年

バウハウス(1919〜1932年)は、ドイツ・ヴァイマールに建築家ヴァルター・ グロピウスにより設立された総合芸術学校です。同書はヴァイマールからデッサウに移転した1925年から、グロピウスとモホリ=ナギにより刊行されました。私は色彩論を展開したヨハネス・イッテンが、参加できなかったことを残念に思います。

上図はバウハウス創立100年を記念して、2019年から翌年にかけて刊行された日本語版です。私は2巻のパウル・クレー著「教育スケッチブック」と、4巻オスカー・シュレンマー編「バウハウスの舞台」を購入しました。

1・4・12巻がヴァルター・グロピウス、5巻がピート・モンドリアン、8・14巻がラースロ・モホイ=ナジ、9巻がヴァシリー・カンディンスキーと豪華な顔ぶれです。

6巻はテオファン・ドゥース・ブルフです。ドゥース・ブルフはモンドリアンらとオランダ・ライデンにデ・ステイル(1917〜1931年)を結成し、雑誌『デ・ステイル』(3-2-14)を刊行しました。また、ヘリット・リートフェルトのデザインした《レッド・ブルーチェアー》(3−2−7)が知られています。

超コレクション展の図録をデサインマニアが分析!

・表紙は「Hello! Super Collection 99untoled stories」と欧文のロゴタイプだけが記されています。和文タイトル「超コレクション展 99のものがたり」は背表紙にあります。用紙は厚口の光沢紙が使われています。白地に文字だけのデザインです。

・400点の作品は3つの章に分けられています。「Hello! Super Collectors」は収集の歴史です。

マリー・ローランサン《プリンセス達》(1-1-32)1928年

佐伯祐三、白隠、仙涯、上村松園(うえむらしょうえん)、ユトリロ、キスリング、ローランサン(上図)、佐伯を「このアカデミックめ!」と一蹴したヴラマンク、小出楢重(こいでならしげ)、小磯良平、北野常富の《淀君》、島成園(しませいえん)、吉原治良(よしはらじろう)がありました。

アルベルト・ジャコメッティ《鼻》(2-11)1947年

「Hello! Super Stars」は注目作品です。モディリアーニ、キリコ、エルンスト、ダリ、アルプ、ジャコメッティは《鼻》(上図)がありました。ロスコ、草間彌生、バスキア、森村泰昌、杉本博司は「劇場」シリーズでした。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》(3-1-11)1891年

「Hello! Super Visions」はデザインのコレクションです。トーネットの椅子に始まり、ロートレック(上図)、モーザー、ホフマン、ぺッフェらのウィーン工房の家具・什器、未来派、バウハウス、ロシア・アバンギャルドの冊子がありました。

山名文夫《資生堂化粧品》(3-3-15)1955年

カッサンドル、杉浦非水(すぎうらひすい)、片岡敏郎の《赤玉ポートワイン》、山名文夫(やまなあやお)の《資生堂化粧品》(上図)、グリッドシステムのブロックマン、サヴィニャック、亀倉雄策の《1964年東京オリンピック》シリーズ、早川良雄、フォロンらのポスターがありました。

倉俣史朗《ミス・ブランチ》(3-3-63)デザイン1988年

有終の美は、倉俣史朗が薔薇をアクリルに閉じ込めた椅子《ミス・ブランチ》(上図)が飾りました。

・1ページにおける作品の掲載点数は、冊子のデザインが12点で最多ですが、多くは1、2点です。ページにはキャプションだけが添えられています。

・作品の解説は400点から99点を選び「99のものがたり」として記されています。

ソフトカバー/ W188mm × H240mm × D250mm/ モノクロ・カラー/ 364ページ/ 日・英
価格:2,300円(税込)

超コレクション展のグッズは何がある?

佐伯祐三の《郵便配達夫》にはもう1点半身を描いたものがありますが、松本セイジには覗き見と直立とがありました(上図右下)。

超コレクション展の混雑状況は?

混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「⼤阪中之島美術館」と目的の美術館名を検索して開きます。

私は金曜日の昼頃から行きましたが、混雑してはいませんでした。

超コレクション展の所用時間は?

120〜150分
私は11:45〜14:30で鑑賞しました。

超コレクション展のチケットはいくら?

一般1,500円/ 高大生1,100円/ 中学生以下は無料

団体料金
一般1,300円/ 高大生900円/ 中学生以下は無料

※団体は20名以上
※障がい者手帳などの保有者(介護者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)、※予約なしで入場当日にチケットカウンターで申し出る
※一般以外の料金での利用者は証明できるものを当日提示
※大阪市内在住の65歳以上も一般料金が必要

超コレクション展の会場・巡回先はここ!

⼤阪中之島美術館
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1
Tel. 06-6479-0550(代表)(9:15~18:00)

会期
2022年2⽉2⽇(⽔)~3⽉21⽇(⽉・祝)

開館時間
10:00~17:00(入場は16:30まで)

休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日)、2022年3月21日(月)は除く

アクセス
電車
○京阪
・中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩約5分
・「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○Osaka Metro
・四つ橋線「肥後橋駅」4番出口より西へ徒歩約10分
・御堂筋線「淀屋橋駅」7番出口より土佐堀川を越え西へ徒歩約15分
○JR
・大阪環状線「福島駅」/東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩約10分
・「大阪駅」より南西へ徒歩約20分
○阪神
・「福島駅」より南へ徒歩約10分
・「梅田駅」より南西へ徒歩約15分
○阪急
・梅田駅より南西へ徒歩約20分
バス
○大阪シティバス
JR「大阪駅」前より53号・75号系統で「田蓑橋」下車、南西へ徒歩約2分
※帰路のJR「大阪駅」方面最寄バス停は「渡辺橋」になる