会場風景_美術館中庭側ファサードのパネル
コンスタブル展の概要
「テート美術館所蔵 コンスタブル展」は、ウィリアム・ターナーと並び19世紀イギリスを代表する風景画家ジョン・コンスタブル(1776 – 1837年)の回顧展です。テート美術館からの油彩画、水彩画、素描が約40点、同時代の画家の作品が約20点、さらに国内の所蔵作品を含む全85点が出展されます。
会場風景_美術館中庭口(入口)のパネル
私が初めて見たコンスタブルは、コロナ禍で会期を延期した「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の map1《コルオートン・ホールのレノルズ記念碑》です。レノルズは、コンスタブルや彼のライヴァルのウィリアム・ターナーが学んだロイヤル・アカデミーの初代学長ジョシュア・レノルズのことです。
1768年にイギリスは初の美術学校ロイヤル・アカデミーを設立しました。レノルズは主題に自身が高尚と考える歴史画を選ぶことを勧めます。肖像画、風景画、静物画、風俗画は主題の中では歴史画に劣るジャンルでした。
このときターナーは《ポリフェモスを嘲るオデュッセウス》が出展されていました。古代ギリシアの長編叙事詩『オデュッセイア』の一場面を描いた、歴史的風景画です。
彼は1799年に24歳の若さでロイヤル・アカデミーの准会員となり、1802年には26歳で正会員となりました。
会場風景_ 美術館東側壁面のバナー
コンスタブルは幼少期の風景の思い出から画家を志しました。彼は自然を「あらゆる創造性が湧き出る源泉」と位置付けます。
1814年より、アカデミー展で注目されるために大型作品を制作していましたが、部分と全体のバランスを保つため戸外でほぼ完成させるようになりました。
さらに、長辺が約6フィート(183cm)の大作に挑みます。ロンドンのアトリエで、自身の記憶を元にスケッチから再構築しました。「自然に忠実に」というこれまでの意図からは離れます。
このとき描いた map22《白い馬》により、1819年に43歳で念願のアカデミーの准会員となり、1829年に53歳で会員となりました。
1832年に、55《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》を描きます。これ以降は過去の主題を再び取り上げ、真摯な自然の描写より想像的な要素を取り込むようになります。
私はコンスタブルが、ここまで来てなぜ虹を描いたのか疑問が残りました。初期の頃であれば、ターナーのように若くして、アカデミーの会員になることもあります。多くの作品で画面の大半を覆う曇り空は、何かが起きる前触れのようで、それだけでドラマティックです。
コンスタブル展の見どころはここ
ジョン・コンスタブル 25《フラットフォードの製粉所》1816-17年
【コンスタブル展/掲載情報】#文春オンライン で秋田 麻早子さんにご紹介いただきました!
今では当たり前の「屋外で風景を描く」という手法ができたワケ
ジョン・コンスタブル『フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)』(1816-17年) #コンスタブル #週刊文春 https://t.co/tMJED2UJVd— 三菱一号館美術館 (@ichigokan_PR) April 2, 2021
コンスタブルが結婚しロンドンに移る前に、画家になるきっかけとなったストゥーア川沿いの風景を描きました。
ジョン・コンスタブル 55《ウォータールー橋の開通式》1832年
3つのキーワードから紐解く。イギリス風景画の巨匠、ジョン・コンスタブルの表現世界 https://t.co/Za6loFlpff
— ウェブ版美術手帖 (@bijutsutecho_) April 4, 2021
《ヘレヴーツリュイス》を、東京富士美術館が所蔵していたことから、1832年のロイヤル・アカデミー展で並んで展示された2作品が揃いました。
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー 56《ヘレヴーツリュイスから出航するトレヒトシティ64号》1832年
ターナー「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」 pic.twitter.com/NVIkmzZO7o
— ℕℕ (@AnemoniaAnemoni) April 2, 2021
ターナーは「ヴァーニシング・デー」と呼ばれる手直しの期間に、《ヘレヴーツリュイス》の右下方に赤色のをブイ描き加えます。
ジョン・コンスタブル 63《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年
自然主義に従って描くことはなくなった、コンスタブルの最晩年の作品です。この1点だけ撮影ができました。
コンスタブル展の混雑状況はここをみる
混雑状況は、グーグルマップの左カラムにある「混雑する時間帯」で、曜日ごとに知ることができます。下方にあるマップから「拡大地図を表示」か、グーグルマップで「三菱一号館美術館」「岐阜県美術館」を検索して開きます。
三菱一号館美術館では、マジックアワーチケット(毎月第2水曜日17:00以降に限り適用)の時間帯は混雑します。
コンスタブル展の図録はここがすごい
コンスタブルが描く木と雲が好き。ゲインズバラの森は緻密でフィトンチッドを放っているかのようだけど、コンスタブルの作品からは土地の空気を感じる。『ウォータールー橋の開通式』は圧巻!ターナーが自分の作品に赤いブイを描き足したエピソードも好き。マライアの肖像画はキュンとした。良い展覧会 pic.twitter.com/BMUFBVgpi4
— こ (@agudes_a) April 4, 2021
裏表紙です。
・表表紙は 21《モルヴァーン・ホール、ウォリックシャー》、裏表紙は 63《虹が立つハムステッド・ヒース》です。どちらも図録中面の拡大図版より大きくなっています。
「Connstable」が、筆記体で左右いっぱいいに白抜きで記されています。19世紀初頭のイギリスのクラッシックなイメージを演出しています。
図録のタイトルは、その上に黒字で小さく添えられているサンセリフの書体です。サブタイトルに「A History of His Affections in England」とあります。Affections は 愛情、愛着です。
用紙はクロス貼りを思わせる、微細エンボスが使われています。
・見返しは薄水色1色です。雲の一部がトリミングして使われています。47《雲の習作》からかと思いましたがちがいました。表見返しが51《チェーン桟橋、ブライトン》から、裏見返しが 34《ヤーマスの桟橋》からです。
・作品は、9-1・9-2を除くと1ページに1作品です。図録は開くとA3より一回り大きいサイズです。拡大図版が多く、全面で載せてあるものは迫力があります。
・綴じ込み8ページで『コンスタブル主要作品関連地図』が付いています。作品の描かれた場所が、イングランドの南部に集中していることが一目瞭然です。添えられた作品には、今回展示されていない代表作も含まれています。
ハードカバー/ W238mm × H310mm/ モノクロ・カラー/ 224ページ
価格:2,900円(税込)
コンスタブル展のグッズは何がある?
入荷待ちだったコンスタブル、雲のマグカップをゲット…!店員さんも予想外の、一番人気だったそう。
あわせてターナーとコンスタブルのマグネットも追加。大きな絵を飾れない私の、ささやかな趣味ww pic.twitter.com/xv5FJgtCs0— 黒猫 (@unyah_cat) April 9, 2021
コンスタブル展のチケットはいくら?
一般1,900円/ 高校・大学生1,000円/ 小学・中学生 無料
前売り券の販売はありません。
障がい者手帳を所有者は半額、付添は1名まで無料。
マジックアワーチケット
毎月第2水曜日17:00以降に限り適用 : 1,200円
マジックアワーチケットは実施月の1日10:00に「Webket」内のみで販売されます。
コンスタブル展の会場・巡回先はここ
三菱一号館美術館 2021年2⽉20⽇(⼟)〜5⽉30⽇(⽇)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
Tel.050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間
10:00~18:00
※祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日
毎週月曜 年末年始の12月31日(木)、2021年1月1日(金)
※月曜日が祝日の場合と12月28日(月)、2021年1月4日(月)は開館
アクセス
電車
JR「東京駅」(丸の内南口)徒歩5分
JR「有楽町駅」(国際フォーラム口)徒歩6分
東京メトロ千代田線「二重橋前〈丸の内〉駅」(1番出口)徒歩3分
東京メトロ有楽町線「有楽町駅」(D3/D5出口)徒歩6分
都営三田線「日比谷駅」(B7出口)徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線「東京駅」(地下道直結)徒歩6分
バス
最寄の停留所は「東京国際フォーラム前」です。三菱一号館美術館の正面に停まります。
都営バス
都04(豊海水産埠頭~東京駅丸の内南口)
都05(東京ビッグサイト~東京駅丸の内南口)
都05(深川車庫前~東京駅丸の内南口)
東急バス
東98(等々力操車所~東京駅南口)